初めてのインド鉄道乗車記 その3(アグラメトロ)

インド

(2025年3月訪問)
初めてのインド旅行の旅程を調査・計画している2024年の年末から2025年2月時点で、調べても情報がなかなか得られなかったのは、アグラの地下鉄であるアグラメトロに関することでした。インドでは首都デリーをはじめ、チェンナイやムンバイなど6都市で地下鉄が運行されていましたが、7番目の都市としてアグラの地下鉄が開業したのは2024年3月6日。私が旅をした前年に開業したばかりなので、ガイドブックには掲載されておらず、日本語によるネットの情報もかなり限られていたわけです。
今回のインド旅行ではアグラにおいてタージマハルとアグラ城を観光するので、ついでにアグラメトロを利用してみることにしました。といっても行きたい目的地があるわけではないので、ただ何となく、ホテル最寄りのタージマハール駅から、現時点の終点であるタージ・イースト駅まで乗ってみます。

こちらがタージマハール駅です。駅前は広場で、そのまわりには多くのオートリキシャが客待ちをしてます。駅名の通り、タージマハールの西側ゲートも徒歩圏内(おそらく約10分)なので、観光目的の利用者が多いのかと思いきや、予想に反して出入りする人の姿は少なく、本当に運行されているのか不安を覚えてしまいました。

ガラス張りのエントランスホールに入って、エスカレーターで地下の改札フロアへ向かいます。地上階のエントランスホールから地下2階のホームまで吹き抜けになっているんですね。開業したばかりなので、街の喧騒や猥雑さとは無縁な、インドらしくない空間が広がっています。明るさと広さ、そして鮮やかな色遣いの内装が特徴的ですが、このような構造は、ここ10~20年の間に開業したアジア各地の地下鉄でしばしば見られるような気がします。それゆえ海外旅行が好きな方だったら、既視感を覚える方がいらっしゃっても不思議ではありません。

上画像はアグラ城最寄りのDr Ambedkar Chowk駅で撮った画像ですが、改札や窓口まわりの様子はどの駅もほぼ同じです。広い構内を見回すと、利用客の動線を無視したような位置に券売機が設置されており、現金か現地のQRコード決済で利用できるような表示があるのですが、今回私が訪ねた4つの駅では、いずれもQRコードのみ利用可能で現金の受け入れを中止しており、当然現地のQRコード決済なんて使えないので、券売機で切符を買うことは不可能でした。とはいえ構内の中央にある窓口にはデカデカと”Ticket Counter”と書かれており、窓口内には係員が2人もいて退屈そうにスマホをいじっていたので、この窓口で行先の駅名を告げて現金を支払ったところ、レシートみたいなペラペラなチケットが発券されました。このチケットにはQRコードが印字されているので、それを自動改札機に読み取らせて入場します。なおデリーのメトロと同様、改札を通過する際には手荷物検査も行われます。
とにかく駅構内は利用客がおらず静まり返っており、ワイシャツ姿の窓口職員も迷彩服を着た手荷物検査の係員も、みんな退屈でした。新しい交通機関にもかかわらず敢えて機械化を促進しないのは、おそらく雇用の確保が目的と思われ、これも人口が多いインドならではなのかもしれませんね。

改札階から更に下のホームへ下り、しばらく待っているとホームに電車が入線してきました。

3両編成の車内はガラガラ。特に私は乗った先頭車両は私以外に客がおらず、完全に空気を運んでいる状態でした。どうやら運賃設定が高いため、市民はメトロの利用を避け、オートリキシャやタクシーなど従来の乗り物を選び続けているようです。

ところで私がアグラメトロに乗った際の第一印象は「広州や深圳の地下鉄みたいだなぁ」。この車両はアルストム(フランス資本)のインド法人が製造しているのですが、基本的には、中国、欧州、南米各都市など世界各地の地下鉄で採用されているアルストムの世界的な汎用設計に則っているため、どうしても似通った造りになり、海外旅行先で地下鉄に乗ることの多い私が既視感は得たのは当然だったわけです。

ドア上の路線図。現時点は図の左側に実線で描かれている6駅のみ開業しています。
なおDr Ambedkar Chowk駅に鉄道乗り換えのマークが付いていますが、実際には終点のMankameshwar駅こそがアグラ・フォート駅に近い駅です。なぜこんなややっこしい表示をしているのかしら。またDr Ambedkar Chowk駅の表示はシールが貼られていますが、おそらく元々はAgra Fort(アグラ城)だったかと想像されます。実際にメトロの駅はアグラ城のゲートの目の前にあるのですが、上述の通りインド鉄道のアグラ・フォート駅からは離れており、混乱を防ぐために駅名をDr Ambedkar Chowkへ変更したのではないかと私は勝手に推測しています。
インド鉄道でもうひとつのターミナル駅であるアグラ・カント駅にも、将来的にはメトロが延長される予定ですが、現時点では接続していません。

タージマハール駅を出発したタージ・イースト行電車は、まもなく地上に出て高架を走行。途中2駅に停車しながら、数分で終点のタージ・イースト駅に到着しました。

到着した電車は先へ伸びる引き上げ線まで進んでから、方向転換して逆方向に進み、当駅始発の電車になります。

こちらは途中駅のFatehabad Road駅へ入線するアグラメトロの電車。
新しい駅なのに「2」という番線表示が早くも曲がっていますね。

上の画像と同時に撮った動画です。

駅構内に置かれたアグラメトロのマスコット。目が怖いわね。あなたのお名前は何て言うの?

なお駅から出る際は自動改札にチケットのQRコードを読み取らせればOK。そのチケットは手元に残っちゃいますので、捨てるなり記念に持ち帰るなりご自由にどうぞ。
開通したばかりのアグラメトロは走行区間はまだ短いため、ネットワーク性はまだまだですが、メトロを使えばタージマハールとアグラ城というこの街の2大観光地に素早く快適にアクセスできるため、私のような外国人観光客にとって利用価値は十分にあるのではないかと思います。

次回記事ではアグラからデリーへの移動で利用したインド鉄道の列車を取り上げます。

 

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