灘温泉 水道筋店

兵庫県

 
神戸市灘区に2店舗を構える銭湯「灘温泉」は、その名の通りに銭湯にもかかわらず自家源泉の温泉を用いており、両店とも良泉であるとして温泉ファンから絶賛されておりますので、温泉好きな私としては両方のお湯を体感してみることにしました。まず向かったのは灘警察近くの庶民的な商店街に面している「水道筋店」です。

 
玄関の左には「さすり観音」なるものが佇んでおり、説明プレートによれば「お身体のつらいところと同じ所を源泉でぬらした布で想いを込めてさすってください」とあり、観音様の背後の左右には温泉のお湯を汲める小さな槽がありました。私としては脳味噌の出来の悪さとメンタルの弱さが悩みなのですが、観音様にこうした堕落に基づく人間的欠陥を救っていただくのは烏滸がましいような気もしますので、特にさすることも無く入館することにしました。

なお館内は撮影禁止ですので、今回は文章のみでレポートさせていただきます。いつものように下手っぴな文章で大変恐縮ですが、宜しくお付き合いの程を。

平成にリニューアルオープンした決して古くない建物であるにもかかわらず、館内の佇まいは典型的な昭和の銭湯であり、番台で直接料金を支払います。ロッカーに囲まれた脱衣室では、いかにも銭湯らしく大きな鏡が室内全体を映していましたが、それでは防犯として役不足なのか、比較的わかりやすい位置に監視カメラが設置されていました。脱衣室における防犯はどの施設側でも頭の痛い問題かと思いますが、関西の銭湯では積極的に室内にカメラを導入する施設が多いようですね。私のホームグラウンドである東日本の入浴施設では、監視カメラを設置するところってあまり見かけないような気がしますので(番台や玄関ならともかく)、着替えて裸になった自分がカメラに監視されていることに、ちょっとしたカルチャーショックを受けました。なお、ロッカーと並んで床置型エアコンが据え付けられており、天井ではシーリングファンが回っていますので、湯上がりには強力なクールダウンが期待できます。

●浴室内および内湯浴槽各種
浴室入ってすぐ左手に「源泉かぶり湯」という小さな槽があって、塩ビ管から非加温の生源泉がドバドバと小さな槽へ落とされています。いわゆる「かけ湯」なのでして、槽の周りは赤黒く染まっており、視覚的にただならぬ雰囲気が伝わってくるのですが、ぬるいこのお湯を手桶に汲んで肩にかけてみたところ、わずか2リットルにも満たない量にもかかわらず、それだけで肌にシュワシュワとした刺激が走りました。なんじゃこりゃ! 後述する「源泉浴槽」ではこのシュワシュワ湯に全身浴できるんですから、このかけ湯をした時点で否が応でも期待に胸が膨らみますが、とりあえずは体を綺麗に洗い流すべく、洗い場へ。

洗い場にはシャワー付きの水栓が計22基ならんでおり、お湯は真湯ですが、沸かし湯・冷水ともに六甲の伏流水を使用しているとのこと。銭湯なのにボディーソープとリンスインシャンプーが備え付けられており、タオルは番台で売っていますので、手ぶらで訪れて入浴したって全く問題ありません。床には緑色凝灰岩(いわゆる十和田石系の石材)が敷きつめられており、足元から伝わる感覚は気持ち良いのですが、それだけでは滑りやすいのか、飛び石状に切り出し石を埋め込んでいました。

浴室内には4つの浴槽が設けられており、手前側から「温泉浴槽」「源泉浴槽」「ジェットバス・電気風呂」「打たせ湯」といった順に並んでいます。温泉浴槽と源泉浴槽には源泉が使用され、他は真湯です。
「温泉浴槽」は四角形の石造りで、約7人サイズ、源泉を41℃くらいに加温して提供しており、背面の壁際から排湯しています。館内表示によれば循環濾過消毒しつつ新鮮源泉も投入しているとのこと。「ジェットバス・電気風呂」はごく一般的なものですが、隅っこに設けられている「打たせ湯」は、勢いが強いことで有名な台湾の沖撃湯(台湾版の打たせ湯)も真っ青なほど強力であり、まるでデモ隊を排除する治安部隊の放水銃を彷彿とさせます。気合を入れて臨まないと、体がバラバラに散ってしまいそうです。

●劇的アワアワな「源泉浴槽」
「源泉浴槽」は「温泉浴槽」より一回り小さい6人サイズで、黒いタイル張りの浴槽には手付かずの非加温源泉が投入されているのですが、お湯を底面(2箇所)から供給されている点は大いに評価すべきかと思います。一般的に温泉施設では、「湯量豊富ですよ」というビジュアル的なイメージを強調すべく、浴槽の上からお湯を落とす供給方法を当たり前のように採用しますが、このお風呂のように底面から供給すれば、視覚的なインパクトには欠けるものの、空気に触れること無く浴槽へ注ぐことができるため、お湯の鮮度や質の低下が少なく、特に炭酸ガスを多く含むお湯においてはその効果が顕著です。施設側の、お湯に対する造詣の深さが窺えます。なお施設のホームページに、底面の目皿より泡とともにお湯が供給されている様子を撮った動画が紹介されていましたので、ここでも紹介させていただきます。

この供給方法のおかげか、先ほど「源泉かぶり湯」で体感したシュワシュワ感がお湯に入った瞬間から感じられ、忽ち全身泡だらけになります。しかも拭っても拭っても気泡がどんどん付着し、おびただしい気泡によって肌が白く見えてしまうほど、凄まじい泡付きです。お湯は僅かに黄色を帯びていますがほぼ無色透明で、新鮮な金気味・重曹ほろ苦味・薄塩味・ほんのりとした甘み・炭酸味(意外と弱い)が得られ、金気臭とガス的な匂いが嗅ぎ取れました。大量に付着する炭酸気泡のためにサラサラスベスベ感がはっきりしており、お湯本来の浴感と思しきキシキシ浴感がすっかり劣勢に追い込まれているのが実に面白いところです。
同じく施設のホームページにて、肌にどれだけの気泡が付着するのか、その様子がYouTubeにアップされていましたので、ここでもその動画を共有させていただきます。動画で映しだされている様子は誇張で無く、実際にこのような激しい泡付きを私自身も体験しております。

35℃くらいのぬるいお湯であり、炭酸湯ならではの気持ち良さも相俟って、ここに入るお客さんは皆さん悉く長湯するのですが、それゆえ回転が悪く、しかもキャパも大きくないため、他の浴槽で待機しながら空くのを窺っている人も見受けられました。なおお隣の「温泉浴槽」と同様に背面の壁際から排湯しており、加温加水循環消毒が一切無い完全放流式の湯使いです。

●露天風呂
屋外のベランダのような空間には「露天風呂」とサウナ(別料金)・水風呂が据えられています。「露天風呂」とはいえ都市の真ん中ですので、外部視界はすっかり遮蔽されており、外気が何となくそよいで来るかな、といった程度です。露天風呂は縁に石が並べられた石風呂でして、これらの石は温泉成分によって赤黒く染まっており、お湯がオーバーフローする床も同様に着色されていました。お湯は40℃くらいに加温されており、加温に伴って気が飛んでしまうので、さすがに「源泉風呂」より気泡の付着は少ないものの、それでもちゃんと付着があり、そんじょそこらの他の温泉より余程しっかりした泡付きが見られました。お湯本来の個性を活かすためか、加温は抑えられており、ぬるめの湯加減なのじっくり長湯できるのですが、それゆえにお客さんの回転が悪く、混雑時には肩を寄せ合ったり、あるいは他の浴槽で空くのを待ったりするような状況が発生していました。

炭酸パワーのおかげで、湯上がりは体の芯からポカポカ温まり、しかもぬるめのお湯なので、イヤな火照りは少なく、脱衣室でグルグル回るシーリングファンの風に当たって粗熱を放ったら、途端に爽快感が全身を走りました。銭湯にしておくのが勿体無いほど本当に素晴らしいお湯でした。

灘温泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 34.0℃ pH7.0 溶存物質1.488g/kg 成分総計1.610g/kg
Na+:456.9mg(88.23mval%), NH4+:3.1mg, Mg++:9.6mg, Ca++:27.1mg(6.00mval%), Fe++&Fe+++:0.5mg,
Cl-:386.1mg(58.90mval%), HCO3-:462.3mg(41.00mval%), CO3–:0.2mg,
H2SiO3:119.7mg, HBO2:10.6mg, CO2:122.8mg,

阪急六甲駅または王子公園駅より徒歩12分(1.1km)、JR六甲道駅より徒歩15分(1.3km)
兵庫県神戸市灘区水道筋1丁目26  地図
078-861-4535
ホームページ

5:00~24:00(最終受付23:30) 3・6・9・12月の第1木曜定休
420円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤー(有料20円/3分)あり
(ボディーソープとリンスインシャンプーは、洗い場1~2ブースにつき1セット用意されています)

私の好み:★★★

コメント

  1. hiro より:

    私も驚きました
    K-I さん、ご無沙汰していてすみません。

    去年所用で神戸に行った際、ここの温泉が近かったので立ち寄ってみました。

    東北にこだわる私にとっては、中部以西で唯一行ったことがある温泉がここです(笑)。

    加温されている湯船でも泡付きがあるのに驚きました。

    腰と右足が痛かったので、観音様のそこをさすってきました(笑)。

  2. hiro より:

    私も驚きました
    K-I さん、ご無沙汰していてすみません。

    去年所用で神戸に行った際、ここの温泉が近かったので立ち寄ってみました。

    東北にこだわる私にとっては、中部以西で唯一行ったことがある温泉がここです(笑)。

    加温されている湯船でも泡付きがあるのに驚きました。

    腰と右足が痛かったので、観音様のそこをさすってきました(笑)。

  3. K-I より:

    Unknown
    hiroさん、こちらこそご無沙汰して申し訳ございません。
    普通の方ですと、神戸へ行ったついでに温泉へ行こうとすれば大抵は有馬を思い浮かべますが、敢えてこちらへいらっしゃるとは、さすがhiroさんですね。阪神間に点在するアワアワ湯には本当に感激します。日本は狭い国土ながら、温泉に限ってみても、多様性に富んでいるんですね。温泉巡りが趣味になって以来、日本の自然や文化に対する見方が変わりました。

  4. K-I より:

    Unknown
    hiroさん、こちらこそご無沙汰して申し訳ございません。
    普通の方ですと、神戸へ行ったついでに温泉へ行こうとすれば大抵は有馬を思い浮かべますが、敢えてこちらへいらっしゃるとは、さすがhiroさんですね。阪神間に点在するアワアワ湯には本当に感激します。日本は狭い国土ながら、温泉に限ってみても、多様性に富んでいるんですね。温泉巡りが趣味になって以来、日本の自然や文化に対する見方が変わりました。

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