瀬見温泉 せみの湯

山形県

(2025年8月訪問)
源義経や静御前、そして武蔵坊弁慶の伝説が伝わる山形県最上地方の瀬見温泉には、かつて100円玉を投入することで入口ドアの鍵が開く渋い佇まいの共同浴場がありました。拙ブログでも以前の共同浴場について取り上げています(当時の記事はこちら)。この施設は数年前に閉鎖解体されましたが、2016年に「せみの湯」という新たな共同浴場が誕生し、地元の人のみならず当地を訪れる観光客にも親しまれています。新しいといっても開業して既に9年が経過しているのですが、私はこれまで利用する機会が無く、2025年8月にようやく訪問できましたので、今回記事にさせていただきます。

正面には無料で利用できる足湯が設けられ、その湯口では温泉卵が作れます。また足湯の脇には公衆トイレもあり、ちょっと立ち寄った観光客でも気軽に施設を利用できるよう設計されています。私が訪ねた時も、親子連れが足湯を楽しみ、またご夫婦でご旅行されている方が温泉卵をつくっていました。

建物が新しくなっても無人施設であることは旧共同浴場と同じ。男女別の浴室入口には自動ドアに設けられているのですが、ドア前のコイン投入機に所定の料金を入れることでようやく開く仕組みになっています。このスタイルは旧浴場時代と同じであり、コイン投入機に新旧瀬見温泉共同浴場のDNAが受け継がれているようです。ただちょっと厄介なのはこのコイン投入機が100円玉しか入らない点で、この特徴も新旧で同じなのですが、旧施設時代は100円玉を2枚用意すればよかったのに対し、現在の新施設は5枚必要なのです。キャッシュレスが普及したここ数年は私も普段はあまり現金を持ち歩かないようになったので、何も知らずに訪問して100円玉が手元に無いと入浴できないという事態になりかねません。尤もこちらの施設には自販機がありますので、1000円札があれば飲料を買うことでお金を崩せますが、釣銭が切れちゃっている可能性だってありますから、事前に100円玉をたくさん用意しておきましょう。いや、共同浴場巡りに慣れている人は旅行の数日前から小銭をたくさんストックする習慣が身についているかと思いますので、余計なお世話かもしれません。
でも、100円玉を5枚入れたからと言って安心してはいけません。もう一つ、ここで気を付けるべき点は、ドアがすぐに閉まってしまうことです。長く開けたままにすると無銭入浴の侵入を許してしまいかねないので、開けたらすぐに閉める設定にしているのかと思いますが、無銭野郎どころかちゃんと支払った人もボヤボヤしていると容赦なくすぐまりますので、迅速に行動しましょう。なお新旧で異なるのは、コイン投入機の傍にカードリーダーが設置されているところで、これはおそらく地元の常連向けや、近隣の旅館宿泊客向けに開錠カードが発行されているものと思われます。

無人の共同浴場にもかかわらずお風呂には内湯と露天があり、しかも内湯と露天で異なる源泉を使い、その両方で掛け流しているという、何とも贅沢で素晴らしい施設なのであります。だから100円玉やすぐに閉まる自動ドアでガタガタ文句言っちゃいけません。
男湯の場合、内湯は右側には浴槽が、左側に4つのシャワー付き混合水栓がそれぞれ並んでいます。女湯はこれとシンメトリな配置になっているものと思われます。なお洗い場に石鹸類の備え付けはありませんので、事前に用意しましょう。

内湯は浴槽はふたつあり、湯口からお湯が注がれる熱い槽は2〜3人サイズ、そして、その小さな槽から流れてくるお湯を受ける下流側の浴槽は適温で3〜4人サイズです。混じりっけなしの完全掛け流しで、大きな槽のお湯は窓側の溝へ絶え間なくオーバーフローしていきます。

露天風呂は岩風呂風で2~3人サイズのコンパクトな造り。もちろん露天風呂もかけ流しの湯使いであり、湯口から落とされて浴槽を満たしたお湯は、縁取りの石の下からグレーチングへ流れていきます。ちなみにこの露天風呂は「薬研の湯」と名付けられているのですが、これは当地の河原にある「薬研の湯」と同じ名前ですね。

上述したようにこの共同浴場では内湯と露天で別源泉が使われています。内湯のお湯は無色透明で、弱いタマゴの味と匂い、そして少々の甘塩味が感じられ、湯口には白いゆらゆら(湯の花)が付着しています。一方、露天のお湯は塩味が内湯より控えめですがタマゴ風味は内湯よりはっきりしている印象を受けました。不思議なのは、両源泉とも分析表には硫化水素イオン、硫酸水素イオン、チオ硫酸イオン、遊離硫化水素、それぞれの数値が0であること。湯口のお湯を口に含んで得られたタマゴ感や湯口に付着している湯の花のユラユラは一体なんなのでしょう・・・。いずれにせよ両方とも熱いお湯ながら純粋な掛け流しで、熱さに堪えて肩まで浸かり体を熱さに慣れさせると、熱さとお湯の鮮度が気持ち良さをもたらし、体が茹で上がって逆上せそうになりつつも、もっと浸かっていたいと思ってしまう不思議な魅力を持った良泉です。

瀬見温泉といえば高温の温泉熱を活かした「ふかし湯」が名物であり、旧施設にもありましたが、現在の新施設にもしっかり受け継がれています。「ふかし湯」とは床にあいた穴から上がってくる温泉の熱い湯気を体に当てて利用する設備で・・・

裸ではなく浴衣を着るかバスタオルを体に巻き、床に寝そべって湯気を体に当てます。木の枕を使って横になりながら、上画像に写っている穴から上がる熱い湯気を体に当てるわけですね。なおこの「ふかし湯」は追加料金なしで利用ができ、4~5人分の利用区画があります。浴衣の備え付けやレンタルは無いので、当地の旅館に宿泊している方が旅館の浴衣を、そうでなければ持参したバスタオルを巻いて利用することになるかと思います。他ではなかなか体験できない入浴方法ですので、当地を訪れた際には是非ご利用を。

(露天風呂・ふかし湯)
町営1号泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 67.4℃ pH7.4 溶存物質2072mg/kg 蒸発残留物1959mg/kg
Na+:540.0mg, Ca++:140.0mg,
Cl-:548.8mg, SO4–:688.2mg,
H2SiO3:78.7mg,
(平成27年1月13日)

(内湯)
町営5号源泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 67.0℃ pH記載なし 溶存物質1953mg/kg 蒸発残留物記載なし
Na+:482.0mg, Ca++:131.2mg,
Cl-:524.2mg, SO4–:639.6mg,
H2SiO3:94.0mg,
(令和5年9月5日)

山形県最上郡最上町大堀987-15
0233-42-2123(瀬見温泉旅館協会)
最上町観光協会公式サイト内紹介ページ

月曜~土曜→6:00~9:00, 12:00~23:00(23:30施錠)
日曜→6:00~23:00(23:30施錠)
500円(100円玉のみ使用可)
ロッカーあり(100円リターン式)、石鹸類やドライヤーの備え付け無し
(自販機にてボディーソープ・シャンプーセットを100円で販売)

私の好み:★★★

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