前回記事の続編です。
マニカランの商店街を歩いているうち、シク教の巨大な宗教施設「グルドワラ」に裏側の出入口(上画像)から入ってしまった私。施設内へ伸びる狭い通路には夥しい数の信者や観光客がひしめきあっており、人の波に流されて自分が行きたい方向へ進むのもままならず、ややもすれば群集事故が起きかねない状況。そもそも、建物内に伸びる薄暗い通路は迷路のように複雑に入り組んでおり、どの方向へ進めばどこへ出られるのか、さっぱりわかりません。この場で意思を持って進んでも意味がないと開き直った私は、ひとまず人の波に流されてみることにしました。はたしてどこへ漂着することやら。
人の波の押し流されてゆくうち、視界に屋外の光が見え、通路も徐々に広くなって自分の意思で進めるようになったので、群集を押し分けて光が射す方へ歩いてゆくと、グルドワラの正面側へと出ることができました。私が本能的に明るい方向を目指した行動って、部屋に迷い込んだ羽虫が外へ逃げるべく明るい方へ飛んで行く行動原理に似ているのかもしれません。つまり私は虫なのかしら、なんてカフカの『変身』みたいなことを考えながら、他の観光客と同じようにグルドワラの前に架かる橋の上で私も記念撮影。
外壁に施された立派なレリーフ。神話の世界観を描いているのか、はたまたマニカランにまつわる伝説を表現しているのか・・・。
橋の上から川の上流側を眺めてみました。前回記事で取り上げたシヴァ神を祀るヒンドゥ教の施設が左手に見えますね。とにかくあちこちで温泉が湧出しており、湯煙であたりが真っ白です。
こちらは下流側。川の両岸に建つ要塞のような建物はグルドワラです。
対岸の施設には巨大な男性用温泉プールがあるのですが、ご覧のようにお湯が泥で茶色く濁っていたため、その汚さに恐れをなした私は見学だけにとどめました。プールのお湯には触っていないのですが、湯気が上がっていないので、もしかしたらそんなに熱くないのかもしれませんね。
一旦グルドワラに戻って、ちょっと上の階層から橋を見下ろしてみました。対岸の立体駐車場はほぼ満車状態。それゆえ路駐もひどく、当地へアクセスする道の渋滞に拍車をかけています。
橋の上では湯煙が上がる中で観光客が記念撮影しています。ターバンを巻いていない男性はおそらくシク教徒ではない物見遊山の人かと思われます。
グルドワラはシク教の宗教施設ですから当然祈祷の場所があるはずですが、遠くからやってくる信徒のための宿泊施設としての役割も果たしており、シク教徒は無料で宿泊ができるんだとか。また館内には大きな食堂もあり、これまたシク教徒ならば無料で食事にありつけるほか、以前は異教徒も迎え入れて同じく無料で食事が提供されたそうですが、現在は運営方法が変わってシク教徒だけになっているようです。
迷路のような施設内の一角で見つけた”HOT CAVE”と称する部屋。いわゆる温泉熱を活用した岩盤浴のようです。
土足厳禁なので靴を脱ぐわけですが、みなさん滅茶苦茶に脱ぎ散らかしており、館内の薄暗さも相俟って、おそらく多くの人が自分の靴を判別できない状態ではないかと思われます。
グルドワラ内部には男女別の温泉浴槽もあります。荷物を置く棚もあるので、私もここで入ろうとしたのですが、なぜかここで入浴している人はいらっしゃいません。
それもそのはず、湯船は54.4℃もあったのです。これじゃ入浴なんて無理ですね。
でもお清めのためか掛け湯をするシク教徒の姿があり、55℃近い激熱の温泉でも浴びることができてしまう信仰の力って本当に凄いんだなと驚くばかりでした。
次回記事では実際に入ったマニカランのお風呂を取り上げます。
次回に続く。

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