絶景露天風呂として夙に有名な「親谷の湯」ですが、私はいままで一度も訪れたことがありませんでした。なぜなら現地へアクセスする唯一のルートである「白山スーパー林道」の料金がアホみたいに高いから・・・。尤も普段はその通行料金をはるかに上回る散財を繰り返してダラシナイ生活を送っているのですが、わずか33キロの道のりのために3000円以上も支払わなきゃいけないと思うと、どうしても躊躇せざるを得ませんでした。
しかし石川県では昨年に続いて今年も「温泉に泊まって片道無料キャンペーン」を実施しており、某日に宿泊した新岩間温泉「山崎旅館」もそのキャンペーンの対象施設でしたので、チェックアウトの際にスーパー林道を利用する旨を申し上げたところ、宿の方が利用の手順について説明してくださいました。利用者が宿泊施設にて所定の申請書に必要事項を記入しますと、宿側でその申請書に印紙や印鑑を捺してくれますので、利用者は各自で料金所手前の中宮レストハウスへ申請書を持参します。
するとレストハウスで申請書と引き換えに無料通行券を入手することができる、というわけです。少々面倒なのですが、これで3000円が浮くのですから、ありがたいものですね。
通行料金は浮いたものの、あいにくこの日は前線通過により全国的に荒れた天気となってしまい、北陸地方も未明には嵐のような風雨に見舞われ、日中でも冷たい雨が一瞬たりとも途切れること無く降り続きました。
今回の目的地である「親谷の湯」駐車場に到達しても、広い駐車場には私の車がポツンと1台とまっているだけ。紅葉シーズンには混雑するという情報を仕入れていたのですが、わざわざ雨がそぼふる肌寒い時に露天風呂へ入ろうとする奇特な人間なんて、私以外にはいないのでしょう。車から傘を取り出してゲートへと向かいます。
皆様ご存じのように、親谷の湯へは長い階段を下って谷底へ行く必要があるため、わざわざゲートにはストックが用意されていました。これで足腰に自信が無い方でも多少は助かるんじゃないでしょうか。
雨に煙る蛇谷の谷底へ向かって一気に階段を下ってゆきます。秋雨にしっとりと濡れた紅葉も乙じゃありませんか。
ちなみにこの階段に向かって正面の方向へまっすぐ伸びている細い谷が、温泉名の由来となった親谷なんだそうです。
階段の途中の手摺りに括り付けられた案内の内容には我が目を疑いました。足湯や露天風呂に利用している温泉の湧出量が低下してるために、源泉を汲み上げるポンプの運転は土・日・祝のみに限るとのこと。折角平日に休みをとったのに、その苦労は無駄になってしまうのか。とりあえず現地まで行ってみることにしましょう。
階段を下りきるとちょっとした広場となり、そこに立っている道標によると、親谷の湯までは更に川沿いを356m歩いてゆくとのこと。356って、なんて細かい数字だこと。
蛇谷沿いのトレイルを上流へ向かって歩いてゆきます。晴れていたらさぞかし爽快な道なんだろうな。
日本の滝百選に選出されている姥ヶ滝に到着です。一般的な垂直に落ちる滝は高度感がおよぼす迫力に圧倒されますが、この姥ヶ滝は横幅の広い岩肌を滑らかに滑り落ちているので、高度感はもちろんのこと、奥行き、ボリューム感、そしてジュディーオングが「魅せられて」を歌うときのステージ衣装のような、絹糸が谷へ向かって扇状に広がっているような雅やかな姿が非常に美しく、滝を眺めているうち、女性的な魅力で包み込まれているような気分になりました。
滝の前には足湯が設けられており、滝を目の前にしながら足湯を楽しめるという素晴らしいロケーションですね。はぁ、雨が降っていなければ・・・。
足湯の上にはトイレとベンチが設けられたコンクリ造の小屋があり、その一角には更衣用テントまで用意されていました。ステッキといいテントといい、至れり尽くせりじゃないですか。
さて本命の親谷の湯露天風呂へとやってきました。お風呂の前には衝立があって、これが一応の更衣スペースとなっているようですが、屋根は設けられていませんから雨露を凌げるようなものではありません(尤も、雨の時にこんな急峻な渓谷へ足を踏み入れる危ない人は稀でしょうから、屋根を設ける必要なんて無いんですけどね)。
衝立には湯加減調整に関する説明が掲示されており、熱ければ湯口のお湯を竹の樋で外へ逃がしてほしいと書かれていました。
露天風呂も足湯同様に姥が滝を真正面に望む凄いロケーションなんですね。こりゃ誰しも絶賛するのは当然だ。
源泉が出てくる湯口は付近の中宮温泉のような淡黄色に染まっており、土日祝しか揚湯ポンプは運転させないとのことでしたが、チョロチョロながらもその湯口からは熱い源泉が落とされていました。
源泉投入量はチョロチョロで、しかも頻りに雨が降っており、外気温もわずか10.3℃・・・。湯船は水同然なのではないかと、もうこの時点で入浴は諦めていましたが、湯舟の温度を計ってみたら意外にも36.6℃と、ぬるいながらも入れる湯加減でしたので・・・
誰も来ないのを好都合に、足湯上の小屋で全裸になった上で、すっぽんぽんのまま露天風呂まで歩いて入浴してみました。日本屈指の滝を目の前にして湯あみできるこの露天風呂は、たしかに唯一無二の素晴らしい環境でしょうね。でも、何度も繰り返しますが、晴れていれば絶景ですけれども、この時はお湯はぬるい、外気は寒い、冷たい雨が頻りに降っている、滝飛沫がじゃんじゃん掛かって冷たい、という寒冷四拍子が揃っていたため、とてもじゃないが絶景もお風呂も楽しめる状況では無く、たちまち頭痛と悪寒に見舞われたので、非常に残念でしたが今回は早々に撤退となってしまいました。
入るだけが温泉の楽しみではない、見て楽しむ方法だってあるのだ、そう自分に言い聞かせて、体を冷やす水滴を拭って服を身に纏ってから、更に周辺を散策することにしました。露天風呂の周辺には「噴泉塔がある」と書かれた案内が掲示されており、その案内が導く上流の方へと歩いてゆくと、まず谷の対岸に噴泉塔をひとつ発見。
ロープに掴まって川岸へ下りると、こちらがわの岸にも更に噴泉塔をひとつ見つけることができました。岩間の噴泉塔群とは比較にならない小規模なものですが、岩間と違って延々と登山道を歩くことなく、気軽に本物の噴泉塔を見学することができるのですから、多くの観光客にとってはむしろこちらの噴泉塔の方が身近に感じられるのではないでしょうか。
露天風呂へ向かう直前にはこんな分岐があって、ここから川へ下ってゆくと・・・
そこには、現在の露天風呂が供用される以前の昭和59年まで使われていた天然岩風呂がありました。が、昨夜から降り続く雨のために川はすっかり増水しており、普段は熱いお湯を岩から湧出させている岩風呂も、この日ばかりは完全に水没してただの川の一部と化していました。従って今回こちらでの入浴は不可能。
今回は入浴こそ果たせたものの、悪天候のために非常に不本意で残尿感のある訪問となってしまいました。通行料金の高さがどうしても再訪を阻む心理的な障害となってしまいますが、懐と時間に余裕が生まれたら是非再訪して、多くの温泉ファンが味わった感動を私も後追いしたいと思います。
なお、私が訪れた10月下旬、ふくべの大滝から上が紅葉の見頃を迎えていました。この画像はふくべの大滝です。
こちらは大滝の上部、岐阜県との県境付近です。あまりに見事な紅葉だったので、思わずカメラを片手にしながら絶叫しはいました。この記事が投稿される時期ですと、紅葉の盛りは中宮温泉付近まで下りてきているかと思います。
親谷温泉(1号源泉)
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉 99.0℃ pH7.9 73.0L/min(自噴) 溶存物質1.478g/kg 成分総計1.483g/kg
Na+:383.0mg(93.27mval%),
Cl-:290.2mg(44.01mval%), HCO3-:501.1mg(44.12mval%),
H2SiO3:163.3mg,
石川県白山市中宮オ11-2
白山スーパー林道ホームページ
(白山林道石川管理事務所:076-256-7341)
スーパー林道の通行時間でしたら入浴可能(時間に関しては公式HP参照のこと)
無料(でもスーパー林道の通行料金必要)
私の好み:★★★
コメント
Unknown
今年の鬱憤晴らしに来年こそは伺いたいと思ってます!この時期の野湯は湯温が上がってないと厳しいですね!自分も青森の二庄内でサブい思いしました!十和田〇〇の〇の湯の件、早速ありがとうございました!無理言ってすみませんでした!
Unknown
ぱとさん、こんばんは。
>二庄内
あのお湯は夏でもぬるいですから、秋だと身震いすること間違いなしですね(^^)
寒かろうが泥だらけだろうが、どんな野湯にも入っちゃう方がいらっしゃいますけど、到底私には真似できません…。