新府桃源郷と京王の切符あれこれ(100周年記念入場券など)

旅行記

※今回の記事に温泉は登場しませんのであしからず。また拙ブログでは毎度のことですが、今回取り上げる内容は1ヶ月ほど前の、とっくに旬を過ぎたものですのでご了承下さい。

●京王の補充券で新府桃源郷の花々を鑑賞しに行く
 
(画像をクリックすると拡大)(一部モザイク処理しています)
晴天に恵まれた今年(2013年)4月中旬の某日、春を全身で体感したくなり、安物の一眼カメラを小脇に抱えて、電車に乗って山梨県韮崎市の新府桃源郷へ出かけることにしました。新府桃源郷とは韮崎市新府の丘に広がる桃畑のことでして、毎年4月になると60haにも及ぶ果樹園で桃が一斉に花を開き、辺り一面が桃の花で覆われてまさに桃源郷という名前にふさわしい美しい景色が広がるのであります。俗物化してしまった桜よりマイナーで人出も少ない桃の方が自分の性分に合うので、春の花見は数年おきに新府へ行っています。

新府桃源郷の最寄り駅は中央線の新府駅ですので、訪問にあたっては当日に新府駅までの切符を購入したのですが、単に片道きっぷを購入するのでは芸がないので、ちょっと或る工夫を施してみました。拙ブログでは何度か記事にしていますが、私は昔ながらの紙の切符、とりわけ手書きの切符が大好きです。切符ならではのしっかりとした紙の質感を指先で感じながら、地名や必要事項が記入された券面をまじまじと見つめていると、現地に向かうまでの旅情がより一層高まるんです。もっとも、こんな感情に共感してくださる方が果たしてどれだけいらっしゃるかわかりませんが、今回はそんな私の奇特な嗜好を満足させる他、途中の甲府駅で途中下車しなきゃいけない用事があったため、その工夫を実践すべく京王線の某駅へ出向いて私の要望を満たす切符を発行してもらうことにしました。

通常、調布→高尾→新府という経路の片道乗車券を購入する場合は…
・京王 調布→高尾:310円 (営業キロ27.5km)
・JR 高尾→新府:1,620円 (同98.1km)
と会社ごとに別々に購入して、運賃は合計で1,930円となります。各社とも営業キロが100km以下なので乗車券の有効期限は当日限りとなり途中下車できません。でもこの日、私は甲府駅で途中下車をする必要があります。もし上記のように京王とJRを別々に購入し、更にJR券を甲府で買い直すのならば、
・京王 調布→高尾:310円
・JR 高尾→甲府:1,450円、甲府→新府:320円
となり、3枚合計で2,080円ですから、JR区間を通しで購入するより150円高くなってしまいます。そこで目をつけたのが営業キロ。調布・高尾間の27.5kmと高尾・新府間の98.1kmをたせば100kmを超えますから、途中下車が可能になるわけです。つまり調布から新府まで通しで買っちゃえば、運賃が高くならずに途中下車もできちゃうわけですね。調布駅を含む京王線各駅(※1)の場合、高尾で接続する中央線は小淵沢までが連絡輸送(連絡きっぷ取扱)の範囲内ですから、新府までの切符は問題なく購入できます(※2)。ということで、京王線某駅の窓口に赴き「途中下車したいので・・・」と申し伝えた上で、新府までの乗車券を購入致しました。京王では余程のことがない限り補充券での発券をしないそうですが、私が今回購入した券は駅の券売機や端末では発行できないため、手書きの切符(つまり補充券)での発券となりました。

(※1)本線系統でも新宿~代田橋間は適用除外なんだそうです。
(※2)新府の一つ手前である韮崎ですと、JRの東京近郊区間のエリア内ですから、100kmを超えていても途中下車できません。このため京王から通しで買う意味が無くなり、窓口で「JR線の切符はJRの駅で買って下さい」と通しの切符の発券を断られちゃう可能性が高くなります。

 
京王線の特急と中央線の普通列車を乗り継ぎ、途中の甲府で所用を済ませてから新府駅までやってきました。勾配の途中にホームが設けられている無人駅です。


駅から桃源郷までは歩いて10分くらいですが、駅ホームの左右両側には既に桃や菜の花が咲いており、そんな花々の中をかき分けるように、八ヶ岳を背景にしながら普通列車が駅へ滑りこんでくる風景を捉えることができました。

 
駅から10分も歩かないうちに新府桃源郷に到着です。花も山々も青空に映えており、桃もちょうど満開を迎えたところでした。

 
辺り一面に桃の花が広がり、その彼方に八ヶ岳が聳えています。蒼・桃・緑のトリコロールが目に鮮やかですね。

 
桃の花はただ人に見せるために咲いているわけじゃない。ちゃんと美味しい水蜜桃を実らせることが、本来の役割であります。呑気に花見をしている私のような観光客を尻目に、農家の方はひたすら受粉作業に勤しんでいました。長い時間にわたって腕を上げている作業は相当疲れちゃうでしょうね。ごくろうさまです。そんな農家の方のお陰で私たちは甘くてジューシーな桃を頬張ることができるのです。


八ヶ岳と逆の方向に聳えるのは、いわずもがな我らが日本一の山。

 
  
西を向けば南アルプスの山々。あぁ、なんて綺麗なんでしょう。
新府桃源郷の美しさは、畑を埋め尽くす桃の花もさることながら、その周囲に聳える碧々とした山岳の対比があるからこそ、余計に鮮やかに映えるんでしょうね。
この日は早く起床して自分でおにぎりを作ってきましたので、この南アルプスを目の前に見上げるところで腰を下ろし、春の麗らかな陽気に包まれながら、おにぎりを頬張ったのですが、何の工夫もないただの鮭やタラコのおにぎりでさえ、ここで食ったら格別の味でした。もうほとんど山下清の心境です。
もうとっくに花の時期は過ぎちゃいましたが、毎年4月にはこの光景が見られますので、もしまだ行かれたことが無い方は、来年以降ぜひどうぞ。

●京王の電車事業100周年記念入場券
 
(画像をクリックすると拡大)
京王のネタをもういっちょ。
南大沢(八王子市)のアウトレットで春夏物の服を買った2013年4月14日のこと。京王相模原線・南大沢駅の構内に貼られていた某ポスターを偶然目にし、そこで告知されていた入場券を一枚買ってしまったことが、私の蒐集魂にボヤのような小さな火をつけてしまったのでした。そのポスターが伝えていたものとは「京王の電車事業100周年記念入場券」です。文字通り、京王電鉄の電車事業開始100周年を記念する硬券の入場券でして、100周年を迎える4月15日の前々日(土曜日)から京王線全69駅で1000枚限定で発売されました。各駅とも自駅の券しか発売しないため、もし全てをコンプリートしたけりゃ1000枚が売り切れる前に69駅を全部まわらなきゃいけないという、かなりドMなマニア向きの企画でした。

さて肝心の入場券の券面に関して、京王側の説明によれば、A型硬券・横に引かれている赤い太線・旧字体など、かつて発行されていた券を模してレトロ調にデザインしたんだそうですが…
・日付は予め25.4.15とダッチング風に印刷されているため、いつ購入しても日付は同じ(しかも各駅とも全く同じ印影)
・たしかに「驛」や「圓」は旧字体だが、他は常用漢字。
・硬券は活版印刷だからこそ味があるのだが、今回の券は明らかにオフセット印刷。
・駅名以外は各駅とも全く同じで没個性。
・いかにも記念券な趣きがプンプン
などなど、正直なところ面白みに欠けるものでした(あくまで個人的な感想ですよ)。

私がまずはじめに買ったのは京王多摩川駅です。京王は今でこそ混雑の激しい通勤路線ですが、鉄道事業をはじめた当時の沿線は純然たる農村であり、人口があまりに少ない上にサラリーマンや通勤という概念すら存在せず、旅客事業じゃちっとも儲からなかったため、自前で建設した府中の火力発電所で生み出した電気を多摩地域の甲州街道エリアで売ったり、都心部の建設需要に応えるため多摩川の砂利を都電(当時は東京市電)に乗り入れながら運搬したりして、何とか経営を細々と成り立たせておりました。後者の砂利運搬に関しては、現在でも京王線の軌間(線路の幅)が都電と同じであること(馬車軌間)にその名残を見出すことができますが、砂利を採掘して車両に積載していた駅が京王多摩川(当時は多摩川原駅)でありました。京王の歴史を記念する入場券なのだから、その歴史に大きな役割を果たした駅で購入することに意義があるんじゃないかと考えて、敢えてこの駅で買い始めたわけです。当初はこの一駅だけでやめるつもりでしたが、その隣の調布は既に売り切れていたものの、歩いて行ける布田駅ではまだ数百単位で残っていたためにここでも買ってしまい、2枚買ったら3枚目・4枚目も欲しくなって西調布や飛田給で更に購入・・・なんていう感じで調布周辺の数駅と盲腸路線(競馬場線・動物園線)、そして調布以外の相模原線各駅の計17駅で購入してしまいました。
しかし、数駅まわって購入した券を見つめているうちに「黒字経営の京王の売上に貢献してどうするの?」「没個性の入場券を集めて意味があるの?」といった疑問がふつふつと湧き起こり、券が集まってゆくに従いその疑問は確信へと変わっていったため、17駅目の橋本駅に達した段階でプツリと蒐集意欲が失せてしまいました。ネット上では全駅コンプした方もいらっしゃるようですが、そんな地道な努力ができる方を、飽きっぽい性格の私は心底から尊敬します。
ちなみにこの入場券は新宿や調布など主要駅では発売初日(4月14日)に完売したそうですが、その他の駅では翌日以降も販売が続けられ、一部のマイナーな駅では発売一週間後も売れ残っていたそうです。そもそも大きなターミナル駅も各駅しか停まらない小さな駅も一律1000枚なのですから、そのようなアンバランスな事態となるのは自明ですよね。ま、今回の券は趣味として蒐集するというよりも、自分の最寄駅で小さな想い出がてらに一枚買うのが良いのかもしれません。なお、私が通勤で毎日乗っている井の頭線の駅でも購入できる機会はありましたが、井の頭線はもともと小田急ですから、今回の記念の意趣にそぐわないと思い、敢えて購入していません。

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