中伊豆の白岩温泉には数軒の温泉施設が集まっており、以前拙ブログでは「小川温泉共同浴場」などを取り上げたことがありますが、今回はそんな集落から細い道を山へ向かって上がっていった先にある「希望園」を紹介させていただきます。
道の右側に駐車場が、そして左側の傾斜地に複数の建物が並んでいます。まずは駐車場に最も近い建物へと向かいました。
私が敷地内に足を踏み入れると、老犬がやってきて私の足元をクンクンしはじめました。おそらく突然の訪問者を誰何していたのでしょう。施設のご主人曰く12歳のメスで、老犬ゆえ全ての動作がスローモーションだったのですが、それでも番犬としての自分の任務を全うすべく頑張っていました。
かつてこの施設では宿泊営業も行っていたようですが、いまでは入浴および休憩のみとなっており、以前食堂として使われていたと思しき建物の受付で料金を支払います。私の訪問時にはご主人がいらっしゃいましたが、もし誰もいない時にはカウンターに置かれているお皿へ湯銭を置いておけば良いみたいです。東北や九州でしたらこのような長閑なシステムはよく見られますが、まさか伊豆でこんな光景が見られるとは思いませんでした。
受付から一旦外に出て、敷地内の坂をちょっと上がって右に入ると浴場棟です。
浴場棟の前にはコンクリ躯体の構造物が設置されていました。貯湯タンクでしょうね。
受付がある旧食堂棟や浴場棟と向かい合うようにして、アプローチ坂路の反対側には小さな離れの建物がいくつか立ち並んでいるのですが、この小屋は貸切休憩処なんだそうです。12時から16時まで利用でき、料金は入浴料込みで2,000円とのこと。上画像は脱衣室内に掲示された、休憩どころを案内する張り紙です。
渋い外観から受ける印象通りの浴室は、昭和の面影を強く残しており、30〜40年前の箱根や伊豆の各所で見られた保養所の大浴場みたいな佇まいですが、建物の老朽化が進んでいるのか、補強用の新しい柱や梁が追加されていました。お風呂は内湯の浴槽が一つのみで露天風呂はありません。洗い場にはシャワー付きカランが3つ並んでおり、カランから出てくるお湯はおそらく温泉かと思われます。足元には伊豆青石が敷き詰められていました。
浴槽は目測で1.7m×2.5m程度、5〜6人サイズで、縁取りの黒御影石が浴槽内の水色タイルの爽やかな色合いを際立たせており、またコーナーのRが見た目に優しい印象を与えています。お湯は後述する木箱の湯口より投入されており、御影石の縁の上を乗り越えてしっかりとオーバーフローしていました。放流式の湯使いに間違いありません。なお私の訪問時、湯船の温度は42.1℃という絶妙の湯加減でした。
一方、木箱の湯口から吐出された時点のお湯は44.3℃というちょっと熱めの温度です。分析書によれば湧出温度は46.7℃なんだそうですから、貯湯槽経由でこちらへ注がれていることを考えますと、加温や加水がなされることなく、そのまま注がれているものと思われます。
お湯は無色透明でクリアに澄んでおり、湯の花などは見られません。お湯を口に含むと、匂いは無いものの、下田の観音温泉を連想させるようなアルカリ泉的微収斂が感じられます。ということは、冷やして飲泉したらきっと喉越しが良くてまろやかなんでしょうね。pH9.1という数値からもわかるように明らかなアルカリ性泉であり、炭酸イオンも多く含まれているためか、お湯の中ではとても滑らかな浴感が得られ、自分の肌がツルツルスベスベになって、とっても気持ち良いんです。一般的には42℃の湯加減でしたら、あまり長湯できないのですが、ここのお湯に限ってはそんな温度でも体への負担が少なく、お湯の新鮮さもあいまって、むしろ後ろ髪を引かれて湯船から出るのが躊躇われるほどでした。そして湯上がりもサッパリ爽快、とても心地の良い感覚が得られました。
白岩地区をはじめとする中伊豆エリアは石膏や芒硝を含む無色透明の硫酸塩泉が多く存在しているイメージがありますが、白岩地区でも集落から離れてここまで山奥へ入ってくると、そうした硫酸塩泉とは一線を画す、南伊豆の観音温泉や正吉の湯みたいなツルツルスベスベの滑らかなアルカリ泉が湧出していることを今回初めて知り、私にとっては新しい発見でした。中伊豆エリアで湯めぐりをしている時、もし硫酸塩泉に飽きたら、こちらへ立ち寄ってワンクッション挟むのも良いかもしれません。ロケーション的にもお湯の質としても、穴場的存在と言える温泉施設でした。
希望の湯 白岩10号
アルカリ性単純温泉 46.7℃ pH9.1 243L/min(動力揚湯) 溶存物質0.214g/kg 成分総計0.214g/kg
Na+:43.2mg(88.68mval%), Ca++:4.5mg(10.38mval%),
Cl-:8.9mg(11.68mval%), OH-:0.2mg, SO4–:24.1mg(23.36mval%), HCO3-:45.4mg(34.58mval%), CO3–:19.2mg(29.91mval%),
H2SiO3:66.3mg,
(平成27年8月12日)
加温加水循環消毒なし
静岡県伊豆市上白岩1516 地図
0558-83-1283
12:00〜18:00 金曜定休
600円
石鹸のみ備え付けあり、他備品類無し
私の好み:★★+0.5
コメント
Unknown
こんばんわ^^。
いつもの様に、その地を管理する犬猫に、
「あ、怪しい奴め、、、!」
と、職務質問されてしまったのですね?
私もきっと、同じ運命になるでしょう(^^)
箱根に廬山荘と言う簡素な宿があるのですが、
そこのお風呂もこんな感じで昔懐かしい風景です。
湯船の温度は42度との事ですが、最近になってようやく、
熱めのお湯も良いものだと本気で思う様になりました。
先日、某所で結構熱めのお風呂に入る機会があり、
周りの人たちは早々に上がって行きましたが、
私は随分入ってましたよ。最初は確かに熱いのですが、
しばらく入ってるとあの暑さが癖になり、
何と言っても湯上りのシャープな発汗、
そして石仮面的な覚醒感がたまりませんね^^b
いつか、熱湯もマスターしてみたいものです。
Unknown
ぬる湯マスターさん、こんばんは。
そうなんです。いつものことですが、番犬さんに誰何され、思いっきり疑われてしまいました。やはり動物の本能は素晴らしく、怪しい奴をたちどころに見分けてしまうのですね。気を付けなければ…。
熱いお湯もいいものですよね。私は、いわゆる適温のお風呂はあまり印象に残らないのですが、長湯できるぬる湯か、あるいは、おっしゃるようなシャープな感覚がある熱いお湯のどちらかですと、自分に合うような気がします。すました顔をして熱い風呂に入って他のお客さんから驚かれるのも、また一興ですね(嫌味な爺さんみたいですが)。