京町温泉郷 十兵衛の湯

宮崎県


これまで連続して京町温泉郷の小規模共同浴場を取り上げてきましたが、今回はちょっと趣向を変えて、万人受けする施設をピックアップしてみます。当地を訪れた12月某日の夜、夕飯をどこで食べようか彷徨していたところ、「十兵衛うどん」の大きな看板が目に入ってきたので、店の暖簾を潜ることにしました。この店には温泉浴場が併設されており、そのお風呂は当地を紹介するガイドブックの類に必ずと言ってよいほど掲載されていたので、なんとなく事前にその存在を知っており、温泉バカの私としては夕食選びの時に及んでも「温泉がある」という特徴に惹かれてしまったわけです。

私は常に「花より団子」という言葉が行動原理となっているのですが(それゆえ脂肪が増加の一途を辿っているのですが)、花よりも団子よりも「湯上りのビール」に勝る快楽はありませんから、この時はまず風呂に入り、その後食事処へ移って飯を食いつつビールをグイっと飲むことにしました。

「十兵衛の湯」の建物前の駐車場には空きがないほど車が止まっていました。各媒体で紹介されているんだから、さぞかし有名で、館内は混んでいるのかもしれない…。混雑を覚悟して中へ入ることに。


駐車場には無料の足湯あり。


玄関の下足場には温泉掘削工事で使われたボーリングピットが展示されていました。最近はこのピットを展示する温泉施設が多いですね。


館内は明るくてとっても綺麗。玄関ホールの券売機で料金を支払い、その傍の受付で券を手渡します。ガチャガチャが置かれているあたりに、ファミリー歓迎という施設側の姿勢が伝わってきます。

 
脱衣室もきれいで使い勝手良好。そして洗面台が3台も用意されていて便利。ロッカーや洗面台など、備品類はピカピカ。


玄関ホールも脱衣所もそんなに広くなかったので、全体的にこじんまりとした施設なのかと想像していたら、浴室がその思い込みを覆す広い空間だったのにはビックリしました。天井も高いので圧迫感はありません。
そういえば、駐車場が混雑していたのに、お風呂は全然空いてるなぁ。どうやら駐車場を埋めていた車は食事処のお客さんだったようです。


浴室の片側にシャワー付き混合栓が8基、そして立って使うシャワーが2基、計10基がズラリと並んでいます。こまめに手入れされているのか洗い場は整然としており、公衆浴場にありがちな雑然とした雰囲気が無く、利用客もその整然とした空気に従順としてしまうのか、みなさん律儀に腰掛や桶をきちんと片づけていました。


主浴槽もついつい泳ぎたくなっちゃうほどの大きさ。お湯は無色透明、ほぼ無味ですが石灰分が多いためか硬水のような固い味、そしてほんの僅かな塩味が感じられます。匂いに関しては、温泉由来の匂いはほとんど無いようでしたが、館内にもきちんと表示されているように塩素消毒の臭いがはっきりしているのはちょっと残念です。浴感はスベスベの中にやや引っかかりが混在するものでした。

 
お湯は消毒されているものの、しっかり放流式の湯使いです。湯口から出てくるお湯はかなり熱いので、下手に触ろうとすると火傷するかも。湯口の岩は石灰成分のこびりつきによって白くコーティングされ、その様はあたかもワタリガニの甲羅を白くしたようにボコボコとしていました。また浴槽の縁も洗い場の床も同様に白く、常時お湯が流れる部分だけは石灰が付着できずに着色されていませんが、それ以外はしっかりと白く覆われていました。画像でもはっきりわかるように、色が着いていない流路と、その周囲との色差は明瞭です。


浴室には他に蒸し風呂と水風呂があり、蒸し風呂好きの私はもちろんこの蒸し風呂も利用させてもらいました。

 
露天風呂は日本庭園風。訪問時は夜8時頃だったので、周囲はすっかり闇の中、ちょっと不気味な画像になっちゃいましたが、けっして怖い場所ではなく、けだし日中は長閑な景色が望めるのではないかと思われる佇まいでした。


こちらの湯口もカニの甲羅の表面みたいにボコボコとした小さな突起が表れていました。また浴槽の湯面付近には石灰の析出により小さな庇のようなものが形成されていました。お湯の特徴は内湯とほぼ同じですが、湯船の表面積が広くて常に外気に触れているためか、湯加減は若干ぬるめでした。長湯するならこちらの方がいいかもしれません。

 
お風呂で体を火照らせて軽くフラフラになった後、隣のお食事処へと場所移動です。こちらはうどん屋としての営業がメインのようなのですが、うどんだけにとどまらず、丼ものやお寿司、ちょっとした割烹など、和食全般を取り扱っている和食ファミレスみたいなお店でした。店内もかなり広くて席数も多数。
私は中学生の時に、新宿紀伊国屋の地下にある飲食店街で営業していた博多うどんの店で九州のうどんの美味さを知り、いまでも博多の名物は「明太子」じゃなくて「うどん」、特に「ごぼ天うどん」あるいは「まるてんうどん」であると信じて止まないのですが、そんな頑固な思い込みを持つ人間ですから、数多あるメニューの中から迷わずうどんをチョイスし、それだけでは物足りないので一緒にちらし寿司が付いてくるセットを注文しました。特別感動するようなものではなく、ごく一般的なちらし寿司とうどんでしたが、出汁がよくとれているおつゆに安心し、おいしくいただきました。お店の混雑から察するに、ハズレがない安定感のあるお店なのでしょうね。一人でも問題なく利用できるので、私のような常時一人旅の人間には助かります。

ガイドブックに取り上げられている点、実用的で設備が整っている点、やや凡庸な内装、放流式とはいえ塩素が入ったお湯、などなど鄙び好きの温泉ファンには触手が伸びないファクターが揃っていますが、使い勝手は良好ですし清潔ですから、泉質よりも雰囲気や実用性を重視する方やファミリーには使いやすいのではないかと思います。また、京町温泉郷は大なり小なりモール系の特徴が見られる泉質ばかりなのに、なぜかここのお湯はモールらしさが全く見られないので、湯めぐりしていてモール系の温泉にちょっと飽きたら、こちらのお湯でアクセントを加えてみるのも面白いかもしれません。
ちなみにこちらでは宿泊もできるそうでして、各客室には露天風呂が付帯しているんだそうです。

ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩温泉 65.5℃ pH7.1 溶存物質5.406g/kg 成分総計5.529g/kg
Na:1126mg, Mg:158.5mg, Ca:168.1mg,
Cl:601.0mg, SO4:1140mg, HCO3:1890mg,
塩素消毒あり

宮崎県えびの市大字向江212-1  地図
0984-37-2799
ホームページ

7:00~23:00
400円
ロッカー有料(10円)、シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★

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