(2024年10月訪問)
これまで拙ブログでは静岡県西伊豆の土肥温泉に点在する共同浴場を取り上げていますが、どういう訳か利用の機会に恵まれなかった唯一の共同浴場が、今回紹介する「弁天の湯」です。以前から利用してみたいと考えていましたので、2024年10月の某日に西伊豆方面で釣りを楽しんだ帰り、車で土肥を通過する際に立ち寄ってみることにしました。土肥市街北西端の国道沿いかつ漁港の目の前に位置しており、漁港内に7台分ほどの専用駐車スペースがあります。夜に利用・撮影したため、見難い画像になってしまい申し訳ないのですが、建物の外観は西伊豆の歴史的な建造物に見られる「なまこ壁」を模しているものと思われます。
1階は大藪地区の公民館。外階段を上がった2階が共同浴場です。
外階段を上がって引き戸を開けてすぐのところに券売機があるので、まずは料金を支払います。その次の引き戸を開けて中に入ると、左手に下足棚があり、奥に番台、そして更に奥には休憩スペースが設けられています。訪問時はその休憩スペースでお風呂上がりの子供たちがテレビで「サザエさん」を見ていました。
番台の方に券を差し出して暖簾をくぐると、更衣スペースは必要最小限の広さと設備といったところで、お客さんで混み合う場合は利用者同士の譲り合い精神が求められるかと思われます。なおロッカーはありませんので、車の中などに保管しておいた方が良さそうです。またドライヤーは番台で貸し出してくれます。
更衣室と同様に浴室も比較的コンパクトな造り。洗い場にはシャワー付きカランが4箇所あり、ボディーソープや石鹸などの備え付けはありませんので、事前に用意するか券売機で購入しておきましょう(タオルの販売もあります)。
浴槽は黒い御影石造りで3人サイズ。伊豆の硫酸塩泉らしく、随所に白い析出が付着しています。なお加温加水循環が行われていないかけ流しの湯使いで、湯船のお湯はピリッと熱く、その熱さによるちょっとした刺激が気持ち良さと爽快感をもたらしてくれました。
円筒形の湯口には真っ白な析出がコンモリ付着していますね。無色透明のお湯ですから一見すると普通の沸かし湯と大差ないように誤解されてしまいますが、決してそんなことはなく、石膏や芒硝などの硫酸塩類がしっかりと溶け込んでいることがわかります。こんな析出を目にしたらマニア心が疼いて惚れ惚れしちゃいますね。
小さいながらも露天風呂もあるのは魅力的です。建物の屋根下に内包されているためか、正直なところ開放感にいまひとつで、設けられている岩風呂のキャパシティも頑張って2人、1人ならばジャストサイズというような狭いものなのですが、目の前の漁港を一望でき、潮風も吹き込んでくるので、湯船で火照った体をクールダウンできますし、駿河湾の自然を体感しながら湯あみを楽しむことだって可能です。こちらも湯口には白い析出がコンモリこびりついており、内湯と同じ温泉が張られていることが分かります。利用時は先客の若者客がホースで過剰に加水していたため、残念ながらかなりぬるくなっていたのですが、湯口から出てくるお湯は激熱なので、本来は内湯と同じく熱い湯加減になっているものと想像されます。
この露天風呂もかけ流しで加温加水循環は無く、しっかりオーバーフローしています。内湯・露天とも加水は任意で可能です。なお塩素系薬剤による消毒が行われているそうですが、消毒臭は全く気になりませんでした。湯口から出てくる無色透明の激熱湯を口に含んでみますと、ほんのりと塩味が感じられるほか、石膏由来と思しきカルシウム感も得られました。硬めの鉱水に近い味わいと言ったらよいのでしょうか。しっとりと肌に馴染み、体の芯からよく温まる良質の温泉です。
土肥温泉(混合泉)
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 54.3℃ pH8.3 成分総計1.587g/kg
Na+:174.4mg, Ca++:300.7mg,
Cl-:214.1mg, SO4–:817.9mg, CO3–:1.2mg,
H2SiO3:46.9mg,
(平成22年10月8日)
加水・加温・循環ろ過なし
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を使用)
静岡県田方郡土肥町土肥61-3
紹介ページ(土肥温泉旅館協同組合公式サイト内)
13:00〜20:00(夏季やお正月には時間変更の可能性あり) 火曜定休
500円
ドライヤー番台貸出、石鹸など番台販売
私の好み:★★★
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