前回に引き続き北海道の濁川温泉です。今回は国道5号から濁川のカルデラへ上がっていき、まるでウェルカムゲートのように道路の上を横断する地熱発電所の太い配管を潜った先、楓橋を渡ってすぐ右手にある「温泉旅館美完成」で立ち寄り入浴致しました。メインストリートに沿って建つベージュの外壁のお宿で、国道へ近い場所に立地しているため、当地を訪れれば必ず目にするかと想います。
建物の前に聳える源泉塔が象徴的ですね。濁川のカルデラ内では、入浴および宿泊施設に限らず、一般民家や農業などで用いるための源泉塔があちこちに立っており、当地ならではの独特の景観を作り出しています。
玄関を入るとチャイムが鳴り、診療所の窓口のような小窓から奥さんが顔を出して対応してくださいました。お母さんと一緒に顔を覗かせた小さなお子さんが可愛かったなぁ。こちらでは入浴回数券も発売しているそうですから、入浴のみの利用も積極的に受け入れているものと思われます。帳場の小窓の脇にはロッカーが設置されているので、貴重品類はこちらへ預けましょう。
廊下に沿っていくつかの部屋が並んでいますが、そのうち「松の間」は自由に利用できる休憩室となっていました。
まるで湯治場のようなステンレスの共用流し台。
墨痕鮮やかに記されている木板の分析表は昭和37年のもの(平成20年の分析表も一緒に掲示されています)。
廊下には太い鉄管が敷設されていました。触れてみると温かく、配管の先は上述の源泉塔につながっているため、間違いなくここには温泉が流れているはず。浴用以外(たとえば暖房など)で用いられているのかと思います。
脱衣室はとても綺麗で清潔です。室内中央には畳表が張られたベッドサイズの腰掛けが置かれています。
お風呂に対する評価は脱衣室での第一印象が大きく左右するものですが、こちらのお風呂は脱衣室の戸を開けた時点で既に大きなアドバンテージがありました。
「熱いかもしれません でも、あまりうすめない方が!! 源泉100%」
なるほど、熱いんですね。よっしゃ! 心してお湯に臨もうではありませんか。
浴室に一歩足を踏み入れた瞬間、灯油のような鉱物油臭が強く鼻孔を刺激しました。いかにも濁川温泉らしいこの匂いは、私のような油臭中毒者にとってはたまらない芳香でありますが、この手の臭いが苦手な方ですと軽微な頭痛を催すかもしれません。
浴室の左右両側にはシャワー付き混合水栓が3箇所ずつ計6基設置されており、水栓からは沸かし湯が出てきました。
浴室の真ん中には桶や腰掛けがきっちり整理整頓されていました。脱衣室に続いて高ポイント。気持ちよく利用できるお風呂って素晴らしい! スツールをよく見ますと大小の二種類が用意されていることに気づきました。大人と子供で使い分けるってことなのかも。
8人サイズの浴槽は縁に木材が用いられ、内部はタイル貼り。
木組みの湯口から100%の生源泉が加水なしで注がれており、脱衣室内に掲示されていた文言通り、ちょっと熱めの湯加減でしたが、私が実際に入ってみると43℃程度だったように体感したので、温泉めぐりをして熱いお湯入り慣れている方だったら大して問題はないでしょう。お湯はやや暗めにカナリア色に弱く濁り、底が霞んで見える程度の透明度、甘塩味に出汁味と油っぽいような焦げた苦味が混ざり、遅れて舌や口腔粘膜に痺れがじわじわと広がりました。
露天は周囲を模造の竹のエクステリアで囲まれているため、湯船に入っちゃうと景色は全く望めなくなっちゃいますが、立ったままですと塀越しにカルデラ壁の稜線や地熱発電所から立ち上る真っ白な蒸気がよく見えます。四角い浴槽の縁には内湯同様に木材が用いられており、槽内には岩が沈められています。
オーバーフローは建物側へ流れ、その流路は石灰華の中洲を形成していました。
耐熱性塩ビ管の湯口周りにはサンゴのようなトゲトゲが発生していました。お湯は吐出時点で51.2℃でしたが、この日の流量がやや絞り気味であり、また外気による冷却の影響も受けるため・・・
加水なしの状態でも湯船では41.0℃まで下がっており、おかげでいつまでもじっくりと長湯できるコンディションとなっていました。湯船に入ってお湯を両手で掻いてみると、浴槽の材質に依るのか、槽内の岩のためか、あるいは泉質由来か、カナリア色のお湯がターコイズグリーンに見えるときもあり、色の変化やその過程で生まれるグラデーションが不思議で面白く、湯浴みしながら何度もお湯を掻いてしまいました。
今回対応して下さった方は、入館時にお風呂の場所を説明した後、私が浴室へ入室するのを見届けてから帳場の小窓を閉じ、退館時にはお昼時だったにもかかわらず、わざわざ上がり框まで出てきて「お気をつけて…」という気配りの一言を添えながら丁寧にお辞儀してくださいました。浴室のお手入れは行き届いており、お湯の質も良く、その上とてもハートフルな応対をしてくださるんですから、次回利用時には泊まる他ありませんね。天気はあいにくでしたが、体とともに心まで温まりました。ありがとうございました。
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉 56.2℃ pH6.8 190L/min(動力揚湯) 溶存物質2.746g/kg 成分総計3.082g/kg
Na+:499.0mg(68.27mval%), Mg++:40.7mg(10.53mval%), Ca++:97.5mg(15.31mval%),
Cl-:429.5mg(37.78mval%), HCO3-:1208mg(61.78mval%),
H2SiO3:282.7mg, HBO2:121.4mg, CO2:335.5mg,
北海道茅部郡森町字濁川90-3 地図
01374-7-3822
日帰り入浴時間不明(10:00~21:00?) 木曜定休
400円
貴重品用ロッカーあり、シャンプー類・ドライヤー無し
私の好み:★★★
コメント
こんにちは
濁川温泉、エエですね!
今年は、ウイルス騒ぎでなかなか外出しづらいですが、再訪したいものです。
こちらの分析書を取ってありましたら、配信をお願いします。
Unknown
齊藤@群馬さん、こんにちは。
先ほど、メールで送信させていただきました。
よろしくお願いいたします。