鹿角市花輪の街外れ、米代川の川沿いにある花輪温泉「ゆたろう」でひとっ風呂浴びてまいりました。私が訪れたのは閉館1時間前の夜8時でしたが、駐車場には多くの車が停まっており、人気の高さが窺えます。日帰り入浴専門の温泉入浴施設なのですが、暗い中で見た印象ですから自信を持って言えませんが、外観は温泉というよりも病院や公共機関を想像させるような、無機的で没個性なファサードです。駐車場に面して出っ張っている部分は、大きく緩やかな曲線を描いていますが、これが却って当世のお役所や第三セクターみたいな印象を高めているようにも思えます。
とっても広い駐車場の一角にはコイン洗車場が設けられていました。お風呂で自分の汗を流すだけじゃなく、愛車の泥も落としてあげようよ、ってことなのでしょうね。ちなみに私が訪れたのは10月上旬。後述する館内ではNHKラジオの巨人戦中継が流されていたのですが、どういう訳かこの広大な駐車場にも、屋外スピーカーからラジオ中継が響いていました。花輪の人って野球好きが多いのかな。
入館後に券売機で料金を支払い、受付に券を差し出します。駐車場へ突き出ていた丸い部分は、フローリングの広間となっており、その一部は子供用の遊具が用意されていました。また、奥には休憩用の小上がりもあり、この時はお風呂あがりのお客さんがテレビで野球中継を熱心に観戦なさっていました。館内放送から流れるラジオも、小上がりのテレビも、徹底して巨人戦なのです。やっぱり花輪の方はジャイアンツ贔屓が多いのかも。
脱衣室もフローリング。清掃がよく行き届いて清潔感が漲っており、かつ広々しているので、ストレスを覚えること無く、とっても気持ち良く使うことができました。また、天井でシーリングファンがグルグル回っている他、扇風機も用意されているので、湯上がり後のクールダウン対策もぬかりありません。後述するようにこちらのお湯はかなり火照るので、こうした冷却グッズがあると大助かりです。
浴室はほぼ全面タイル貼り。入ってすぐ目の前にある2段構造の掛け湯が、入浴客を出迎えています。浴室の天井を支える柱の向こう側(裏側)では、15人近く同時に入れそうなゆとりの容量を有する主浴槽がクリアなお湯を湛えていました。画面には写っていませんが、左側にはサウナがあり、主浴槽には誰もいなくても、サウナには必ず一人以上の利用客がおり、みなさんじっと瞑目しながら汗を流していらっしゃいました。津々浦々の入浴施設にとって、サウナは集客に欠かせない重要なファクターですね。
主浴槽のお湯は柱の裏側にある掛け湯からが注ぎ込まれており、お湯が滴り落ちる側面は黄土色に染まっていました。湯加減は万人にやさしい41~2℃で、掛け湯の温度から推測するに、けだし加水されているのかもしれませんが、放流式の湯使いであることは疑いようもなく、縁からしっかり溢れ出ていました。お湯は無色透明で、弱い芒硝味と僅かな塩味を有し、湯面からはほのかに芒硝の香りが漂ってきます。湯温は適温なのですが、硫酸塩の影響なのか、入りしなにはピリッとした刺激が肌を走りました。無色透明で一見すると癖の無いようですが、さすが硫酸塩泉だけあって、入浴すると内に秘めたるパワーが発揮され、ただならない曲者であることを実感させてくれます。
壁に沿ってシャワー付きカランが計15基、L字形に配置されています。カランから出てくるお湯はおそらく源泉のお湯ではないでしょうか。
お湯が出る洗い場の混合水栓の他、脱衣室から見て左側の壁際には、水風呂と並んで水だけが出る単水栓のシャワーが2基設けられており、水風呂も水シャワーもサウナのお客さん向けの設備なのでしょう。一方、その反対側(脱衣室から見て右側)にはデッキ・チェアが置かれていて、他のお客さんと干渉せず、のびのびと休むことができました。広い室内空間を活かし、入浴施設として気持ち良く使えるいろんな設備が用意されているんですね。
設備面だけではなく、お湯も良いのがこの「ゆたろう」の素晴らしいところ。就中、お湯のフレッシュ感もフィーリングも出色だったのが、ちょっと目立たない場所にある「ひのきの湯」でした。裏庭と思しき屋外に面してガラス窓になっている小部屋で、壁や浴槽の縁に白木のヒノキ材が用いられており、床や浴槽は十和田石敷き。お湯の投入量は主浴槽よりはるかに多く、それでいて湯口から直接注がれているためか、浴槽の温度はかなり熱く、体感で44~5℃はありました。この熱さを常連さんはご存知なのか、あるいはここだけ別室のような造りになって目立ちにくい存在だからか、主浴槽やサウナは賑わっていても、この「ひのき風呂」には誰も入ろうとせず、この時は私が終始独占できてしまいました。
この浴槽ではピリピリ感がとりわけ強く、もちろん熱さゆえの刺激もあるのですが、無色透明な硫酸塩泉ならでは影響も相当効いているのではないかと思います。スルスベの中に引っかかりが混じる浴感も、いかにも硫酸塩泉っぽいフィーリング。熱いので体がすぐに逆上せてしまうのですが、フレッシュ感が抜群なので、お湯から離れるのが躊躇われ、前後不覚のフラフラ状態になっても入り続けていたくなるほど、素晴らしい浴感でした。
地味でお役所感の強そうな外観を目にした刹那は、広くて清潔感のある浴室や、クオリティの高い掛け流しの温泉に出会えることを、あまり期待していなかったのですが、この「ゆたろう」の利用を通じて、人も温泉も、外見だけで判断してはいけないことを再認識致しました。鹿角エリアにまたまたマイ・フェイバリットの温泉を見つけることができて、とっても幸せ。
ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 57.3℃ pH8.5 270L/min(動力揚湯) 溶存物質1.42g/kg 成分総計1.47g/kg
Na+:366.4mg(79.98mval%), Ca++:77.4mg(19.37mval%),
F+:0.5mg, Cl-:243.5mg(32.71mval%), HS-:0.3mg, SO4–:646.4mg(64.10mval%), CO3–:6.0mg,
H2SiO3:45.7mg, CO2:55.0mg,
加水あり(源泉57℃のため)、加温循環消毒なし
花輪線・鹿角花輪駅より徒歩10分強(約1km)
秋田県鹿角市花輪字大川添55番地1 地図
0186-22-1118
ホームページ
5:30~21:00(大晦日のみ18:00まで) 休館日は公式HPでご確認を。
400円
ロッカー有料(100円)・ドライヤーあり、入浴道具販売あり
私の好み:★★★
コメント
Unknown
ゆたろうのひのき風呂最高っすよね
大浴槽だけみたら、ああこんなんあるよね~ってな
程度ですが、ひのき風呂入ったらビックリ
ここのお湯の持つパワーを感じますね
ビリビリ感がたまらんすよね*\(^o^)/*
Unknown
>Danさん、こんばんは。
先日ブログにアップなさっているのを拝見し、「私も数日後に取り上げます」と申し上げようか、迷っていました(笑)。
正直、ここの桧風呂には驚かされました。あのお湯に入れる旅館があったら、間違いなく宿泊しています。
温泉研究家
こんにちは。
こちらに、2021.08.29 に訪れました。ひのき湯は、ガツンと来る熱さでエエですよね。しかも早朝から深夜までの営業も嬉しいですよね。
成分表は、H29年分析の最新版でした。記事中でご紹介のスペックの成分表を撮ってありましたら配信頂ければ幸いです。
Unknown
齊藤様
志張元湯の分析表とともに、先ほどメールで送信させていただきました。よろしくお願いいたします。