称明滝の下の露天風呂

新潟県

昨年(2019年)の秋の某日。私は越後富士の別称を持つ新潟県の名峰妙高山と、それに連なる火打山を縦走しました。


笹ヶ峰から登っていった火打山の山頂では、あいにく全視界を濃い雨雲に覆われてしまい、景色を眺めることができなかったのですが・・・


山小屋で夜を越してから登った翌朝の妙高山山頂では見事に晴れ・・・


四方に広がり、十重二十重に果てしなく続く、この上なく美しい山稜を眺望することができました。日常生活の世界では決して得ることのできない絶景を、飽きるまでひたすら眺めていられる幸せは、苦労して頂へ登り着けた者だけが得られる特権です。これだから山登りはやめられません。

さて、無事二峰の連続登頂を終えた後は、燕温泉へ向かうルートを選んで下山しました。なぜかと言えば・・・


ちょうどルートの中間にある称明滝に用事があったからです。
滝を見たいのではなく、滝に用事があったのです。登山しないと辿り着けない滝であるため知名度は低く、それゆえ観光名所にはなっていないのですが、そんな滝に私はいかなる用事があったのか。マニアの方なら言わずもがなですが、どういうことかと申しますと、滝行するわけでも、治山工事をするわけでもなく・・・


滝の真下に立派な温泉の露天風呂があるからです。
このあたりはふもとに広がる温泉地の源泉のひとつとなっており、目の前から白濁した硫黄の温泉がコンコンと湧いているのです。


岩を組みモルタルで固められた立派な浴槽は、地元有志の方がつくったもの。
温泉の源泉に築かれたこの浴槽は、普段は空っぽであることが多いのですが、私の訪問日はたまたま湧いたばかりの白濁硫黄泉が注がれ、十分な嵩にまでお湯が張られていましたので、失礼して入浴させていただいたのです。

ちなみに、目の前で轟を上げている称明滝から落ちる水にも白濁した温泉成分が濃く含まれているため(尤も滝の時点では完全に冷めています)、滝はまるで生糸を垂らしたように真っ白に見えます。また滝壺付近でもお湯が自然湧出しているため、浴槽が空っぽの時に当地を訪れた温泉マニアのみなさんは、泥まみれになりながら滝壺の湯溜まりに入っているらしく、ネット上で当地を調べると、滝壺で尻湯をしながら滝飛沫を浴びている画像や記事を散見します。私を含めた温泉マニアは、常識人が避けるような行動を嬉々としてしまう傾向にあり、当地に関する記事を拝見する都度、その変態性に思わず共感していたのですが、私は普段の行いが良くないにもかかわらず、どういう訳かこの日ばかりは運よく浴槽にお湯が張られていたため、私は滝壺で泥にまみれた「滝行」のような変態的行動をとらずに済みました。


お湯は目の前の源泉からホースで引かれており、湯船の温度は43~4℃でちょっと熱めでしたが、その熱さのおかげで身がシャキッと締り、疲れがすっかり吹き飛びました。まわりにはご丁寧にベンチや桶まで用意されていますので、桶をお借りして入浴前に掛け湯して、汗を落としてから湯船に入りました。

お湯はたしかに白濁しており、湯の花もたくさん浮遊していますが、綺麗な青みを帯びており、また湧出してまだ間もない新鮮な状態であるため、そこまで強い濁り方を呈しているわけでもありません。またお湯からは甘み伴う硫黄味とほろ苦みが感じられますが、そこまで硫黄感が強いとも言えず、むしろ優しいマイルドな感覚が印象的でした。湯船に入ると引っ掛かる浴感が全身に得られます。あくまで私の勘ですが、おそらく重曹と硫酸塩が多いのではないでしょうか。いずれにせよ、麓の赤倉温泉街で入るお湯とは全く異なり、むしろ燕温泉に近いタイプのお湯と言えるでしょう。


目の前で落ちる真っ白な滝を仰ぎ見ながら、フレッシュな白濁の硫黄泉に浸かるひとときはこの上ない極楽です。登山の疲れが一気に癒されました。

分析表なし

新潟県妙高市関山
麓から最も近いアクセス方法は、燕温泉より燕登山道をひたすら登るルートです。

お湯が張られていれば入浴できますが、通常は空のことが多いので、入れるかは運次第です。
無料
ほぼ野湯に近いお風呂のため備品類なし

私の好み:★★★

コメント

  1. blackup より:

    Unknown
    いってみたいな!

  2. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    お帰りなさいませ^^。
    国内復帰第一弾から大いに笑わせて頂きました。
    さすがは大いなる変態であられるK1殿ですね^^b
    私の様な、小変態など足元にも及びませぬ(><)
    ホースが見えますが、このホースからお湯が出るのでしょうか?
    ちょっと熱そうですが、フレッシュなお湯なのでしょうね~。
    海外での疲れを、ゆっくりと癒して下さりませ^^。

  3. K-I より:

    Unknown
    blackupさん
    こんにちは。燕温泉の登山ルートから行けば、それほど難しくなく辿り着けるかと思いますので、機会があれば是非行ってみてください。

    ぬる湯マスターさん
    こんにちは。変態というお言葉はまさに私にとっては名誉、誇らしいことです。ありがとうございます。目の前の源泉があって、おっしゃるようにホースで引いています。引湯といってもその距離は僅か数メートルです。実にすばらしい温泉でした。

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