オーストリア バーデン・バイ・ウィーン レーマーテルメ

オーストリア

オーストリアの首都ウィーンから南へ約26km、電車に乗れば1時間弱で行くことのできるバーデン(・バイ・ウィーン)は、古くから温泉保養地として名を馳せてきました。19世紀前半にはハプスブルク家の夏の離宮が置かれ、これに伴い貴族や芸術家が訪れるようになり、作曲家ベートーヴェンもこの地をこよなく愛したそうです。彼が「歓喜の歌」で有名な交響曲第9番を書き上げるために滞在した家(ベートーヴェンハウス)もこの街に残っています。

街の名称は一般的にはバーデン(Baden)ですが、単にバーデンだけですとドイツ語圏で似たような地名(バーデン・バーデンやヴィースバーデンなど)があって混同しやすいために、ウィーンの近くにあるバーデンという意味で、後ろに(バイ・ウィーン)と付して称することも多いようです。

バーデンへ行く電車は、ウィーンの国立オペラ座の交差点を挟んだ斜め前にあるOper電停から乗車します。市内では路面電車網の一角を成しているため、途中までチンタラ走ってイライラしますが、乗車してから30分を過ぎる頃になるとようやく力強く走ってくれ、車窓には美しい畑も広がり、このまま快走してくれと思うまもなく、終点のBaden Josefsplatz電停に到着。

郊外の保養地らしく、色とりどりの建物が街並みを彩り、かといってリゾート地にありがちな騒々しさは皆無であり、静かで落ち着いた心地よい雰囲気が街を包んでいます。街の中心広場を抜けて生鮮野菜を扱う市場を通り過ぎ、下車してから5分ほどで正面広場の花壇とお濠のように周囲を取り囲む人工池が目に鮮やかなレーマーテルメ(Römertherme)に辿りつきます。古い建築物が建ち並ぶバーデンにあって、このレーマーテルメはいかにも現代建築らしく、方形で壁一面ガラスばりの特徴的な建物です。

 
左:ウィーン中心部のOper電停から発車するバーデン線の電車
右:終点Baden Josefsplatz電停

 
バーデンの街並み

窓口で入場料を支払うと、腕時計のような形状のリストバンドが手渡され、これによって入退場は勿論のこと、場内での買い物や飲食なども現金を用いることなく利用することができます(事後清算)。更衣室は男女共用で、これはドイツ文化圏にある温浴施設共通のスタイルです。私は以前ドイツのヴィースバーデンで温泉に入ったことがあったのですが、温泉入浴は全裸で混浴、更衣室も男女共用で、老若男女が同じところで何の躊躇いも恥じらいもなく堂々とすっぽんぽんになって着替えているところに遭遇して目を丸くした記憶がありますが、更衣室に関してはここも同様でした。でも他人の目が気になる人には、ちゃんと試着室のような更衣スペースが設けられていますのでご安心を。ロッカーは空いているところが自由に使えますが、鍵に関してはリストバンドを用いず、2ユーロのコインを投入して施錠します(鍵を開けるとコインはリターンします)。


男女共用のロッカールーム。とても綺麗に整備されています

更衣室からシャワールームを経て屋内プールへ。天井が全面ガラス張りで非常に採光のよいこのプールは、中央を横切る通路により前後に二分されていて、手前側は小さな子供でも遊べる浅いソーンと、自由に泳いだり浮いたりできるゾーンがあり、奥側はコースロープが張られて真剣に泳ぐ人ためのゾーンが設けられています。またプールの各所にはジャグジーや滝のように水が出てくるところなど、水の流動性を生かして楽しめる設備があって、予め決められたタイムスケジュールに従ってそれぞれが作動するようになっています。

 
左:ガラス張りの天井からたっぷりの陽光が降り注いで明るい屋内プール
右:ジャグジー等の作動時間を表示したタイムスケジュール。5分作動して5分休むパターンを繰り返します

この屋内プールは普通の水。お目当ての温泉は屋外にありました。屋内から屋外へ出るところには”Schwefel-becken”、つまり硫黄槽と書かれた看板が立っていました。またこの看板には「入浴は20分まで」「34~36℃」とも書かれています。温泉入浴に時間制限を設けるのはヨーロッパ共通ですが、34~36℃とはちょっとぬるい。無色透明のお湯からは弱い硫黄の匂いが、そして石膏泉のような味が感じられました。恐らく源泉そのままではなく、加水やら加温やら循環やら、相当手が加えられていそうです。
というのも、この浴槽の目の前には男の口から32℃ぐらいのお湯がチョロチョロ出ている泉があって、このお湯からは強い硫黄臭とたまご味が感じられたのです。本当ならばこのお湯に浸かりたいのですが、お湯溜まりは非常に浅くて入れるようなものではなく、あくまでオブジェであり、実に悔しい思いがしました。温泉槽は先に述べた”Schwefel-becken”のひとつのみで、屋外にはもうひとつ浴槽”Kleeblatt-becken”があるのですが、そちらは普通のお湯(30~32℃)でした。

 
左:屋外にある硫黄泉浴槽
右:硫黄泉浴槽の前には、源泉そのままと思われるお湯がチョロチョロ出ている泉がありますが、これはあくまでオブジェであり、入浴できません


もうひとつの屋外浴槽は普通のお湯。たくさん打たせ湯があって、マッサージ効果バツグン

訪問したのは7月上旬の平日だったのですが、お客さんはリタイヤした老人が多く、あたかも介護施設の様相。プールサイドでは皆さんデッキチェアーに寝そべって、日光浴を楽しんでいらっしゃいました。またバスローブを羽織っている方が多いのも特徴的で、けだし施設内のサウナに入るためと思われます(ドイツ文化圏のサウナではバスローブの着用を求められることが多いようです。なお私は今回サウナには入りませんでした)。

ちゃんとした温泉を思い描いて訪れると期待はずれに終わるかと思いますが、ウィーンから近い距離にあるので、時間のあるときに足を伸ばしてプールに入り、リフレッシュしてみるのもいいかもしれません。

ウィーン中心部のOper電停からバーデン線で約45分、終点Baden Josefsplatz電停下車、徒歩約5分
所在地:Brusattiplatz 4, 2500 Baden 地図
電話:02252-45030
ホームページ

10:00~22:00
€9.50(2時間)、1時間超過毎に€1.70 

水着着用
ドライヤーあり

私の好み:★

コメント

タイトルとURLをコピーしました