秋田県・乳頭山登山道の途中にある野湯「一本松温泉」へ行ってきました。一本松へは一本道、片道30分、上り勾配もそんなにきつくないので、トレッキング気分で野湯が楽しめ…るのかな。
真夏の快晴、この日私は朝から秋田駒ケ岳を登山。高山植物の花々を愛でながら、男女岳・男岳・横岳の順で各頂上を巡り、お昼過ぎに田沢湖高原へ降りてきて、その足で一本松温泉を目指しました。
まずは黒湯の駐車場に車をとめ、乳頭山登山道に入ります。
乳頭温泉郷は一応秘湯ということになっていますが、どこもかしこもお客さんでごった返しており、黒湯温泉もご多分に漏れず混雑していました。そんな所にゃ興味ねぇ。一瞥してさっさと通過しちゃいます。
孫六温泉への分岐点です。進む方向は画像奥の乳頭山方面。ここからすぐの右傍に黒湯の露天風呂があって、裸の殿方がこちらを見下ろしていました。なんだか変な気分。
黒湯を過ぎるとすぐ目の前にダムが現れますので、その右手を登っていきます。所々ぬかるみがありましたが、比較的歩きやすい道です。
やがて川の対岸に温泉の源泉地帯が見えてきます。湯けむりの上がるガレ場に貯湯槽が設置され、そこから何本もの引湯ホースが敷かれていました。
橋で対岸へ渡ります。欄干こそ無いものの、かなりしっかりした橋です。ここからも黒湯の源泉地帯が眺められます。
しばらくは川に沿いますが、やがて川から離れて高巻く感じで登りに入ります(高巻く辺りにもうひとつのダムがあります)。
道端に水が湧いて白くなっているところがありました。温泉かと思って触ったら冷たい。硫黄の冷鉱泉のようです。
週末だからか登山客が多く、往路だけで20人以上とすれ違いました。通行する人が多いからか道筋がはっきりしており、ぬかるみもありますが木道部分もあり、総じて歩きやすい状態です。
坂を下りきると一本松沢に突き当ります。付近には案内表示もあり、これによれば、どうやらスタートしてから1.3km歩いてきたようです。先に道が見当たらないので辺りをよく見たら、沢の岩に矢印のプレートが貼ってありました。なるほど、矢印に従って徒渉するわけですね。
ご丁寧にわかりやすく矢印が随所に貼られています。これなら迷うことはありませんね。ちなみに徒渉やぬかるみを予想して、私はゴム長靴を履いてきたので、濡れることを気にせず、ジャブジャブ沢に入って対岸へ渡りました。辺りには硫黄の匂いが漂っており、
河床も一部硫黄で白くなっていました。
沢を渡って歩くと程なくして一本松温泉跡に到着。駐車場からちょうど30分でした。小さな案内板があり、文字は消えていましたが、よく見ると「一本松温泉跡地 環境省・秋田県」と書かれているのがわかります。環境「省」なので、案内板が建植されて10年以内だと思いますが、それにしては文字が消えるのが早すぎますね。
以前は旅館があったそうですが、今はただの小さな広場になっているだけで何の痕跡も残っていません。広場の奥へ進むと、今回目当ての湯溜まりがありました。「たつこの湯」と呼ばれている野湯です。人一人が入浴できそうな湯溜まりが一つ、そして沢へ下ったところにその半分にも満たない小さなものが一つ、この他にも半径2~30cm程の湯溜まりがいくつかありましたが、いずれも小さなものばかり。
一番大きな湯溜まりに入ってみました。お湯は底の数か所からプクプク上がる泡と一緒に湧いています。また、沢の上の方からホースが引かれており、それで加水しています。湯温は最初38℃ほどありましたが、掻き混ぜたら35℃前後にまで下がってしまいました。
底の堆積物が多いためかお湯の嵩も浅く、胡坐をかいて浸かっておヘソまで。入浴するより足湯にした方が良さそうな状況です。
薄ら青みを帯びた無色透明のお湯。足を入れるとお湯が撹拌されて底の泥が舞いあがり、一気に白濁します。硫黄味に強い苦味と渋み、そして鼻にツンと刺激する硫化水素の匂いが感じられます。いかにも乳頭温泉郷のお湯っぽいですが、黒湯など他の源泉と比べるとやや苦味が強い気がします。
この湯溜まりの脇にも湧出口があり、成分沈着で黒くなっています。こちらの温度は55℃と熱め。このお湯は大きな湯溜まりに注がれず、そのまま沢へ落ちてしまっていました。あぁ、もったいない。
全体的に温泉の湧出量が少ないため、もうここで旅館を再興するのは無理でしょう。野湯も小さくて浅いので、あんまり湯浴みした気分にはなれません。そして何よりも、登山道から丸見えで、休憩場所でもあるので、タイミングが悪ければ登山客にバッチリ見られてしまいます。私もビクビクしながら全裸で入浴し、タオルで体を拭いて着替え終わったちょうどその時に、乳頭山から下りてきたグループがやってきたので、もう冷や冷やでした。
マニアならともかく、そうでなければ、ここは足湯として楽しむのが相応しいように思います。
秋田県仙北市田沢湖生保内 地図 ←おおよその位置です。あんまり正しくありません(地図自体、不正確です。徒渉地点なのに沢を渡っていない箇所があったり…)
野湯につき無料
それなりにトレッキングできる装備で。長靴履いていくと便利。
私の好み:★★
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