前回までの草津温泉から引き続いて、昨年夏の記事を書かせていただきます。季節外れな内容ですが、どうかご容赦を。
無性に全身を硫黄まみれにしたくなった2014年盛夏の某日、避暑を兼ねて万座温泉へと出かけました。今回訪れたのは威風堂々たる構えの「万座亭」です。
9~10年ほど前にリニューアルされたんだそうでして、館内は落ち着いたモダン和風の内装で統一されており、玄関やフロントまわりなど来客が必ず接する空間は、瀟洒で上品な雰囲気です。私のような小汚い客は追い返されてしまうのではないかと、風格漂う館内の空気感に気圧されてしまいそうでしたが、もちろんそんなことはなく、丁寧に対応してくださいました。
フロントで日帰り入浴の料金を支払い、右手にあるラウンジを抜けて、階下の浴室へと進みます。ラウンジに掲げられた「白鉄の湯」とは「万座亭」のお風呂の名称。室内は間接照明によってシックな空間が演出され、どんなお客さんでもゆったり寛げそうです。
浴室手前の休憩スペースは、階上のラウンジより更に照度を落として意図的に薄暗い環境が保たれており、しかも黒基調のカラーコーディネートですので、腰を下ろしたら即座に微睡んでしまいそうな感じ。
スポットライトが当たる箇所では、入浴前後の水分補給として飲める「万座の天然水」がチョロチョロと滴り落とされていました。
浴室入口手前のロッカーに貴重品を預けて男女別の浴室へ。ウッディーな脱衣室は綺麗で気持ちよく使え、アメニティも揃って使い勝手良好ですが、どことなく昭和の旅館風情も感じられ、リニューアル前の面影を残しているようでした。なおドライヤーの備え付けは無く、必要な場合はその都度フロントで貸し出してくれるとのこと。脱衣室に置きっぱなしにしたら、硫黄の影響を受けてすぐに壊れちゃうのかもしれませんね。
木造の浴室は伝統的な湯屋建築。床や浴槽内には伊豆石(か同系の凝灰岩)で、壁や浴槽の枠、壁板、そして柱や梁などは立派なヒバ材が贅沢に使われているんですね。重厚感溢れるその風情に接し、思わず息を呑んでしまいました。
上述のように浴槽内は伊豆石造りですが、浴槽の縁および縁と床が接合している幅数十センチの部分はヒバが用いられており、お湯で足元が滑らないよう、板の上には滑り止めシートが敷かれていました。洗い場にはシャワー付きカランが計6基取り付けられています。浴槽のすぐ上に開けられている小窓は、硫化水素を逃がすための換気窓ですね。
浴槽は約3.5メートル四方。外側から太い木の樋が斜め下の湯枡へ、男女両浴室を仕切る塀に沿う形で渡されており、湯枡から浴槽へとお湯が注がれていました。この湯口には黄色いランプが照らされているため、樋の内側にこびりついた硫黄が黄色く見えますが、実際には純白に近い綺麗な白色です。この湯口の照明然り、休憩スペースにあった「万座の天然水」のスポットライト然り、そして館内の全体的な照明コンセプト然り、リニューアルを手がけた設計士さんは、ライティングにかなりの思い入れがあるのでしょう。
湯口に掲示された「熱湯注意」のプレートが示しているように、投入時点ではかなり熱いのですが、湯船に落とされてプールされるうち、温度が下がって適温になっていました。それでも温泉は自然のものですから、不意な上下もあるものと思われ、浴槽の傍には湯もみ板が用意されていました。お湯はやや黄色を帯びた微白濁で、底が見える程度の透明度を有しており、湯中では白くて細かな湯の華が無数に浮遊していました。
「万座亭」のお風呂は重厚感ある内湯だけでなく、開放感と木のぬくもりを共存させたログ露天風呂も出色。ログは茶色く塗装されていますが、その茶色と青白く濁ったお湯、そして景色に広がる木々の緑というトリコロールが実に美しく、内湯の佇まいに息を呑んだ私は、露天では一転して気分が高まり、「こりゃすげー」と声を漏らしてしまいました。落ち着きの内湯に対して、高揚の露天といったところでしょうか。
頭上には垂木が格子状に並んでおり、邪魔に感じる方もいらっしゃるかと思いますが、屋根板は張られていませんから、明るさや開放感はあまり損なわれていません。ログハウスとしての構造物的一体感を演出するには、ピッチを詰めたこの垂木も必要だったのかな。洋風ガーデンのウッドデッキみたいですね。
ここは万座温泉の中でも比較的高いところに位置していますから、露天から眺めは抜群。むしろ開けっぴろげなので、近隣からはこっちが丸見えかも。内湯側には石板敷きのデッキが広がっており、大きなしゃもじみたいな湯もみ板が立てかけられているほか、丸太を切った腰掛けもいくつか置かれています。お湯で体が火照りかけたら、この丸太に腰掛けて高原の涼風でクールダウンし、適度に火照りが冷めたところで再び湯船へ…というサイクルを、この露天風呂では何度も繰り返してしまいました。
白く染まった木枠の樋からアツアツなお湯が注がれています。浴槽は内湯よりもはるかに大きく、おおよそ4.5m×6mの木造。左側には丸太が一本渡され、これによって浴槽は二つに仕切られているように見えますが、あくまで湯面の上を丸太が跨いでいるだけなので、左右双方でお湯に違いはありません。
湯船に張られたお湯は、ターコイズグリーンと表現したら良いのか、やや青みがかった緑白色に美しく濁り、濁り方が強いために底は全く見えません。さすが万座の湯だけあって、硫黄臭は大変強く、口に含むとタマゴ的な味覚の他、柑橘系を思わせるフルーティーな酸味や金気味も感じられます。濃厚な硫黄に由来すると思しきパウダリーな浴感は、トロミや少々のキシキシ感を伴いながら、肌をしっとりと覆ってくれます。
幸い私が訪問した時は終始独占することができ、ゆったりとした湯船で白濁の湯に浸かりながら、雄大な景色を眺め、なんとも表現しがたい優雅で贅沢なひとときを過ごさせていただきました。男女別の大浴場の他、今回は利用できなかった貸切のお風呂もあるそうですから、次回は日帰りじゃなく、宿泊してのんびり過ごしたいなぁ。
鉄湯2号
酸性・含硫黄-マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 85.4℃ pH2.4 自然湧出 溶存物質1.39g/kg 成分総計1.43g/kg
H+4.27mg(20.33mval%), Na+:129mg(26.93mval%), Mg++:98.8mg(39.05mval%), Ca++:32.7mg(7.82mval%), Al+++:3.87mg,
Cl-:104mg(14.87mval%), SO4–:748mg(79.19mval%), HSO4-:108mg(5.63mval%), H2S:41.7mg,
H2SiO3:118mg, H2SO4:1.2mg,
群馬県吾妻郡嬬恋村大字干俣万座温泉2401 地図
0279-97-3133
ホームページ
日帰り入浴11:30~18:00
1000円
貴重品用ロッカーあり
私の好み:★★★
コメント
Unknown
再来月の草津温泉の締めは万座と思ってます、プンプン臭わせて会社に出勤する予定です!
Unknown
>ぱとさん
群馬県にお住まいですと、県内移動で万座へ行けちゃうのが羨ましいです♪
我が家から草津や万座へ最短距離でアクセスするなら、
上信越道を軽井沢で下りて、西武の有料道路を通ることになるのですが、
せめて万座ハイウエーはもう少し値下げしてくれたらなぁ…と通行のたびに嘆いています
草津の後に万座ということで、まさに硫黄三昧ですね(o^-^o)
昨年は草津白根山の火山活動が活発になり、
R292に通行規制が実施されましたが、
来月末の冬季閉鎖解除後は、何事もなく通行できることを願っています。