白馬岳登山記その3(白馬山荘→杓子岳→白馬鑓ヶ岳→白馬鑓温泉)のつづきです
白馬鑓温泉のレポートはこちらをご覧ください。
2011年9月9日 曇り時々雨 計2人
白馬鑓温泉→小日向コル→猿倉
距離:5.9km
標高差:778m
獲得標高:上り49m、下り797m
【4:50 起床→露天風呂へ直行 (ご来光)】
前日は到着後に茫洋たる山巒を遠望しながら、そして夕食後には満天の星空を仰ぎながら、全身がふやけそうになるほど、さんざん長風呂したのですが、それでも飽き足らず、翌朝は早暁に褥から起き上がり、曙の薄陽に照らされた中を露天風呂へと直行しました。目的は湯あみしながらご来光を仰ぐこと。
上空には西方から雲が流れてきていましたが、幸いまだ東の空には及んでおらず、湯に浸かりながらカメラを構えること暫し、5:28に待望のご来光とご対面です。何とも荘厳な黎明ではありませんか。この日の出を見られただけでも、わざわざ登山してここへ来た甲斐がありました。
【5:30 朝食】
真っ赤に燃える太陽が上がる様をいつまでも眺めていたかったのですが、小屋の朝食は5:30と決められているので、戸隠の山から太陽が姿を現したのを確認したら、そそくさと風呂から上がって体の湯を拭い、慌ただしく着替えを済ませて食堂へと急ぎました。
そして食後、皆さんが次々に身支度を整えて次々に出発する中、下山するだけの私はSさんと一緒に再び露天風呂へ。つまり朝だけで私は2回もここの露天風呂に入っているわけです。前日を含めたら計4回に及ぶわけで、かなり奇特な珍客かもしれません。だって、名残惜しいんだもん。こんな私は失恋したらいつまでもクヨクヨして未練を断ち切れない性格だったりします。
【7:10 出発】
この日も前日白馬山荘でお会いしたSさんと行動を共にします。
連日の快晴、そして2日連続のライチョウとの邂逅によって、私は当面の運を使い果たしたのか、出発しようとすると、西の空から厚く暗い雲が覆いはじめ、それとともに雨がポツポツ降ってきました。せっかくバックパックの奥にしまいこんだ雨具をわざわざ取り出し、それを身に纏って下山開始です。東の空はまだ明るいのに、まるで狐の嫁入りのように雨粒が次々と雨具を叩きます。登山道の脇には露天風呂から溢れ落ちた温泉の湯が、湯気を上げながら川となって下の方へと落ちていきます。
初秋まで辛うじて残った雪渓は、人喰い鮫のような口をあけながら、底を流れる沢をトンネルのように覆っていました。
白馬鑓温泉小屋直下の雪渓に沿った斜面にはクルマユリが群生をなしていました。
【7:30 橋その1】
コンパネで作られた橋で細い沢を越えます。
沢を越えて数分でロープ場です。ここを下りたら、しばらくは等高線をトラバースしていきます。
【7:37 橋その2】
滝として落ちてくる2本目の沢を渡ります。初見なのでよくわかりませんが、けだしこれは鑓沢というんでしょう。ここの橋もやはり角材とコンパネで造られたもの。ちょっとでも増水したら流されちゃいそうです。
その沢の下方には雪渓が残っていました。ここは7月など早い時期に訪れると、沢ではなく雪渓上を越えることになるんでしょうね。さすがにこの時期のルート上には微塵の雪も残っていません。
この辺りは杓子岳の山腹の等高線上をトラバースするので、上り下りは大したことないのですが、杓子沢の手前でザレの急斜面を横切る箇所があり、いまにも足が谷底へ滑っていきそうで、これが結構怖かった。なかなかのスリルでした。岩に赤いスプレーで○が書かれているので、それを目指して先へ。
振り返るとこんな感じ。かなりの急斜面ですよね。
眼下に杓子沢に架かる橋が見えてきました。数日前に上陸した台風の影響で、この橋は流出の危機に見舞われましたが、辛うじて流されることなく、こうして無事に渡ることができるのであります。
【8:00 橋その3(杓子沢)】
関係各位のご尽力により架けられている橋をありがたく渡たらせていただきます。私は昨年9月に鑓温泉への訪問を検討していたのですが、各所へ手配後に秋の長雨が降って橋が流出、これに伴い登山道がクローズしてしまい、その時は計画を断念せざるを得なくなりました。今回も同様の憂き目に遭う可能性があったわけでして、出発前に電話で橋の無事を確認できたときにはホッと胸を撫でおろしました。
こちらの沢の下流にも雪渓が僅かに残っていました。初夏はアイゼンを装着して雪渓上を越えるんでしょう。雨は降ったり止んだりを繰り返し、雨が上がると強い日差しが直撃するため、雨具を着ていると猛烈に蒸し暑くなります。このため途中で何度も雨具の脱着を繰り返しました。
遠くに白馬鑓温泉小屋が小さく望めます。もうかなり進んできたんですね。杓子沢手前の急斜面ザレ場を見ると、後続の高齢者パーティーがゆっくりと横切っていました。
稜線の鞍部が小日向コル。まだしばらくはトラバースが続きます。
道端にはトリカブトが多く咲いていました。また、花は殆ど落ちていたものの、白い縮毛で覆われている長い頭花柄が特徴的な丁字菊にも出会えました。
【8:25 サンジロ(三次郎沢)】
ここは鑓温泉→猿倉の道程の1/3に当たるんだそうです。ということは、まだ2/3も残っているのね…。ここから小日向コルまで若干の登りです。今回の行程最後の登りとなるので、一歩一歩よく踏みしめながら歩みを進めます。ここに至って雨脚が再び強くなってきたので、雨具に蒸されて全身サウナ状態になりながら坂を登りました。体力の消耗が著しい…。
【9:00/05 小日向コル】
やがて平坦になり、木道が現れると小日向コルに到達。周囲には池塘が点在しており、きっと初夏にはミズバショウやニッコウキスゲのお花畑が広がるんでしょうね。
さぁ、最終的な下山へまっしぐら。
コルからちょっと下ったところで、アジサイの群生を発見。9月なのにどうしてアジサイが咲いているの? 狂い咲き? あるいは今の時期に咲く種類なの?
【9:33 中山沢】
中山沢と称する涸れ沢。ここは鑓温泉→猿倉の道程の2/3なんだそうです。終着まであともう少しだ!
延々と続く樹林帯のダラダラ坂をひたすら下ります。景色がほとんど楽しめないので、かなり退屈。私は下りだからまだマシですが、これが登りだったら精神的に凹みそうだ…。
【10:20 登山道入口】
つまらない坂が続いて「もういい加減にしてくれ」と叫びたくなったころ、突然目の前が開け、広い道に突き当りました。見覚えのある道だぞ…。そうか、これは猿倉と大雪渓方面を結ぶ林道だ…。てことは、もう猿倉は目の前。
【10:28 猿倉】
途中雨具の脱ぎ着で時間を費やしながらも、わずか3時間20分で下山しちゃいました。もうここまで来れば遭難の危険性なし。無事に登山を完遂することができました。
猿倉からはSさんの車で街まで乗せていただくことに。繁忙期以外の平日は猿倉からのバスが運行されず、タクシーの利用を余儀なくされるところでしたから、とても助かりました。コーヒーを御馳走になったり、車に同乗させていただいたりと、白馬山荘以降はSさんにお世話になりっぱなし。やっぱり単独より誰かがいた方が楽しい上に安心できますね。本当にありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。
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