（2024年8月訪問）
2024年夏の避暑地を巡る旅。前回記事で取り上げた岐阜県奥平湯温泉郷の翌日は、県境を越えて信州に入り、乗鞍高原へとやってまいりました。とはいえ旅の直前になって旅程を決めたため、繁忙期の乗鞍高原で予約が取れる宿は少なく、そんな中でお部屋を確保できたのが「緑山荘」でした。メインストリートからちょっと外れた集落の中にある民宿です。
案内されたお部屋は2階の和室。造りこそ年季が入っていますが綺麗に維持されており、使い勝手に問題はありません。なおお布団はセルフで敷きます。洗面台やトイレなどの水回りは共用になりますが、水回り関係は館内に複数箇所あり、お部屋によって使うところが指定されます。どうやらコロナ禍以降そのような運用になったようです。
窓からの景色は信州らしい山村の長閑な田園風景。東京は地獄釜の如き猛暑なのに、この地は冷房要らずでとても涼しく快適です。
食事は夕食・朝食とも別室でいただきます。様々な山の幸によって彩られた食卓に心が弾みます。お宿の説明によれば、食事に出てくる野菜の多くは隣の畑でおかみさんが作り、山菜などはご主人や若女将が採ってくるとのこと。
こちらは鮎、そして天ぷらですね。焼きたて揚げたてをサーブしてくださるので、最もおいしい状態でいただけます。
朝ごはんは日本旅館らしい献立で、彩り豊かで栄養のバランスもよく、一日に必要な活力をしっかり得ることができました。湯豆腐も美味しかった！
館内の内湯は2室あり、22時までは1時間区切りで部屋ごとに貸切で利用します。帳場には内湯の利用時間を管理するホワイトボードが掲出されており、空いている時間枠に自分の部屋の番号札（マグネット）を貼れば予約完了です。なお22時以降と翌朝は男女別の内湯として使います。
2室の内湯はシンメトリーな構造になっており、大差は無いので、わざわざ左右両方の浴室を利用する必要はなく、片方で十分かと思いますよ。ウッディーな室内の洗い場には新しくて使い心地が良好なシャワー付き水栓が3つ設けられています。脱衣室と洗い場の間のほか、洗い場と湯船の間にも引き戸があり、つまり洗い場と湯船の空間が区切られているのですが、これは硫化水素対策なのでしょうか。
木造の湯船は2人サイズ。ちょっと熱めの白濁湯が硫黄の香りを漂わせながらかけ流されています。
こちらのお宿で白眉なのは、お宿の左側裏手に建っている離れの露天風呂です。こちらも2室あり、貸切で利用するため、帳場で利用したい旨を告げ、帳場にさがっている札を「使用中」に裏返してもらってから露天風呂へ向かいます。
露天風呂といっても頭上に屋根がかかっているタイプですが、開放的な造りで環境も良く、とってもブリリアントな環境です。
お風呂の目の前にはソバ畑が広がっており、奥の山々と相まって長閑且つ美しい景色です。露天風呂だけでも非日常を味わうには十分ですが、その上、白濁した硫黄泉の温泉に入れるのですから、非日常の快感をタブルで堪能できるわけです。
内湯・露天ともに乗鞍高原温泉共通である湯川源泉が引かれています。青白みを帯びた強い白濁湯からは二酸化硫黄由来の刺激的な匂いが強い漂い、酸味は程々に抑えられている一方で苦味や渋みがはっきりと主張してきます。湯船に浸かると白濁硫黄泉ならではの粉っぽさがあり、同時並行してツルスベと引っ掛かりが混在して肌へ伝わってきます。さすが硫黄泉だけあって血管拡張効果は力強く、お風呂から上がってもしばらくは熱が体内に籠り汗が出続けます。なお分析表によれば源泉の湧出温度が46℃前後であり、そこから長距離を引湯して温泉街の各施設で利用するため、かけ流しとはいえ入浴に適した温度へ加温されているものと思われます。
いかにも民宿らしく、昭和の頃の親戚宅にお邪魔したような雰囲気が漂うアットホームなお宿で、土地の食材を多用したお食事、露天風呂と内湯それぞれの温泉浴場、いずれも素晴らしく、しかも真夏なのに冷房要らずの涼しさなので、大変満足のゆく滞在となりました。私が利用したのはお盆休みのハイシーズンだったのでそれなりの料金設定でしたが、それ以外はリーズナブルな価格だそうですので、お財布に優しい旅をしたい人にもおすすめです。
湯川源泉
単純硫黄温泉（硫化水素型） 46.8℃ pH3.20 蒸発残留物697mg/kg
Na+:62.8mg, Ca++:61.5mg,
Cl-:77.2mg, S2O3–:1.7mg, HSO4-:5.7mg, SO4–:336.8mg,
H2SiO3:70.7mg, CO2:202.0mg, H2S:35.4mg,
（平成27年11月6日）
加水・循環・消毒なし
加温あり（入浴に適した温度を保つため浴槽内で熱交換）
長野県松本市安曇3936
0263-93-2223
ホームページ
日帰り入浴設定なし
私の好み：★★★
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