今回記事からしばらくの間は、半年以上前の夏に訪れた際の記録が続きます。季節外れな画像ばかりですが、どうかご容赦を。
吾妻地方の湯めぐりをした2014年夏の某日。大きな露天風呂に入りたくなって、花敷温泉の手前にある「しゃくなげ露天風呂」を数年ぶりに再訪することとしました。拙ブログでも5年前に記事にしています。露天風呂自体は無人施設で、利用されていない時は施錠されているため、利用の際にはそこから離れた集落にある指定の店舗で湯銭を支払い、鍵を受け取る必要があります。まずは野反湖へと向かう国道405号沿いの「喜久とうふ店」へ立ち寄りました。関東の温泉ファンにとって、このお豆腐屋さんはお馴染みかもしれませんね。
お店で湯銭を納めて「しゃくなげ露天風呂」の鍵と券を受け取った後は、自分の車に乗り込んで豆腐屋さんの角から路地に入り、白砂川が流れる谷底へと下ってゆきます。そして、川を渡った先の左手に「京塚温泉」と記された看板がありますので、そこから左へ逸れる未舗装の細い道を入ってゆきます。道幅が狭いので、車体を擦ってしまわないか心配でしたが、全幅が1.84mある私の愛車”CX-5″でも問題なく通行できました。
道の突き当たりの広場に車を駐めます。この広場に面して、手作り感のある砦のような構造物と、トタン葺きの掘っ立て小屋が並んでいますが、右側の小屋は地元民専用の共同浴場で、外来者の利用は不可。一方、左手のB級感あふれる砦っぽい構造物が、今回利用する「しゃくなげ露天風呂」です。前回訪れた時とほとんど変わっておらず、ホッとしました。看板には「50名様入浴できます」と書かれていますが、本当なのかね…。
お風呂は男女別に分かれており、男湯は右側のドア。念の為に鍵がちゃんと開くか確認してから、ウルトラ怪獣のピグモンみたいなタラコ唇の木工品ポストへ券を投入し、中へ入りました。
岩造りの広々とした露天風呂は以前と同じものですが、湯船の上にはアクリル波板の屋根が設けられ、浴槽内にはそれを支える4本の太い柱が立っていました。材木には白さが残っていましたし、アクリル屋根にも汚れが付着していなかったので、建てられてからまだ間もないものと思われます。
更衣スペースは実にシンプルで、足元にはスノコが敷かれ、コンパネで仕切った棚にプラ籠が収められているだけ。手作り感たっぷりです。駐車場側の塀沿いには洗い場があるのですが、誰かさんの入浴道具が散らかっていたり、ゴミが散乱していたりと、ちょっと荒れ気味のご様子。また、漬物に使うような樹脂製の樽には水が溜めっぱなしになっており、薄汚く淀んでいました。細かく見ちゃうと結構雑然としていますから、潔癖な方にはおすすめできないかも。
洗い場には温泉が出てくる蛇口があり、白いトゲトゲの析出が現れていました。なお水栓にぶら下げられているのは石鹸です。
露天風呂は白砂川の岸に位置しており、渓流や周囲の緑が視界いっぱいに広がるロケーションは素晴らしく、湯船の上に屋根が増設されたとはいえ、川側に立った時の開放感は抜群です。お風呂の岸から川へ向かってガクンと落ちる崖には塩ビのパイプが立ち上がっており、お湯が川へドボドボと捨てられていました。
積み上げられた岩から湯口の塩ビパイプが突き出ており、ドバドバと大量にお湯が注がれていました。この吐出口に温度計を差し込んでみたところ、46.6℃と表示されました。お湯からは石膏臭と共に微かなタマゴ臭がふんわり香り、甘味を伴う石膏味と土類系の芳ばしい風味が感じ取れました。湯使いは完全掛け流しと推測されます。
湯口では47℃弱あったお湯も、湯船の表面積が広いために熱を奪われてしまい、夏でも湯船は40.3℃まで下がっていました。尤も、私が訪れたのは暑い夏でしたから、むしろこのくらいの湯加減の方がありがたく、じっくり長湯することができたのですが、夏でこんな湯温なのですから、冬はどうなっちゃうんでしょう…。浴槽内には藻類が薄っすらとこびりついているためか、本来なら無色透明に見えるはずのお湯も、心なしか全体的にモスグリーンを帯びて僅かに濁っているように見えます。でもお湯の投入量は多いので鮮度はまずまず。スル&スベの中に引っかかりが混在する浴感が得られました。
私としては、前回訪問時には無かった屋根が邪魔で鬱陶しく、以前と比べて開放感が減ってしまったようで、ちょっと残念に思われたのですが、冷静に考えてみれば、要望や目的があったからこそ屋根が増設されたわけであり、実はこの入浴中に、疎ましかったはずの屋根の有り難みを実感したのでした。というのも、湯浴みをしていると俄に空が掻き曇り、暗くなったと思いきや、滝のような夕立が沛然と降ってきたのです。もし以前の状態でしたら更衣スペースや洗い場にちょこんと設けられた庇以外に雨を避けるスペースは無く、慌てて着替えて車に逃げる他なかったはずですが、この時は大きな屋根のおかげで夕立を楽に凌ぐことができ、雨が上がるまで湯船に浸かりながら、しばらくここで雨宿りさせてもらったのでした。
夕立が弱まって空が再び明るくなったところでお風呂から上がり、お豆腐屋さんへ鍵を返却するついでに、お店で売っていたオリジナルの豆乳アイスクリームをいただきました。風呂あがりに食べるアイスの味は格別ですね。
環境といい造りといい、いろんな意味でワイルドなお風呂ですので、温泉ファン以外の一般の方にはとっては好き嫌いが分かれそうですが、B級施設に心惹かれるや、広い露天が好きな方には向いているお風呂かと思います。
花敷温泉(川端の湯)
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉(詳しいデータの掲示見当たらず)
開設時間不明
500円
石鹸およびボディーソープあり、他備品類なし
私の好み:★★+0.5
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