5月下旬の某日、所用で仙台へ出掛けた翌日が完全オフとなったので、以前から泊まってみたかった小野川温泉の「うめや旅館」で1泊することにしました。数ある小野川の旅館の中で、なぜこの宿をチョイスしたのかと言えば、比較的リーズナブルであることが理由の一つ、そしてもう一つ重要な理由があるのです・・・
●お部屋
宿泊当日の午前中に直接お宿へ電話して平日限定プラン(1泊2食で\8,600)でお願いしたところ、3階の表通りに面した広い和室を用意してくださいました。とても綺麗で居心地の良いお部屋です。
宿泊当日は使用しませんでしたが、客室の暖房(ヒーター)は温泉熱を利用したものでして、この温熱システムは先に述べた私がこの宿を選んだ理由と大きく関係しております。
窓からは小野川のランドマークである尼湯など温泉街が見下ろせます。
廊下には自由に読める本棚もあり、民宿のような家庭的な雰囲気。
●食事
花より団子、腹が減っては戦もできぬ。温泉を取り上げる前にまずはお食事から。なお食事は夕食・朝食ともに別室にていただきました。
宿泊料金は8,600円とビジネスホテル並みですが「こんなにいただいて良いの?」と申し訳なく思えるほど、地元の食材を中心とした彩り豊かな品揃えに吃驚しちゃいました。
画像左(上)は米沢牛のすき焼き。お口の中でフワっと溶けちゃう極上の逸品には感激せずにいられません。画像右(下)はご当地の名物である鯉の甘露煮。しっかり煮詰めてあるので鯉の臭みは全くなく、骨までしっかり食べられちゃいます。
画像左(上)はこごみ入りのトロロそば。訪問日は初夏だったためこごみが旬を迎えていたわけですね。画像右(下)は筍と玉こんにゃくの煮物。筍は咀嚼する力を要さないほど柔らかくて、その食感に思わず目尻が下がってしまいました。
こちらは朝食。中央にこごみのおひたしが据えられ、両脇を焼鮭や温泉卵が固める、いかにも日本の温泉旅館の朝らしい布陣です。撮影し忘れちゃいましたが、一緒に供された緑色のふわふわ(おぼろ)豆腐は豆の風味が強くてべらぼうに美味く、あっという間にペロっと平らげちゃいました。
●お風呂
お風呂は1階の帳場の奥方にあり、男女別内湯が一室ずつで、男女の入れ替えは無く、露天風呂もありませんが、それでもこの宿を選びたくなる理由が・・・
こちらのお宿の湯使いにあります。小野川温泉では、主力の4号泉が激熱であるため、ぬるい5号泉を混ぜて適温にしたり、あるいは4号の単独使用であっても、湯加減調整のために加水したり、あるいは投入量を絞ったりしているのですが、こちらのお宿ではそのような方法を採らず、4号源泉を単独使用の上、熱交換器に通すことによって浴槽へ提供しているのであります。これによって湯量を絞らず加水もせず、新鮮な状態の4号源泉をふんだんに掛け流すことができるのです。熱交換により得られた熱は給湯や暖房に転用されており、上述のお部屋の紹介にて、暖房の温熱利用もこの宿の選択理由に関係があると申し上げたのは、こういう事情なのでありました。
脱衣所は至ってシンプルですが一通りのものは揃っており、手入れも行き届いておりとても清潔です。
窓に面している浴室は、夜間はもちろんのこと日中でもやや薄暗いのですが、これは浴室内で落ち着いて湯あみしてもらうために敢えてそのような明かりの設定にしているんだそうです。洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基用意されており、小野川の他の宿と同様、金属部分は硫化して黒く変色しています。
浴槽は四角い4人サイズでタイル貼りのものが一つしかなく、外見は至って普通なのですが、一湯入魂と言うべきで、上述のようにお湯のクオリティが全然違う!
浴槽に隅っこに設けられた湯口から源泉が注がれており、そのお湯は洗い場の床へ溢れさせないよう、浴槽縁の手前で口を開けているオーバーフロー管によって排湯されています。
このお湯は上述のように4号源泉単独使用でして、小野川の他の宿でも4号を単独利用しているところがありますが、同じ4号単独でもこちらのお湯は全然違います。他の宿のお湯に比べてごく薄く白く靄がかかっており、トロトロとした感触を有し、湯面から硫黄の匂いがはっきりと感じられます(換気がきちんと行われているために、硫黄臭の室内充満は軽度です)。飲泉すると出汁が効いた美味しいタマゴスープ味が明瞭に口腔内に拡がり、見た目、匂い、味、そしてトロミなど、ありとあらゆる知覚面の全てが他の宿のお湯より抜きんでいるように感じられ、湯船に浸かるとまるで自分が濃厚タマゴスープの具になったかのようでした。なお小野川の他のお湯に比べて湯の華がかなり少ないのですが、これはお湯が新鮮である証でしょう。
とても人当たりが優しい若旦那曰く、先代の主人が何とかお湯を良い状態のままで提供できないものかと思案した末に、このような熱交換システムを導入したんだとか。硫黄・塩分による腐食や成分によるスケール付着など、維持管理面でご苦労されているかと思いますが、そのおかげで小野川温泉のお湯本来の姿を存分に堪能することができました。
なお若旦那は鉄道や旅行がお好きのようでして、同じく「鉄」分の濃い私はその素性がわかると俄然饒舌になり、寝台列車やローカル線の話題に華が咲いて夜遅くまで話し込んでしまい、若旦那のお仕事の邪魔をしてしまいました。事情も察せずにひたすらしゃべり続けてごめんなさい。この場を借りてお詫びします。でもお蔭様でとても楽しいひと時が過ごせました。
●たんぼアート
若旦那のおすすめで、翌朝、温泉地からちょっと離れたところにある田圃アートを見学しに行きました。
田圃を見下ろす展望台には寄付金箱がありますので、寸志を入れてあげてください。防犯カメラもありますから、お金をくすねちゃダメよ。
まだこの時(5月下旬)は苗を植えたばかりだったので、絵がうっすらとしか現れていませんが、それでも「なせば成る」の言葉とともに米沢藩の名君である上杉鷹山の肖像、そして山形が誇るお米の品種「つや姫」のロゴを確認することができました。河北新報の記事によれば、このたんぼアートはちょうど今が見ごろを迎えているそうですよ。
協組4号
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 80.3℃ pH7.0 蒸発残留物6470mg/kg 溶存物質5515mg/kg
Na+:1518mg, Ca++:437.7mg,
Cl-:3124mg, HS-:1.6mg, S2O3–:0.8mg,
H2SiO3:77.4㎎, 遊離H2S:1.8mg,
(平成17年2月4日分析)
JR米沢駅から山交バスの小野川温泉行で小野川温泉下車、徒歩1分
山形県米沢市小野川町2494 地図
0238-32-2911
ホームページ
入浴可能時間13:00~翌9:00
現金での立ち寄り入浴は要問い合わせ
シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★
コメント
Unknown
残さずすべて美味しく頂けそうな食事と清潔なタイル張りの内湯 いいですね。”この値段でこのサービスを提供する宿にこそ泊まっておかないとダメだな~”との思い強くしました。熱交換システムも興味深いです。
Unknown
zataro50さん
こんにちは。家庭的且つ上品な接客、品数豊富でとてもおいしい料理などコストパフォーマンスは抜群ですし、何よりお湯の質が違いました。こういうお宿を積極的に利用してあげないといけないな…と私もzataro50さんと同じく思いました。
熱交換のシステムは、鮮度の良いお湯を楽しむ意味とともに、温泉熱の有効利用という面から考えても、是非他の施設でも採用してほしいですね。温泉めぐりとしていると、意外とこのシステムを導入している施設を各地で遭遇しますが、絶対数はまだまだ少ないようです。イニシャル・ランニングの、両コスト面で課題は大きいのかもしれませんが。
白布 小野川
おはようございます。
貴兄が過去に宿泊されたのとほぼ同じ部屋から送信しています。(^_^)
この連休、白布温泉で1泊、小野川温泉で1泊しました。白布で5湯、小野川で現時点で4湯入り、すでにグロッキー状態です。尼湯と新滝湯は未湯です。尼湯と旧滝湯は過去に入湯済みですが、記録が不充分です。不充分なまま旧滝湯は無くなってしまいましたが。今回新湯へ入湯するのを目的のひとつにしていました。しかし様子をちょっと伺いに現地確認したところ、ひっきりなしに入浴者が訪れており、記録保存は難しそうなのと体力の消耗が大きいので今回は断念します。
朝飯後に、尼湯にちょっと行ってから帰路につこうと思います。
また近いうちに再訪を期したいと思います。
小町の湯
追記。
小町の湯が、冬季閉鎖になっていました。前は、夏季より営業時間を短縮しつつも営業はしていたと思うのですが。
Unknown
ほぼではなく、完全に同じ部屋のようですな。
Unknown
あんちゃんさん、こんばんは。
現地からの書き込み、ありがとうございます。
何と私が訪れた時と同じ部屋にお泊りだとは!
温泉街の中心部を見下ろせる広くて居心地の良いお部屋ですよね。小野川は風情があり、お湯も私好みなので、とっても気に入っています。
さすがに連休ですので共同浴場は混んで賑わっていますよね。今の時季の小野川は温泉モヤシが美味しいのではないでしょうか。あのシャキッとした歯ごたえとしっかりとした味が非常に美味しく、もやしを食べたいがために、最近は小野川へ敢えて冬に訪れるようになっちゃいました。温泉をハシゴすると体力の消耗が激しいので、お帰りの際には事故に遭いませんようお気を付け下さい。
楽しく拝読
いつも楽しく拝読しています。貴方のブログを読み、入来温泉に行きました(毎回車で が入来温泉遠かった(笑)) 今回5/17から1週間東北に行きます。(仙台に1日用事がありその後旅行)私は何処に行くのもマィカーですが、70歳を過ぎてからはドライブも大変です(笑) 今回小野川温泉に行きます(行きたかった温泉、うめや旅館泊ります)白布高湯は以前行きました。そして福島会津からR121をドライブします。何処かお勧めが有りましたら参考まで教えて下さい。 因みに私は町田市在です。
Unknown
ジロウさん、いつもご覧下さりありがとうございます。私は小田急線の急行で一つ新宿側の駅が最寄りですので、町田にお住まいと聞くと、とてもご近所のように感じます(笑)。ちなみにご自宅から鹿児島県まで、マイカーで行かれたのですか!? 入来温泉は共同浴場が新しくなったようですから、私も再訪して、生まれ変わったお風呂を体感してみたいと思っています。
5月中旬に東北へお出かけとのこと。新緑が美しく、旅をするには最高の季節ですね。ルートとしては大峠を越えて喜多方から米沢(置賜地方)へ向かわれるかと思います。置賜地方に入りましたら、既にご存知かもしれませんが、やはり米沢八湯の各温泉、とりわけ「姥湯温泉 桝形屋」の露天風呂はオススメです。途中の道が険しいため運転が大変なのですが、その苦労は必ずや報われるかと思います。福島県側ですと、大峠の一本東側の、白布峠の麓になってしまいますが、「早稲沢温泉 民宿森川荘」の露天風呂も温泉ファンの間では好評です。
ジロウさんの具体的なお好みや日程がわかりかねるので、何ともお答えしにくいのですが、もし具体的に「この辺りで」「こんな感じの温泉に入りたい」というリクエストがございましたら、また改めてお答えさせていただきます(^^)
ご無沙汰です。
この覧を探すのに大変苦労しました(パソコン音痴なので)やっと見つけました(笑)5/18頃に宿泊する予定です。 今回家内も一緒の為に予定が大幅に変更になり、小野川温泉から五色沼そして磐梯スカイラーインとかその周辺をドライブ観光して適当に(笑)帰京します。色々と教えて貰いましたが、そんな訳で今回は小野川温泉のみ行く事にしました。 又時々拝見しますので今後とも宜しくお願いいたします。
Unknown
ジロウさん、こんばんは。
新緑を眺めながら、のんびりと景色を楽しむドライブ旅になりそうですね。小野川温泉だけでも、お宿のお風呂もあれば情緒ある外湯もありますから、温泉街だけでも十分お楽しみいただけるかと思います。奥様と素敵な旅を堪能なさってください。今後とも宜しくお願いいたします。
小野川温泉行って来ました。
5/20日に行って来ました。温泉が良かったですね♪ 4時頃着いたので(米沢上杉神社から15分位、趣味がご朱印収集)温泉地を散策しました。 昔は舗装されていなかったので遠く感じましたが、今回は近くて直ぐに着きました。部屋は3階302号室でした。電話予約しましたら8600円は5-6年前の料金で今は9000円でした。五色沼を変更して喜多方でゆっくりして芦ノ牧温泉に行きました。今回はあっちこっちに行かずに意外とノンビリなドライブ旅行でした(走行キロ1450km)又秋頃裏日本辺りに行きたいと思っていますので、後日このブログ拝見して探します(笑) 所でアッチコッチに行かれていますが、車ですか?! 私は何処に行くのもマィカーなので、 兎に角、色々と参考にさせて貰っています。有難う御座います。
Unknown
ジロウさん、こんばんは。ご旅行、お疲れ様でした。
温泉、気に入っていただけたようですね♪ ブログで紹介した者として嬉しく思っております。五色沼ではなく、喜多方経由で芦ノ牧温泉へ行かれたとのことで、やはり車はそうした自由な旅程変更ができるから便利ですね。私も温泉巡りへ出かけるときには自分の車が多いのですが、時刻表や地図とにらめっこしながら鉄道やバスを乗り継ぐ旅も好きですので、時間に余裕のあるときには公共交通機関を使うようにしています。
秋のご旅行でも拙ブログが多少なりともお役に立てば幸いです。