鶴子温泉 勘兵衛荘

山形県

※残念ながら2019年に閉館したようです。

 
 
昨年秋の某日、山形県尾花沢市の鶴子温泉「勘兵衛荘」へ立ち寄って入浴してまいりました。こちらは鶴子温泉唯一のお宿であり、新鶴子ダムの下流側に広がる長閑な集落の一角に位置しています。宿の目の前にはコミュニティーバスの停留所が立っているのですが、肝心のバスは鉄道駅から離れた尾花沢の市街から乗車しなくてはいけないため、当地へのアクセスは車の方は便利かと思います。駐車場の前に建つ小屋からは煙が上がっており、薪を焚くような音や匂いが伝わってきたのですが、こちらのお風呂では薪で加温しているのでしょうか。

 
反り返った太い金精様や玉をダランとぶら下げた信楽焼を尻目に、館内へお邪魔し、お宿の方に湯銭を支払って浴場へと向かいます。

 
玄関から廊下を右へ進んで、クランク状に折れた先に暖簾がかかっていました。館内は昭和から時が止まったかのような佇まいです。使われなくなった手動式の古い自販機は、花瓶を置くための台と化していました。少々雑然とした脱衣室を経て浴室へ。

 
お風呂は男女別の内湯が一室ずつ。大きな浴槽がひとつあり、男女間仕切りの一部には磨りガラスが用いられていました。見るからに昭和の温泉宿といった風情で、豆タイルが多用された室内は昔日の面影をたっぷり残しています。ガラス窓は二重になっており、ちょっと曇っていたのですが、窓を開けて外を眺めると、谷あいに鬱蒼とした森が広がっており、ところどころで紅葉も見られました。そして山から爽やかな風がそよそよと穏やかに吹き込んできました。

 
水色タイル張りの浴槽は(目測で)2.5m×3.5mの四角形。一般的なお風呂よりもやや深く、入り応えのある造りになっています。壁から突き出たパイプより加温されたお湯が放物線を描きながら落とされており、湯口で47~8℃、湯船で42~3℃とやや熱めの湯加減になっていました。館内表示によれば、加温以外の加水循環消毒は行われていないとのことですが、浴槽縁などからのオーバーフローは確認できませんでした。ただ、浴槽内に穴が開けられていたので、もしかしたらそこから吸引排水されているのかもしれません。
お湯は無色透明で、湯中ではちらほらと黒っぽい浮遊物が見られましたが、湯の華か不純物であるかは不明です。分析表によれば泉質名は単純硫黄泉であり、硫化水素イオンも4.6mg含まれているため、硫黄泉らしい知覚的特徴があるものと期待していたのですが、湯口や浴槽のお湯から明瞭なイオウ感は得られず、イオウが劣化した後の砂消しゴムみたいな風味が名残のように少々感じられた程度でした。源泉で湧出した後、タンクでストックされたり加温されたりするうちに、イオウ感が飛んでしまったのかもしれません。浴感としては弱ツルスベで、少々トロミもありました。もしかしたら入浴するタイミングによってお湯の質感が変化するのかもしれませんね。でも熱めのセッティングだからか、湯船に浸かるとよく温まり、湯上り後はしばらく汗が止まりませんでした。

 
浴室の洗い場にはカランが3つあり、うち2つがシャワー付きなのですが、今回の入浴で私が気にいったのは、湯船のお湯よりもカランのお湯です。お湯のハンドルを開けて吐出されるお湯は、強くないもののはっきりとしたタマゴ味とタマゴ臭を有しており、間違いなく源泉から引いていることがわかりました。芳しい香りを放つこのお湯が湯船に張られていたら最高なんだけどなぁ…。
お湯のフィーリングといい、宿の佇まいといい、温泉旅館というよりは湯治場の鉱泉宿と表現したほうがしっくりくる、渋くて哀愁たっぷりのお宿でした。

1号源泉
単純硫黄温泉 29.2℃ pH9.5 掘削動力揚湯(湧出量記載なし) 溶存物質294.4mg/kg 成分総計294.4mg/kg
Na+:78.8mg(92.20mval%),
Cl-:54.7mg(38.31mval%), OH-:0.5mg, HS-:4.6mg, SO4–:13.6mg, HCO3-:73.7mg(30.10mval%), CO3–:17.6mg(14.68mval%),
H2SiO3:37.2mg,
(平成17年12月14日)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
加水循環ろ過消毒なし

JR奥羽本線(山形新幹線)・大石田駅より山交バスの「尾花沢待合所」行で終点まで乗車し、そこで尾花沢市コミュニティーバス鶴子線へ乗り換えて「鶴子温泉」下車すぐ
山形県尾花沢市鶴子912-81  地図
0237-28-2332

※残念ながら2019年に閉館したようです。
日帰り入浴時間不明
300円
シャンプー類あり、他備品類見当たらず

私の好み:★+0.5

コメント

  1. Dan より:

    Unknown
    我々もここは好きでございます
    女湯が湯溜めされてない時もあるんですよね
    お湯の香りもヨカです

    ここを訪問する時は、必ずと言っていい程、
    お昼はこの近くの鶴子そばです
    お蕎麦はとても美味しく、また、
    大根汁で割るつけ汁もグッドです*\(^o^)/*

  2. Dan より:

    Unknown
    我々もここは好きでございます
    女湯が湯溜めされてない時もあるんですよね
    お湯の香りもヨカです

    ここを訪問する時は、必ずと言っていい程、
    お昼はこの近くの鶴子そばです
    お蕎麦はとても美味しく、また、
    大根汁で割るつけ汁もグッドです*\(^o^)/*

  3. K-I より:

    Unknown
    Danさん、こんばんは。
    「そば処鶴子」には一度行ってみたいのですが、この時はランチタイムから外れていたので、残念ながら見送ってしまいました。いつかはいただくつもりです♪
    山形県は美味しいそば屋が多いので、優柔不断な私はいつも「どこが良いのか」と迷っちゃいます(^^)

  4. K-I より:

    Unknown
    Danさん、こんばんは。
    「そば処鶴子」には一度行ってみたいのですが、この時はランチタイムから外れていたので、残念ながら見送ってしまいました。いつかはいただくつもりです♪
    山形県は美味しいそば屋が多いので、優柔不断な私はいつも「どこが良いのか」と迷っちゃいます(^^)

  5. K-I より:

    追記
    >Danさん
    この記事は半年前のことなので、当日どのような行動をしたのか忘れかけていたのですが、今調べてみたら、私は鶴子温泉から出た後、車を南下させ、東根の伊勢そばで、太い蕎麦&固いかき揚げと格闘しておりました。

  6. K-I より:

    追記
    >Danさん
    この記事は半年前のことなので、当日どのような行動をしたのか忘れかけていたのですが、今調べてみたら、私は鶴子温泉から出た後、車を南下させ、東根の伊勢そばで、太い蕎麦&固いかき揚げと格闘しておりました。

  7. Dan より:

    Unknown
    「伊勢そば」に行かれたとですか
    あっこの蕎麦は灰色でぶっとくて、正に格闘の
    表現が似合ってますね
    随分昔、山形の知人に連れていかれました
    この知人の悪巧みで大盛りを食べさせられました
    なんとかクリアしてやりました(笑)
    (宮城県人は山形の太い蕎麦は苦手と思っています)
    癖になる美味しさです(^o^)v

  8. Dan より:

    Unknown
    「伊勢そば」に行かれたとですか
    あっこの蕎麦は灰色でぶっとくて、正に格闘の
    表現が似合ってますね
    随分昔、山形の知人に連れていかれました
    この知人の悪巧みで大盛りを食べさせられました
    なんとかクリアしてやりました(笑)
    (宮城県人は山形の太い蕎麦は苦手と思っています)
    癖になる美味しさです(^o^)v

  9. K-I より:

    Unknown
    >Danさん
    >宮城県人は
    そうなんですか!? 知りませんでした。かく言う私も東京の人間ゆえ細くて手繰りやすい蕎麦が好きなのですが、山形へ行くと太くて殻ごと挽いているワイルドな蕎麦が食べたくなります。また新潟の中越へ行くと、何が何でも布海苔入りの蕎麦が恋しくなります。お蕎麦はその地域やお店ごとに特徴があって面白いですね。

  10. K-I より:

    Unknown
    >Danさん
    >宮城県人は
    そうなんですか!? 知りませんでした。かく言う私も東京の人間ゆえ細くて手繰りやすい蕎麦が好きなのですが、山形へ行くと太くて殻ごと挽いているワイルドな蕎麦が食べたくなります。また新潟の中越へ行くと、何が何でも布海苔入りの蕎麦が恋しくなります。お蕎麦はその地域やお店ごとに特徴があって面白いですね。

  11. 齊藤樹 より:

    温泉研究家
    こんにちは。
    ここ、ググると廃業したようですね(涙)。
    成分表を撮ってありましたら、配信頂ければ幸いです。

  12. 齊藤樹 より:

    温泉研究家
    こんにちは。
    ここ、ググると廃業したようですね(涙)。
    成分表を撮ってありましたら、配信頂ければ幸いです。

  13. K-I より:

    Unknown
    >齊藤さん
    廃業していたようですね。後日記事を修正しておきます。分析表はすでにメールで送っております。

  14. K-I より:

    Unknown
    >齊藤さん
    廃業していたようですね。後日記事を修正しておきます。分析表はすでにメールで送っております。

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