小安峡温泉 元湯共同浴場・山神の湯

秋田県

前回に引き続き、今回も秋田県湯沢市です。市町村合併によって湯沢市に吸収された旧雄勝郡皆瀬村には、村域を流れる皆瀬川が山を削って作り出した渓谷「小安峡」という景勝がありますが、谷底の岩を穿って98℃にも達する蒸気が勢いよく噴出している「大噴湯」がこの渓谷随一の観光名所になっていることからもわかるように、辺り一体は湯量豊富な温泉地としても知られています。国道398号線沿いには小規模ながら温泉宿が建ち並び、また渓谷を散策する客向けに何箇所か足湯も設けられています。


小安峡名物「大噴湯」。熱湯の蒸気が勢いよく噴出しています

 
国道沿いにはこのような足湯が点在しています

小安峡温泉には2軒の共同浴場があり、ひとつは一般客にもわかりやすいものなのですが、もうひとつは殆ど地元民専用で表には何ら看板も立っておらず、予めそこに浴場があることを知らなければ誰しもがその存在に気づかない、知る人ぞ知るお風呂なのです。今回はその知られざるお風呂「元湯共同浴場・山神の湯」にスポットライトを当ててみたいと思います。

国道から旅館「元湯くらぶ」の脇の小道を入ると、視界の先には民家が数軒建っており、そして「ご入浴される方へ」と書かれた看板が目に入ってきます。この看板により、この先に外来客でも入浴可能なお風呂があるんだな、ということがわかります。看板には「佐藤好子宅・伊藤ユキ子宅のどちらかで200円お支払いして入浴下さい」と書かれています。つまりこれから目指す浴場に入るには、その手前の民家で料金を支払う必要があるということです。私は国道に近い佐藤さん宅に200円支払いました。玄関先に料金を入れる籠が置いてあったのですが、その存在に気づかず、つい声を張り上げて佐藤さんをわざわざ呼び出してしまいました。それでも笑顔で料金を受け取り「ごゆっくりどうぞ」と仰って下さった佐藤さんに感謝です。


こんな看板が立っています


民家で料金を支払います

小道のどん詰まりに浴場はありました。浴場というより納屋という表現が相応しい外観で、やや硬めの引き戸を開けると男女別の脱衣所がありました。脱衣を済ませて浴室に入ると、浴室は男女共通、つまり混浴です。小さな納屋のような建物ですが手入れは行き届いており、なかなか清潔感があります。浴槽はコンクリート打ちっぱなしのものですが、それに木の縁を取り付けたり、またスノコを敷いたり板で内壁を囲ったりと、木材を多用してコンクリートの冷たい質感を極力打ち消すよう配慮されています。

また源泉パイプからのお湯は非常に熱いのですが、このお湯が浴槽上の小さな枡に一旦落とされ、そこで源泉のお湯とほぼ同量の冷たい水と混ざり、ちょうどよい湯加減となって浴槽へと注がれる仕組みになっていました。加水もあってか供給量は多く、ふんだんに浴槽からお湯がオーバーフローしています。お湯は無色透明、ほぼ無味で、湯口で微かに燻したような硫黄の匂い、そして石膏の匂いが感じられました。すべすべする肌触りでとても気持ちよいお湯です。
熱いお湯が供給される小さい浴室は熱気が篭りがちですが、ここは常時換気扇がまわっているので、湯気でムンムンするようなこともなく、ゆっくりのんびりお湯を堪能することができます。

小さく質素ながらも、お湯の良さをしっかりと味わうことのできるお風呂です。しかしながら、あくまで地元の方のためのお風呂でありますから、大人数での訪問やマナーを逸脱するような入浴、佐藤さんや伊藤さんにご迷惑が及ぶような訪問は厳に謹んでいただきたく思います。


触れない程熱いお湯と水が枡で混合され、浴槽へ注がれます

温泉分析表の掲示なし(おそらくナトリウム-塩化物・硫酸塩泉)

秋田県湯沢市皆瀬
地元の方用のお風呂であることを考慮してここでは地図の掲載を控えます。
皆瀬観光協会のホームページのどこかに元湯共同浴場の場所を記したマップがありますので、探してみてください

入浴可能時間:20:00まで(OPEN時間は不明。常識の範囲内で)
200円

私の好み:★★★

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