最上川に架かる河北橋から右岸の土手の上を数百メートル進んだ、ちょうど土手の真下にある一軒の温泉入浴施設。SLを模造した構造物が目印です。
画像では見切れていますが、右隣に建つアクリル波板屋根の小屋が廃墟寸前のボロボロで、醸し出している古さや雰囲気が、温泉もその小屋もどことなく似ているので、土手の上から俯瞰で見たときに温泉は営業しているのかちょっと不安でしたが、玄関にはちゃんと「営業中」の札が提げられていました。
目の前を最上川が流れ、周囲には田んぼや果樹園が広がり、西を向くと月山が、東を向けば蔵王連峰がそれぞれ綺麗な姿で聳えている、実に長閑で美しい風景が広がっている場所です。
玄関を入るとおばちゃんが笑顔で対応してくれました。直接お金を支払います。内部は古民家っぽい小さな食堂のような造りで、元々はそのような使われ方をされていたのでしょうが、今はちょっと雑然としており、あまり寛げるような雰囲気ではなく、あくまで湯上がりの休憩で腰かけるだけに使う空間だと思った方がよいかも。
脱衣所はごくシンプル。壁には川柳が張られていました。いわゆるサラリーマン川柳的なものなんでしょうか、「少子化を 食い止めたいが 相手なし」「うしろ髪 ひかれるほどの 髪は無し」「昔から 女性天皇 我が家では」などなど、どこかで聞いたことのあるような…。壁紙には落書きもたくさん。けっこう古い施設なんですね。
浴室は男女別の内湯がひとつずつ。浴室自体はそんなに大きくはありません。洗い場のカランはシャワー付き混合栓が5基、カランから出てくるお湯は源泉です。浴槽は7~8人サイズで、縁からはお湯がしっかりオーバーフローされていました。脱衣所ないの表示によれば、加水加温循環消毒は無しとのこと。
浴槽近くには外へ出られそうなアルミのドアがありますが、鍵がかかっていました。
お湯はごく薄い麦茶みたいな色で透明です。湯口にコップが置かれているので飲んでみると、弱い塩味+重曹味+ほろ苦味、モール臭+インクのような油臭が感じられました。お湯に体を沈めると、湯口付近では細かな気泡が付着します。食塩泉と重曹泉の特長がよく顕れているツルスベ感の強い浴感で、湯上がりの保温力も強く、なかなか汗が引きません。見た目、味や匂い、浴感などなど、泉質的には青森県津軽平野に良く見られる温泉に似ている気がします。館内の分析表によれば、使用している源泉は2種類(1号と2号)あるようですが、どのような使い分けをしているのか、あるいは混合しているのかはわかりません。
風呂から上がり、着替えて帰ろうとすると、この施設を守るおばちゃんが「湯上がりにどうぞ」とお茶とを出して下さいました。おばちゃん曰く、この温泉はおばちゃんのお父様が、身体障害を抱えるご自身の体の不自由を何とかして克服しようと、昭和58年に掘り当てたもので、お父様の願いが神様に届いたのか、自分が掘り当てた温泉の効果は覿面、体はすっかり回復し、達者な者が世間に甘えてはならないと考えて、何と今まで受給していた年金を返納してしまったんだそうです。意志と克己心の強さには驚かされます。温泉のパワーを改めて思い知らされる話でした。
海老鶴1号源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 46.3℃ pH7.8 溶存物質1541mg/kg 成分総計1557mg/kg
ナトリウムイオン460.4mg/kg(89.70mval%)、塩素イオン616.5mg/kg(75.61mval%)・炭酸水素イオン334.3mg/kg(23.82mval%)
海老鶴2号源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 49.4℃ pH7.9 溶存物質1100mg/kg 成分総計1112mg/kg
ナトリウムイオン324.4mg/kg(94.26mval%)、塩素イオン380.4mg/kg(69.27mval%)・炭酸水素イオン284.3mg/kg(30.08mval%)
山形県西村山郡河北町谷地海老鶴164 地図
0237-72-5151
6:00~20:00
250円
石鹸のみ備え付けあり、他は販売
私の好み:★★★
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