別所温泉と言っても、今回取り上げるのは信州ではなく秋田県大館市。別所という人口300程の小さな集落の真ん中にある素朴な温泉の共同浴場です。今から13年ほど前に地元企業が偶然ボーリングにより温泉を発見し、せっかくだからこれを地域のために活かそうと、集落の各世帯がお金を出し合って共同浴場を設けたんだそうです。このような設立経緯により、基本的には地元民専用ですが、嬉しいことに外来客も受け入れてくれます。
在地の中心を通る細い道沿いに位置し、小さな集会場のような建物です。玄関を開けると、そこは自動販売機がある以外は民家に上がりこんだかのような雰囲気。無人なので料金箱に自分でお金を投入。100円という素晴らしい安さが有難いですね。なお玄関正面には4畳半ぐらいの休憩室があります。
地元民向けのお風呂なので、脱衣所・浴室とも至ってシンプルな造りです。地元の方々のボランティア精神によって運営維持されている施設なのですから、脱衣所の壁紙がちょっと剥がれたりカビが生えていたりするのは目を瞑ることとして、その他はなかなか綺麗に維持されています。浴室は床が暖色系で側面が寒色系のタイルが貼られ、洗い場にはシャワー付きの混合栓が4基設置され、お湯の出方も実に快調。わずか100円なのに、カランが複数あってちゃんと機能していると、こんな料金しか払っていないのに大丈夫なのかしらと、なんだか申し訳なくなってきます。
3~4人サイズの湯船には、湯面上にちょこんと口を出している塩ビの管からの他、湯面下側面の中程からも源泉が投入されており、浴槽縁の全ての辺から静かにオーバーフローしています。勿論100円ですから、循環消毒などできるはずもなく、れっきとした掛け流し。浴槽に人が入ると一気にお湯が溢れだして、洗い場が洪水状態になりました。
無色澄明なお湯は典型的な硫酸塩泉で、湯面やタイルの目地が泉質ならではの光の屈折によってキラキラと青い輝きを放っています。弱いながら石膏の味と匂いが感じられ、若干の甘味も帯び、トロミがあってキシキシとした石膏泉らしい浴感が印象的です。大館周辺は本当に硫酸塩泉の宝庫ですね。
休憩室に飾ってあった開設時のテープカットの様子を撮影した写真です。皆さんで協力し合って出来上がった共同の財産ですから、供用に至れた感慨はひとしおだったでしょうね。以来地元の方によって丁寧に維持保全され続けているこの温泉。いつまでも残していってほしい共同浴場です。
別所温泉2号井
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉 45.5℃
秋田県大館市十二所字水上43 地図
電話なし
6:00~21:00
100円
備品類なし
車は目の前に4台ほどとめられます。
私の好み:★★★
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