桜湯 (旧国母駅前温泉健康ハウス)

山梨県

前回に引き続き山梨県の温泉を巡ります。甲府盆地はモール泉系温泉の宝庫。私はそんな当地の温泉が大好きなので、年に数回は通っています。かつて身延線国母駅の目の前にあった「国母駅前温泉健康ハウス」も私が何度か通っていた施設の一つなのですが、一旦閉業して建物を解体した後、昨年全面リニューアルオープンし、全く新しい施設に生まれ変わったという情報を得て、どのような姿になったのか自分の目で確認すべく、昨年(2017年)夏に行ってみることにしました。


噂に聞いていた通り、旧施設は完全に取り壊され、その跡地に全く新しい平屋の施設が建てられていました。建物の脇に設けられている駐車場は以前より停めやすくなり、場内の真新しい舗装が黒光りしていました。
玄関のドアを開け、靴を下足箱へ入れて館内へ入り(下足箱のカギは退館まで自分で管理します)、券売機で料金を支払って券を番台へ差し出します。番台から続いているフローリングのホールには自販機や飲料水のサービスが用意されています。またフロントの隣にはタイルカーペット敷きの休憩室が続いており、既にお風呂から上がったお客さんたちが室内に並べられたちゃぶ台を囲んでゆっくりと寛いでいました。
外観はもちろん、館内にも旧施設の面影はどこにも残っていませんでした。完全なる新施設なんですね。

脱衣室も広くて明るくてきれい。使い勝手が格段に向上していました。正方形に近い形状をしているロッカーは全て無料で使えます。洗面台にはドライヤーが2台用意されていました。


新しいお風呂は早速人気を集めており、場内は多くのお客さんで賑わっていましたので、館内写真に関してはパンフレットに掲載されているものをお借りしました。
大きくて奥行きが長い浴場。脱衣室から浴室に入って、まず目に入るのが掛け湯用の小さな湯枡。中温のお湯と低温のお湯の2槽に分かれており、その2つが背中合わせになっています。男湯の場合は、浴場の左手に洗い場、右手に浴槽類が配置されています。洗い場にはシャワー付きカランが計22基並んでおり、いずれも浴槽類に対して背中を向けるように設置されている上、後述する浴槽ゾーンとパーテーションで仕切られているため、石鹸の泡やシャワーの飛沫が混入しにくい構造になっています。

浴槽類に関しては、主浴槽に相当する大きな中温槽が中央に据えられ、その両側に各種浴槽が並んでいます。各浴槽を脱衣室側から具体的に列挙していきますと、サウナ・水風呂・高温・準高温(※)・中温・準中温(※)・気泡という順です(※は私が勝手に名づけました)。最も脱衣室側(手前側)にあるサウナと水風呂を除けば、手前から奥へ向かって湯船の温度が徐々に下がってゆくような配列であり、その真ん中に上述の大きな中温槽を設けているわけです。各浴槽について一つ一つ見ていきましょう。高温槽は42~3℃で4~5人サイズ。こちらの温泉は浴槽に浸かると体に気泡が付着するのですが、この槽は泡付きの程度が最も良く、またお湯の鮮度感も良好なので、湯中の体がシャキッとします。その隣の準高温槽は高温槽からのお湯を受けており、5~6人サイズで42℃前後の湯加減です。この準高温槽からお湯が洗い場へオーバーフローしていました。続いては主浴槽でもある中温槽。最大幅で3m×6m程あり、洗い場へ向かって曲線を描きながら緩やかに膨らんだ形状をしているのが特徴。浴槽の大きさを活かして一部では泡風呂装置が稼働していました。その名の通りに41~2℃の中温域で万人受けする湯加減に調整されているのですが、その影響なのか高温槽より泡付きは弱めでした。この中温槽からさらに奥へ向かって準中温槽・気泡風呂と続きます。サウナや水風呂以外の各浴槽は温泉が張られています。

 
内湯の奥にあるドアを開けると露天風呂。市街地なので周囲は塀で囲まれており、また全体の半分以上は屋根で覆われていますが、塀の高さやフェンスの構造などを工夫することによって屋外のそよ風を体に受けながら湯浴みできる爽快な空間が出来上がっていました。
露天はいわゆる岩風呂。露天ゾーンの大半が浴槽によって占められており、20人は余裕で同時に入浴できそうなサイズを有しています。後述する湯口から注がれたお湯は大きな露天風呂を満たし、縁に取り付けられた目皿から排水されるほか、縁の上を乗り越えてザコザコと大量にオーバーフローしており、露天風呂の床は排水が追い付かず洪水状態になっていました。それほど湯量が豊富なのでしょうね。


露天風呂では岩積みの湯口からお湯が注がれていました。吐出時点で既に適温でしたので、もしかしたら加水されているのかもしれませんが、その割には鮮度感もしっかりしており、私が湯船に入った実感では、上述の高温浴に次いで泡付きが多くみられました。投入量の多さが良い影響をもたらしているのかもしれません。

こちらで使っているお湯は掘削自噴している自家源泉。僅かな緑色を帯びつつ淡い黄色を呈しており、口に含むと重曹的な清涼感を伴うほろ苦味の他、弱い金気の味と匂い、弱い鉱物油的な風味が得られます。いわゆるモール泉的な知覚的特徴は弱いものの、甲府盆地で良くみられる典型的なモール泉系の温泉であることに違いはありません。泉質名は単純温泉ですが、実際には純重曹泉と称しても良いほど重曹らしさ個性がよく現れており、味や匂いの他、湯船に浸かったとき肌に伝わるツルスベの滑らかな浴感も素晴らしく、また豊富な湯量も相俟って、どの浴槽も実に気持ちよい湯浴みが楽しめます。とりわけ私は、泡付きも良好な内湯の高温浴槽が気に入りました。なお源泉名と新施設名が同じなので、私はてっきり源泉を掘り直したのかと早合点してしまったのですが、以前の「国母駅前健康ハウス」時代から源泉名は同じだったらしく、つまりリニューアルに際して施設名と源泉名を統一させたのですね。

そんな屁理屈はともかく、湯量豊富で浴感も素晴らしく、しかもワンコインで新しく大きな内湯と露天の両方に入れるのですから、人気を博するのは至極当然。私が訪れたのは平日の日中でしたが、びっくりするほど多くのお客さんで賑わっていました。新たなスタートを切った国母駅前温泉。ぜひとも永劫に人々から愛され続けていただきたいものです。

桜湯
単純温泉 43.6℃ pH7.9 199L/min(掘削自噴) 溶存物質0.792g/kg 成分総計0.850g/kg
Na+:139.2mg(71.34mval%), Mg++:14.5m,g(14.03mval%), Ca++:18.2mg(10.73mval%),
Cl-:28.8mg(9.69mval%), HS-:0.2mg, HCO3-:458.6mg(89.95mval%),
H2SiO3:117.4mg, CO2:58.1mg,
(平成29年4月20日)

JR身延線・国母駅より徒歩1~2分
山梨県中巨摩郡昭和町西条251  地
055-268-3088

10:00~23:30(最終受付23:00) 年中無休
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

コメント

  1. 国民温泉 より:

    長文すみません
    ひどい雪ですね!K-Iさん平気でしたか?私はH26の大雪思い出しました。

    山梨に数日閉じ込められ散々な目にあったと当時思ったものですが・・・
    それがきっかけで甲府盆地モール泉の素晴らしさと甲府鳥もつ煮の美味しさに目覚め、年に数回通うようになりました。
    甲府昭和IC付近で中央道再開を待ってる間、地元の方から食べ物・飲み物の差し入れを一杯頂きました。

    “つらいことの先に素晴らしい発見がある・・・人の優しさを実感する・・・いいことも悪いこともすべては大切な旅の想い出・・・”
    くだらないポエムほざいて申し訳ありません(笑)
    ※十日町地区四天王のゆあーずは2016.02末以来長期休館中です。再開してくれるといいですね!

  2. たちかわ某 より:

    ここは
    オープンの数日後に早速訪れました。
    まだ入浴客もまばら。おかげで浴室内写真をたっぷり撮れましたよ…笑
    その後は予想通りの大人気温泉施設になったようですね。
    当時はパンフも温泉成分表の掲示も無かったので、それだけが心残りです…。

  3. K-I より:

    Unknown
    たちかわ某さん、こんにちは。
    オープン直後はまだ客足もまばらだったんですね。私も開業前に情報は仕入れていたのですが、なかなか予定が立たず、結局それから遅れてようやく訪問したため、既に大人気施設となっていました。とはいえ、温泉施設の廃業が相次ぐ昨今ですから、オープンした施設が人気を博することは、非常に喜ばしいことですね。また機会があれば再訪するつもりです。

  4. K-I より:

    Unknown
    国民温泉さん、こんにちは。
    あくまで私個人の感覚ですが、雪の降り方や積もり方自体はあまり大したことなかったものの、やはり東京はその程度の雪でもボロボロになってしまうほど脆弱であることを知らされました。私の会社でも、私が指示して社員に早めに帰ってもらったのですが、それでも各ターミナルで大混乱しており、電車に乗れず徒歩で帰った者もいました。
    甲州と大雪と言えば、国民温泉さんが遭ってしまった4年前の雪害を思い出さずにはいられませんよね。でもそれをきっかけにモール泉やご当地グルメに出会えたとは、災い転じて福となると言いますか、禍福はあざなえる縄のごとしと言いますか、人生何がどうなるか、まったくわかったものではありませんね。おっしゃるように、あらゆることは旅の記憶として自分の体に残り、いずれその殆どは笑って話せるようになるのかもしれませんね。

    ゆあーずが長期休館中とは知りませんでした。復活していただきたいものです。

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