前回記事「その2 大浴場と露天風呂」の続編です。
館内には前回記事で取り上げた男女別大浴場「ほんやらの湯」と露天風呂「月見の湯」のほか、2つの貸切風呂「里の湯」と「山の湯」があります。貸切風呂は原則的に予約制で且つ別料金を要するのですが、夜中の23時から翌朝7時までは空いていれば無料で自由に利用できるため、私は丑三つ時と早暁の頃に客室から出て、貸切風呂に入ってみることにしました。
●里の湯
2室の貸切風呂は1階の奥に並んでいます。まずは最も奥に位置している「里の湯」から。中にどなたもいらっしゃらないことを確認してから引き戸を開けました。
脱衣ゾーンはコンパクトながらも綺麗で備品類も整っており、使い勝手良好です。洗面台廻りにはアメニティ類やドライヤーが用意されているほか、エアコンや小さなファンも備え付けられており、湯上がり時のクールダウン対策もしっかり配慮されているのでした。
浴室へ入った途端に鼻孔を突いてくる濃厚な松之山温泉的アブラ臭に、私は思わず興奮してしまいました。館内のどのお風呂よりも匂いが強いのです。これはお湯に期待ができますね。
落ち着きのある色調の中にウッディーな要素をたっぷり織り込んだ浴室内には、木造の浴槽が一つ据えられ、一人分の洗い場も設けられています。また床はスノコ敷きでした。木材を多用することでぬくもりが感じられる設えになっていました。
総木造で美しい仕上がりの浴槽は1~2人サイズ。湯口からは大変熱い温泉がチョロチョロと注がれていました。浴槽内には循環している様子が見られず、またお湯のコンディションも良好でしたから、源泉100%の完全放流式で間違いないかと思われます。湯量を絞ることで湯加減の調整を図っているのでしょうけど、それでも入室時にはかなり熱かったため、十分に湯揉みをしてから湯船へ入りました。このお湯が実に素晴らしい! 前回記事で取り上げた大浴場や露天風呂と同じ源泉のお湯を引いているはずなのに、まるで別の温泉ではないかと勘違いしてしまうくらい、お湯が活き活きしているのです。詳しくは後述いたします。
●山の湯
翌朝は隣の「山の湯」にも入ってみました。
基本的には「里の湯」とシンメトリな構造をしており、脱衣室や洗面台廻りに関してもほぼ同様です。
浴室は厳密には左右対称ではありませんが、大きさ・広さ・設備面で特に「里の湯」と異なる点はありませんので、私のように無理して2室両方を利用しなくとも、どちらか片方だけで十分かと思います。もちろん室内に充満する濃厚なアブラ臭に私が大喜びしてしまったことも「里の湯」と同様であり、満足いく湯あみが楽しめました。
湯船の造りや湯口から落ちる湯量も同様でした。これら2室の貸切風呂は、湯船がコンパクトであるがゆえに、投入量を絞っていてもお湯が良いのです。同じく湯量を絞って湯温調整している露天風呂「月見の湯」は、湯船が大きくて且つ利用者も多いため、掛け流しとはいえどうしてもお湯が鈍ってしまいがちでしたが、こちらは湯船が小さいうえ、利用者も限られているため、お湯の状態が非常に良好であり、お湯が持つ本来の個性や効果を存分に享受できました。
湯船のお湯はやや灰色掛かった山吹色にぼんやり霞んでおり、湯中では飴色を帯びた小さな浮遊物がチラホラ舞っています。湯口はもちろん、湯面からも松之山温泉ならではの濃厚で刺激的なアブラ臭が放たれており、お湯を口に含むと塩辛さや苦味、そして唇などの粘膜が痺れるような渋みが感じられます。トロっとしているお湯に体を沈めると全身がツルスベになるとともに、塩分が濃いためか入りしなは肌にピリッと弱い刺激が伝わります。
こうした特徴は各浴室のお湯で確認できるのですが、とりわけ2室の貸切風呂ではより一層はっきりと感じられ、それに加えてお湯の鮮度感もプラスされるので本当に気持ちが良く、正直なところ私はこの貸切風呂のお湯が大変気に入りました。もちろん濃厚な塩分を含むお湯ですから、力強く、時には凶暴なまでに体を火照らせ発汗を促しますから、夏はもちろん冬でも長湯は禁物。適宜湯船から出て体を落ち着かせたり、水分を補給するなどして、適切にお湯と付き合ってゆくことが肝要です。適切にお湯と対峙すれば、お湯からの恵み即ち効能を享受できることでしょう。
和の佇まいに溢れた落ち着きのある館内で過ごす寛ぎの時間はもちろん、ご当地の非常に美味しいお食事、趣向を凝らした各種浴室、そしてそんなお風呂で入れる濃い温泉。そうした全てが素晴らしく、泊って良かったと心から満足することができました。
さて、夏の松之山といえば、美しい棚田の景観。周辺には棚田が何か所か点在しているのですが、お宿をチェックアウトした後にそうした中から2ヶ所へ足を運んでみました。
こちらは蒲生の棚田。
そして、有名な星峠の棚田。
どちらも息を呑む美しさ。ただただ見惚れるばかりでした。
鷹の湯1号・2号・3号
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 85.5℃ pH7.5 掘削自噴 溶存物質14978mg/kg 成分総計14979mg/kg
Na+:3500mg(60mval%), NH4+:31mg, Ca++:1900mg(38mval%),
Cl-:8900mg(99mval%), Br-:25mg, I-:10mg,
H2SiO3:110mg, HBO2:250mg,
(平成20年11月20日)
「ほんやらの湯」内湯:循環あり(体毛・糸くず等の除去と温度管理のため)、ヨウドパワーによる滅菌実施(衛生管理のため)、塩素系薬剤や入浴剤の使用なし、加水あり(源泉高温のため、清掃後の浴槽張り込み時に加水実施)。
「ほんやらの湯」露天:掛け流し、ただし加水あり(源泉高温のため、清掃後の浴槽張り込み時に加水実施)。
「月見の湯」:放流式、ただし加水あり(源泉高温のため、清掃後の浴槽張り込み時に加水実施)(極寒期には一時的に加温)。
「里の湯」「山の湯」放流式、ただし清掃後の浴槽張り込み時に加水実施。」
新潟県十日町市松之山湯本49-1 地図
025-596-2525
ホームページ
立ち寄り入浴10:30~15:00 月曜定休
700円(貸切浴室は別途1050円/45分)
内湯(「ほんやらの湯」)に貴重品用ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり、「月見の湯」にはいずれの備品類もなし
私の好み:★★★
コメント
Unknown
3回にわたる詳細レポありがとうございます!
狭い空間にアブラ臭の充満した貸切風呂・・・ステキ!笑
松之山は、安さに目がくらみほぼみよしや一択ですが・・・
よく考えたら、隣の寿々木で鱈腹食うので、いつも結局安上がりにはなってません(^_^;)
ちとせや貴ブログ既レポの明星みたいなところにもとまってみたいなぁ!
意外と松之山は暑い時期向けのサッパリ湯だと感じますので、K-Iさん同様、棚田の季節に是非足をはこびたいです。
Unknown
国民温泉さん、こんばんは。
ここの貸し切り風呂は、狭い空間だからこそアブラ臭が濃厚に充満してくれるんですよね。いわゆる中毒患者のように興奮して匂いを嗅ぎまくってしまいました(笑)。しかもお湯のコンディションもよく、私はすっかり気に入ってしまいました。
私は「みよしや」は日帰り入浴だけでまだ泊まったことがないのですが、いずれは宿泊してみたいと思っています。松之山といえば、ナステビュウが今年中には再オープンできそうな感じですね。早い復活を願っています。