前回記事まで連続してインド北部の温泉巡りについて書き綴ってまいりました。
この記事をご覧になって、自分もインドで温泉を巡ってみたいと思ってしまった酔狂なあなたのために、自分の備忘録を兼ねて、今回記事ではどのように旅行を計画して実行していったか、旅のトラブルなども含めて書いてまいります。
【出発前】
●温泉の見つけ方(事前調査)
インド旅行は初めての私。縁もゆかりも無い場所ので、現地に何があってどうなっているのか皆目見当がつきません。そこで旅程の計画立案に際しては、まず書籍の『地球の歩き方』を読んでインドのアウトラインを掴み、そして情報の解像度を上げるべく、温泉やインド北部各地の具体的な内容については、拙ブログの右サイドバーでリンクを張っている「世界の絶景温泉」や「Luntaの小さい旅、大きい旅」など海外旅行の達人による各サイト、「はしご湯のすすめ」などの海外の温泉にも詳しいサイトを参考にさせていただきました。特に「世界の絶景温泉」の鈴木浩大さんには温泉の具体的な情報のみならずインド旅行のノウハウに関して個人的にアドバイスしていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
●旅程(日数)
「帰国したら机が無いかもよ」と会社から冗談半分に脅かされつつ9日間(現地滞在8日間。うち2日は土日)の休暇を確保した私は、初めてのインド旅行なので、温泉のみならず、超定番の観光地も巡ろうと考え、旅程の前半はデリーを起点にして、インド初心者が目指すべき観光地であるバラナシ(ガンジス川)とタージマハルを周遊してデリーへ戻り、後半はこのブログで取り上げてきたバシストやマニカランの温泉巡りに充てることにしました。具体的には以下の通りです。
1日目~4日目:羽田発→デリー着→バラナシ→タージマハル→デリー
5日目:デリー空港→クル空港→マナリを観光→バシスト温泉
6日目:バシスト→カラトゥ地区の温泉→マニカラン→カソール
7日目:カソール→クル空港→デリー
8日目:デリー発の飛行機で東京へ(翌9日目の早朝に羽田着)
拙ブログでは5日目以降の旅を記事にしております。
現地滞在8日間という非常にタイトなスケジュールであり、途中で一ヶ所でも予定が狂うと、その後の全ての計画が破綻してしまいます。上海雑技団も真っ青な綱渡りの旅程でした。
●現地旅行会社の利用
国内はもちろん海外でも私は常に一人で旅を楽しみ、自分でホテルや移動手段等を手配してきました。旅行は現地へ行くだけでなく、ぼんやりした旅の想像を具体化して計画を立て、その計画に沿って各種手配をすることも楽しみの一つだからです。むしろあれこれ調べて想像を膨らませながら計画を立てている段階が最も楽しいかもしれません。しかし全てが一筋縄ではいかないと言われているインドですし、上述の通り予定が非常にタイトですから、交通の便が比較的良い前半のデリー・バラナシ・タージマハルは自分で手配したものの、後半のバシストやマニカランなど温泉巡りが関係するエリアについては日系の現地旅行会社である「西遊インディア」さんに以下の手配を依頼しました。
・ドライバー付き貸切車(クル空港→バシスト→マニカラン→クル空港)
・ホテル2泊分(バシスト・カソール)の予約
・上記の車とホテルを利用して、私が行きたい温泉を巡る旅程の作成
見知らぬ場所を効率的かつ合理的に旅行するなら、現地旅行会社に依頼するのが手っ取り早いですね。たとえ旅慣れている人でも、海外においては、時間と安全をお金で買うことも必要になるかと思います。今回依頼した旅行会社は日系であり且つスタッフが日本の方ですので、言葉の問題は全くありません。こちらの希望を伝えて行程立案と見積をお願いし、提示された素案を叩き台にしながら少しずつ詰めてゆく形で最終的な旅程を決めました。また現地旅行中においてもLINEやWhatsappなどのアプリにより逐次連絡を取ることができましたので、とても助かりました。
●ビザ取得
出発前の最大の難関はビザ取得だったでしょう。観光目的の短期滞在でも入国にはビザが必要で、どうやら到着した空港でも取得は可能らしいのですが、待ち惚けを食らって時間をロスするのは避けたかったので、出発前にオンラインで取得することにしました。ネット上には懇切丁寧に一つ一つの手順を追って説明してくださるサイトがありましたので、それに従って慎重に入力を進めたところ、無事取得に成功しましたが、とにかく面倒で入力項目が多く、途中には訳の分からないトラップもあったりするので、えらく時間がかかり精神も擦り減ります。面倒な方や自信が無い方は初めから旅行会社に依頼することも検討すべきかと思います。
【旅行中】
●超定番観光地の訪問
拙ブログは温泉を主題にしていますので、インド旅行の前半に巡った超定番観光地のバラナシやタージマハルについては、言いたいことはたくさんありますけれども、ここでの記事化は見送ります。でも各地点を移動する際に利用したインドの鉄道に関しては後日記事にするつもりです。
●デリーからクル空港へ
温泉があるマナリ郊外やマニカランの拠点となる空港はクル(ブンタール)空港ですが、2025年時点でデリーからクルへ飛ぶ飛行機は週3~4便しかなく、しかもAlliance Airが運航する早朝発の1便のみです。私が搭乗する日の出発時刻は午前6:45でした。となれば午前4:30頃には空港に着いておきたいところ。デリーの市街地から空港まではメトロ(電車)でアクセスできますが、飛行機のチェックイン時間に間に合うような電車はありません。計画段階ではデリー中心部のホテルを丑三つ時にチェックアウトし、ホテルの送迎車かUberの車で空港へ向かうつもりでしたが、当日はホーリー祭のため交通規制が行われるらしく、複数のホテルに問い合わせたものの、どのホテルからも送迎を拒否されてしまいました。この調子ではUberの手配も難しいでしょう。前夜にデリー空港内のホテルに宿泊するという選択肢もありましたが、宿泊費がびっくりするほど高かったので・・・
最終的にはデリー空港付近のエアロシティにある「ホテルイビス」で宿泊し、早朝4時にチェックアウトしてホテルの送迎車(有料)で空港へ向かうことにしました。なおこの飛行機もホテルも自分で手配しています。
早朝だというのにデリー空港のターミナル内は大混雑。上の画像は朝4:30ですよ。信じられますか。普通ならば夢の中にいる時間帯にもかかわらず、各カウンターでチェックイン客の行列が発生しているのですから、世界最多の人口を擁する国は想像を超越します。こうした行列を目にした私は、出発の2時間前到着でも遅かったかなぁと後悔しつつ、これから搭乗する航空会社のカウンターに向かったところ・・・
ここだけは行列が無くはガラガラで、すぐにチェックインすることができました。
この日はちょうどホーリー祭りの期間でしたので、ターミナル内にも祭りを祝う装飾兼撮影スポットが設置されていました。そんな飾りを横目に、お腹が空いていた私はフードコートへ。しかし早朝から空いている店舗は少なく、前日までインド料理を食べ続けてスパイシーな味に飽きていたので、無難なマクドナルドで無難なメニューを注文しました。普段はファストフードを利用しない私も、この時ばかりは無難な味覚に救いを求めたのです。無難・・・なんて良い響きなんでしょう。
デリー6:45発クル行きの飛行機は、小さなターボプロップ機のATR42-600。プロペラが剥き出しなので昔ながらのレシプロ機だと誤解されますが、一般的なターボファンエンジン機と同じく、ジェット機にカテゴライズされる飛行機です。日本でも同型機は離島便や地方都市間を結ぶ路線で就航していますので、旅慣れた方でしたらお馴染みの機体と言えそうです。
機内から目にするヒマラヤの山々は秀麗で神々しく、しかも一つとして同じ山容はありませんので、飽きることなくひたすら眺め続けられます。
●ドライバー付きレンタカー(車のチャーター)
独りで自由気ままに、且つ短時間で効率よく目的地を巡るためには、公共交通機関ではなく、レンタカーを借りて自分で運転するのが合理的です。これまで私は海外でもレンタカーを利用し、効率よく旅を満喫してきました。しかし、初めて訪ねるインドは混沌とカオスの国であり、自分で運転する自信が無かったので、ドライバー付きの貸切車を利用することにしました。上述のように貸切車は現地旅行会社に手配を依頼しています。
デリーから約1時間半の空の旅。朝8:10にクル空港へ到着。飛行機を降りたら歩いてターミナルへ向かいます。デリーは猛暑でしたが、ヒマラヤの麓であるクルはかなり寒く、手荷物から慌ててダウンジャケットを取り出しました。
クル空港で私を待っていたドライバーさんは50代後半と思しき紳士的なおじさんで、物腰が柔らく親切な方でした。英語を話せるのでコミュニケーションも大丈夫。このドライバーさんと共に2泊3日、インド北部ヒマーチャル プラデーシュ州の温泉巡りを楽しみました。
車は一人旅にはちょっと大きなトヨタのイノーバ(INNOVA)でしたが、お蔭様で3日間を快適に移動することができました。ちなみにインドでは白い車が好まれる傾向にあるらしく、実際に私が現地で見た車の多くはボディーカラーが白でした。このため、もし現地で車を手配する場合は、自分が乗るべき車のナンバーをしっかり覚えておきましょう。みんな似たような車ので、識別できなくなっちゃいます。
●ホテル
上述したように全旅程のうち、ヒマーチャル プラデーシュ州の温泉巡りで宿泊する5泊目と6泊目の手配を旅行会社に依頼しました。具体的には、5泊目はマナリ近郊のバシスト村で、これについては先日アップした記事で取り上げています。
6泊目はマニカランからほど近いカソールという街です。このカソールは観光拠点になっているような場所で、ホテルや飲食店が比較的多くありますが、今回のホテルは中心部からちょっと離れた場所に立地しており、買い物や食事で不安があったものの、買い物については事前にマニカランで必要なものを調達し、夕食と朝食についてはホテル内のレストランを利用できたので、特に問題はありませんでした。
さて、当初予定ではカソールに泊まった翌朝、このカソールの河原にある野湯みたいな露天風呂に入ってから、お昼頃にクル空港を発つ飛行機でデリーへ戻る予定でした。しかし、その計画は泡と消えたのです。理由は次の項目で。
●デリーへ戻るフライトがキャンセルに!
話は旅行出発前に戻りますが、旅に関する諸々の手配が済み、後は出発するだけという状態になった日本出発2日前の夜、仕事終わりにお酒を飲んでほろ酔い気分になっていたら、航空会社Alliance Airからスマホにメールが届きました。嫌な予感を覚えながら画面を見た私は、一気に酔いが冷めてしまいました。その文面をコピペします(一部改変)。
Alliance Air deeply regrets cancellation of your Flight No. 9I804 on (搭乗年月日) due to the reasons beyond our control. For alternative flights and any other queries, please contact Alliance Air Customer Care on (カスタマーサポートの電話番号).
上画像はそのメールのスクリーンショットです。なんとクル空港からデリーへ戻るフライトがキャンセルになってしまったのです。不可抗力の理由によりキャンセル? その曖昧な説明にはモヤモヤしますが、とにかく飛ばないのですからこちらとしてはお手上げ状態。往路と同様にクルからデリーへ向かう便も運航曜日が限られており、しかも1日1便です。その1便が欠航になってしまったのです。クル(ブンタール)からデリーへ直行する代替の交通機関は長距離バスになりますが、到着まで少なくとも半日以上の時間を要するばかりか、日によっては大幅に遅延するらしく、そもそもチケットを確保できるかわかりません。デリーへ戻った翌日には日本へ帰国する飛行機に乗る必要があるため、何が何でも予定通りにデリーへ戻る必要があるのです。
慌てふためいた私は酒場から自宅へ帰る電車の中でスマホとにらめっこしながら、クル空港の代替となり且つ便数も多い空港を懸命に調べました。そこで浮かび上がったのがクルから南へ約230km離れたチャンディーガル空港です。カソールからクルまで約40kmだとして、計270kmならば車で移動できる距離ですし、チャンディーガルからデリーへ向かう飛行機は便数も多い。そこで旅行会社へメールして、まず貸切車がチャンディーガルまで行ってくれるかを確認し、問題ないことがわかったら、次にチャンディーガルからデリーまでの飛行機の確保、そしてフライトキャンセルになった便のリファウンドを申請することとなります。代替措置が取りにくい路線のフライトキャンセルに遭ってとても難儀しましたが、でも旅行出発前の日本にいる段階でこのような対処ができたのは不幸中の幸いでした。
●クル空港の代替として利用したチャンディーガル空港
はじめはチャンディーガルからの飛行機チケットぐらい自分で予約しようと考えたのですが、現地の道路事情を知らない私が約230kmの道のりにどのくらい時間を要するか見当がつきにくかったので、餅は餅屋と言いますから、この時間だったら無理ないだろうという便を旅行会社に選んでもらってついでに予約もお願いしました。参考までに私が自分で手配しようとしたチャンディーガル発の便は14:30発でしたが、旅行会社が提案してくれた便は18:45発。4時間も遅い便を提示されたのですが、結論を言えば18:45で大正解。朝8:30過ぎにカソールのホテルを出発し、休憩以外は一切寄り道せずに走行したのですが、途中で通行止や渋滞などに遭い、チャンディーガルに着いたのは7時間後の15:45。私が考えていた便では間に合いませんでした。やはり初めての土地に関しては専門家に任せるべきですね。
立派で綺麗なチャンディーガル空港。チェックインしようとカウンターへ向かう際、空港警備のお兄さんから声を掛けられて「どこから来たの? 日本? 一度行ってみたいなぁ。日本から来たということは、あなたはエンジニア? 僕はすぐにわかるんだ。間違いない、エンジニアだね。すごいなぁ」と一方的に決めつけられてしまいました。どこから見ても私はしがない一人旅の中年男なのですが、アカデミックな雰囲気が私から醸し出されていたのでしょうか。生まれ持っての高貴な品格は隠しきれないのですね(なんてね)。
チャンディーガル18:45発のindiGo2113便はほぼ満席に近い9割近い搭乗率。その旺盛な移動需要にインド経済の成長力や活力が感じられます。indiGoはいわゆるLCCですが箆棒に安い訳ではありません。でも国内に14億の人々が暮らしているのですから、飛行機を下駄代わり使える富裕層もたくさんいるということなのでしょう。わずか1時間であっという間にデリー空港第2ターミナルへ到着。預けた荷物もすぐに出てきました。
●持参して良かったもの
この記事の最後に、世間の多くの旅行記で紹介される「持参して良かったもの」リストを挙げてみます。ただし海外旅行全般ではなく、今回のインド旅行に限定しております。
・トイレットペーパー:インド旅行で最も役に立ったのは、日本から持参したトイレットペーパー1ロールでした。持ち運びしやすいように芯を抜き、旅行中は常に携帯していました。インド旅行では多くの方がお腹を壊してしまうそうですが、御多分に漏れず私も・・・。ホテルのトイレなら紙が用意されていますが、外のトイレは・・・。多くを語らずともお分かりいただけるかと思いますが、神ならぬ紙には本当に助けられました。
・simカード:もちろん現地対応のものです。出発前に日本のAmazonで購入しておきました。私は普段auの携帯回線を使っており、インド旅行中もauの海外ローミングサービスでほぼ事足りたのですが、カバレッジの問題で場所によってはつながらないことがあったので、そんな時には購入したsimカードに切り替えてデータ通信を利用しました。あくまで保険として1枚購入しておくと安心です。
・着替え用バスタオル:バシストやマニカランの温泉を紹介した記事でも言及しましたが、当地の公衆浴場には更衣室が無く、入浴客の面前で着替えることになります。このため着替えの際には腰に巻くバスタオルが1枚あると便利です。
・代替手段の準備:これは物理的な物ではありませんが、とにかくインドの旅は一筋縄ではいかず、この記事でも取り上げたような急なフライトキャンセルなど、想定外のトラブルが発生し得るので、あらゆる旅程においてplanBを考えておくことをおすすめします。
旅行に関するあれこれを述べるつもりが、半分近くは愚痴になってしまいました。
次回記事では今回のインド旅行で利用した鉄道について取り上げます。


コメント
記事中に「海外旅行の達人」などとご紹介いただき面映ゆいばかりです(大汗)。
西遊さんは私がツアーでいつもお世話になっている会社ですが、僻地で車の手配を依頼されたのは大正解だったと思います。
フライトキャンセルや思わぬ大渋滞などはインドあるある、出発空港の変更もスムーズにできてよかったですね。7時間の車移動もインドでは普通なので運転手さんも慣れたものだったでしょう。
インドは一度行くと二度と行かないになるか、はまるかのどちらかと言われますが、K-Iさんはどちらでしょう。
この後のご報告も楽しみにしています。
Luntaさん、こんにちは。
>インドは一度行くと二度と行かないになるか、はまるかのどちらか
私はその中間かもしれません。インドにはまだまだ行ってみたいところがある一方、インド以外にも興味関心のある国が多いので、はまるほど強い気持ちでもなく、優柔不断になってしまっています。
インドへ旅に出る前は、いろいろなトラブルの記事を目にして、不安で頭でっかちになっていましたが、実際にはそんなこともなく、むしろ(アクセス数を目的にして)わざと誇張して悪く書いているのではないかと思われるネット記事や動画も多く、やはり何事も実際に現地へ行って体感すべきだと確信しました。いずれにせよ、またインドへ行きたいのは本当です。