薬研温泉の「かっぱの湯」は、かつては野趣あふれる混浴の露天風呂として有名でしたが、数年前に行政の手により改修工事が行われ、生まれ変わった現在の姿については温泉ファンから賛否の声が上がっているようです。かく言う私は、改修前はもちろん入浴していますが、改修後の姿についてはネット上で画像を見るばかりでしたので、先日実際に現地へ趣き、自分の目で確かめてみることにしました。
駐車場からお風呂へ下ってゆくスロープの入口には利用に際しての注意が案内されていました。かつては自由勝手に入浴できましたが、現在では男女別に時間帯が分かれており、混浴利用ができないようになっているんですね。
目隠しの塀に沿って階段を下ってゆくと、立派な脱衣室が用意されていました。時間帯によって男女が分けられていますから、脱衣室はひとつしかありません。
脱衣室にも男女別の時間割が掲示されていました。そのタイムテーブルをここにも転記しておきますね。
女性 9:10~11:00、13:10~15:00、
この時間割をご覧になれば一目瞭然ですが、要は10分間の切り替え時間を挟んで2時間毎に男女が入れ替わるわけですね。
室内にはロッカーが備え付けられているほか、無人施設ですから非常時のためのインターホンも用意されていました。よりワイルドな雰囲気を楽しみたい方には目障りかもしれませんが、観光客が利用する施設でありますし、お風呂という施設は不測の事態が起きやすい場所でもありますから、私としてはこうした設備を用意した行政の判断を評価したいと思います。
定期的に係員によるチェックも行われているらしく、室内には湯船の温度が書き込まれていたのですが、そこに書かれていた数値はなんと48℃!! 熱すぎじゃねぇか? まぁとにかく入ってみましょうか。
露天風呂は基本的には従前のものを流用していますが、頭上には格子状の梁が屋根のように渡されており、その一部からは目隠し用のすだれが下がっていました。あくまで梁のようなものであって屋根ではないので、雨天時であっても空から降ってくる雨粒を凌ぐことはできません。どうしてこんなものを設置したのかよくわかりませんが、開放的な環境であり、近くの橋の上などから覗かれやすい場所でもあるため、「かっぱの湯」ならではの開放感を保ちながら外部からの視線を遮断しようとして、このような形状が採用されたのでしょう。
室内では48℃と書かれていた湯加減ですが、たしかに部分的にはそのくらい熱い箇所もあるものの、大部分ではちょっと熱めの44℃前後となっていました。頭上はこのような構造物で覆われているものの、お風呂自体はかなり大きく、開放感も楽しめました。
なおこのお風呂には洗い場がなく、お湯は直接川へ捨てられるために石鹸やシャンプーなどの使用も不可です。
脱衣室棟のお風呂側には時計やスピーカーが取り付けられています。時間で男女を切り替えるお風呂なので時計の必要性は当然としても、なぜスピーカーがあるのかと言えば、一定時間毎にこれを用いて自動音声案内によってこのお風呂の使用上の注意を喚起するのであります。実際に私が入浴している時にも、辺り一帯の山中に響くんじゃないかと思うほどデカいボリュームで音声が流れ、時間により男女を分けていることや、シャンプー等の使用は禁止であることなどが、日本語と英語によって説明されていました。
拙ブログをご覧の方でしたらご存知の方も多いかと思いますが、この「かっぱの湯」は渓流沿いというロケーションが大きなアピールポイントであります。お風呂の川べりではこのお風呂のシンボルであるかっぱの石像が入浴客を見守っていました。
お風呂から県道方向を眺めた様子です。この日は運悪く雨天に祟られてしまったのですが、雨に濡れることによって自然の色彩のコントラストがより鮮明になり、渓流の紅葉が実に美しく映えていました。なおお風呂から身を乗り出せば県道の橋が見えますが、おそらく橋の上からはかろうじて見えないようです。
こちらは逆に渓流の上流側を望んだ様子です。目で川岸を辿ってゆくと、コンクリ枡の源泉が見えますね。
上画像のように浴槽には幾筋かの小さな溝があり、上流のコンクリ枡からホースで引いてきた源泉は、こうした溝から浴槽へ注ぎ込まれています。この源泉投入の場所をうまい具合に配置しているため、大きな湯船でありながら湯加減のムラが少なくなっているのは大いに評価したいところです。なお湯使いは完全掛け流しです。
ただ、脱衣室から出てすぐのステップそばにも岩に隠れて源泉供給口が設けられており、そのことを知らずにステップを下りて入浴しようとしたら、いきなり熱い湯が流れてきたのでビックリしちゃいました。
お湯は無色澄明で無味無臭の、癖がない優しいお湯です。この日はちょっと熱めでしたので、じっくり長湯するわけにはいかず、湯船に入ったり出たりを繰り返しながら、雨に触れる紅葉を眺めて過ごしましたが、清らかで優しいお湯は掛け値なしで素晴らしく、頭上を構造物で覆われているものの周囲の景色をのんびり眺める環境は保たれていますから、公営でありながら無料でこのクオリティの露天風呂に入れる現状の「かっぱの湯」を、私としてはポジティヴに評価したいところです。
ただ、時間帯により男女を分けるのも一つの方法ではありますし、公衆浴場法上、男女を分けることは必須でありますが、せっかく大きな湯船があるのですから、湯船そのものを男女に分けちゃうことはできなかったのかな、という思いもよぎりました。現状では、例えば夫婦やカップルで訪れた場合は、どちらか一方が入浴できない事態になるわけですし、時間割を知らずに訪れた場合でも、最大2時間は棒に振っちゃう可能性もあるわけです。かといって、以前の混浴に戻してしまうと、温泉ファンならともかく、一般の方にはかなりハードルが高くて実質的には男湯化しちゃいますから、できれば男女両方が同時にお風呂へ入れるような形になれば、下北半島の優良な観光資源としてよりよい方向に進展できる気がするのですが、でも無料で運営するなら現状が精一杯なのかもしれませんね…。ま、そんな独り善がりな愚考はともかく、山の中の川沿いというロケーションですから、夏になると虻の猛襲に遭うこと必至ですから、もしこちらを訪れるのでしたら、春か秋がおすすめです。
温泉分析表掲示なし
青森県むつ市大畑町奥薬研 地図
下北ナビの紹介ページ
入浴時間
男性 7:00~9:00、11:10~13:00、15:10~17:00
女性 9:10~11:00、13:10~15:00、
水曜午前中は清掃
無料
貴重品用ロッカーあり、他備品類なし
石鹸・シャンプー類使用不可
私の好み:★★★
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