蟠渓温泉 ひかり温泉

北海道

 
蟠渓温泉の鄙びた宿として温泉ファンには名が知られている「ひかり温泉」へ立ち寄り、日帰り入浴してまいりました。トタン葺きで地味な佇まいながら、玄関に破風を戴く古風な造りは、明治創業の老舗旅館としてのプライドを表しているのかのかもしれません。


駐車場の一角には足湯が設けられているのですが、寒くなると使われなくなっちゃうのか、この日は浅く溜まったぬる湯に枯れ葉が浮かぶばかりでした。

 
こちらのお宿は入浴のみの利用も積極的のようでして、帳場のカウンターには缶の料金箱が置かれており、そこへお金を投入して入館しても良いようですが、この時はたまたま女将さんがいらっしゃったので、直接手渡して入浴をお願いしました。帳場周りにはこけしや信楽のタヌキといった置物が所狭しと並べられており、賑やかにお客さんを出迎えているようでした。


下足場左手のラックには、衣類や小物と一緒にタマネギが販売されていました。近所の畑で収穫されたものなのかな。タマネギは間違いなく売れるでしょうけど、ハンガーに掛かっているヨレヨレのシャツやラックに陳列されている諸々を、商品としてお客さんが手に取ることはあるのでしょうか。

●石風呂
 
帳場から左へ進み、廊下を真っ直ぐ歩いて更に左へ折れると、浴室のドアが並ぶエリアとなりました。こちらのお宿には、「石風呂(半露天)」「ひのき風呂(半露天)」「家族風呂(内湯)」「女湯(内湯)」「男湯(内湯)」という5室の浴室があり、前3者は貸切で利用する形態となっているようです。まずは「石風呂」を覗いてみることにしました。ドアには「女湯」と「男湯」が併記されており、更には貸切状態の有無を知らせる「次の方どうぞ」という札が下がっています。利用中はこれを裏返しにするわけですね。
歴史を重ねて至るところがくすんでいる脱衣室内には、(上画像の左下に見切れていますが)なぜか古いフィットネス機器が置かれていました。この部屋だけでなく、他の脱衣室にもこの手の機器が用意されていたのですが、宿泊客の健康増進を図っているのでしょうか。

 
「石風呂」は元々露天風呂だったようですが、後に屋根や囲いを建てて改修したようです。周囲のアクリル板のために景色は望めませんし、ガレージのような武骨な屋根に覆われているので開放感もいまひとつですが、囲いの上から風が入り込んできますし、国道を走る車の音も聞こえますから、屋外で入浴している感覚はしっかり得られます。尤も、囲いを取り払ったとしても目の前は駐車場ですから、外から入浴姿を見られちゃうという問題があるんですけどね。
名前の通り大きな石(というか岩)に囲まれた浴槽は7~8人は入れそうな大きさがあり、底面は鉄平石のような石板貼りで、中央の島のような岩の湯口からお湯が噴き上がって浴槽を満たしているのですが、なぜかこの日はその吐出口に風呂桶が被せられていました。

 
中央の島以外にも、上画像のように鋼材に這わせて配管されているパイプからも供給されており、その先端は硫酸塩の析出によって青みを帯びた白いトゲトゲがたくさんこびりついていました。このように2箇所からお湯が供給されているにもかかわらず、投入量が少ないのか、あるいは外気に熱を奪われちゃうのか、湯船の温度は40℃に満たないぬるさで、この時は外気温も10℃を下回っていましたから、露天にしては物足りない湯加減ゆえ、今回入浴はパスさせていただきました。

●ひのき風呂

「石風呂」の左側には同じく貸切の「ひのき風呂」もあるので、こちらも覗いてみましょう。

 
こちらにもフィットネス機器(こちらはルームランナー)が置かれていました。広くない部屋なのに、わざわざ設置するのはなぜ?


「ひのき風呂」と称するだけあって、縁に檜材が用いられている四角形の半露天風呂となっており、アクリル波板の仕切り塀の右側には「石風呂」があって、その石風呂を一回り小さくさせたような造りです。こちらのお風呂は片方がブロック塀なので無機質で圧迫感があり、開放感や風情に欠け、しかもかなり湯加減がぬるかったので、残念ながらお隣の「石風呂」同様にこちらでの入浴もパスさせていただきました。

●家族風呂
 
「石風呂」や「ひのき風呂」といった露天2室のドアを過ぎると、内湯へつながる下りの階段となり、その突き当たり右手が「男湯」で、左手の奥が「女湯」、手前が「家族風呂」というように、3つのドアが入浴客を待ち受けています。

 
この時は「家族風呂」も空いていたので、こちらも見学させていただきました。各貸切浴室とも予約などは必要なく、空いていれば自由に使えるのですが、ドアには「入浴は1時間以内でお願いします」と記された張り紙が掲示されているように、他のお客さんへの配慮は忘れちゃいけませんね。脱衣室は露天2室よりもコンパクトな造りでした。

 
浴室内は白い壁に緑色の床で、塗装が部分的に剥げていたり、あるいは所々が黒ずんでいたりと、経年ゆえに相当お疲れのご様子です。室内右手にはシャワーが2基設置されており、一休みできるようベンチも用意されていました。一方、2~3人は入れそうな浴槽は、赤くペイントされたタイルが縁に敷き詰められており、床の緑色と補色関係ゆえによく目立っていました。浴槽縁には人工芝が敷かれているのですが、おそらく滑り止めを目的としているのでしょう。

●男湯
 

さてひと通りの見学を済ませ、今回のメインである「男湯」へ。
ちょっとした異臭が漂う脱衣室は、他部屋同様にかなり草臥れています。画像には写っていませんが、浴室ドア前に敷かれたマットは、なぜか喫茶店用の絵柄のものでした。また、露天2室で見たように、ここにもフィットネス機器(エアロバイク)が置かれていました。「ひかり温泉」は「なぜ」に満ちあふれています。

 

全体的にくすんだ水色によって支配されている浴室には、熱さが異なる2つの浴槽が左右に据えられおり、またシャワー付き混合水栓が2箇所に分かれて計4基設置されています。

 
女湯側には大きな蹄鉄型のぬるい浴槽があり、その上の壁には洞爺から登別にかけての観光地を大雑把にイラスト化した観光マップ、そして湖畔の風景画とともに「蟠渓ひかり温泉音頭」なるものが描かれていました。イラストのタッチと言い、音頭といい、なんとも長閑だこと。浴槽は全面タイル張りで、縁がクリーム色で槽内は水色、大きさとしては7人サイズといったところ、投入量が少ないからか表面積が大きいからか、湯船の温度は本当にぬるくて40℃あるかないかといった感じでした。

 
一方、浴室右手にある熱い湯船は細長い台形で、やはりこちらも全面タイル貼りながら、縁が黒色で槽内は水色と、ぬる湯槽とはちょっと違う配色となっており、43℃くらいのお湯が張られていました。熱いのみならず、入浴したときのシャキッとした感覚がはっきり伝わってきたので、今回私はこの熱い湯船ばかりに浸かっていました。湯口には硫酸塩の析出が白いトゲトゲとなってこびりついていますね。
お湯は無色澄明でほぼ無味無臭ですが、僅かに塩味と芒硝感が感じられました。また湯中ではサラサラとした浴感の中に弱い引っ掛かりがあるものの、総じて滑らかで柔らかく、癖のない優しいフィーリングに包まれました。
宿名をググると温泉ファン諸氏のサイトがズラズラっと列挙されるのですが、湯治宿という言葉が持つイメージとマッチする、歴史を感じさせる渋い風情は、鄙びた情景を愛する温泉ファン御仁にはたまらないのでしょうね。

H2泉源・組合泉源・国有泉源及び河川泉源の混合
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 67.2℃ pH7.5 溶存物質1.014g/kg 成分総計1.017g/kg
Na+:220.9mg(71.19mval%), Mg++:9.6mg, Ca++:56.9mg(21.04mval%),
Cl-:231.6mg(48.23mval%), SO4–:286.1mg(44.02mval%), HCO3-:53.7mg(6.50mval%),
H2SiO3:108.2mg, HBO2:30.9mg,
加水あり(源泉温度が高いため)

北海道有珠郡壮瞥町字蟠溪19
0142-65-3000

8:00~20:00
400円
ロッカー・シャンプー類あり、ドライヤー見当たらず

私の好み:★★

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