日本の地名は大抵の場合、その場所の地理的な特徴を言い表しているものですが、寓話的な語句や神仏を示すフレーズが含まれるケースもあり、地名を通じてその土地の歴史や風土が窺い知れるとともに、その地域に対してお伽話的な情景を想像し、どんな場所なのか知りたくなる好奇心を奮い立ててくれます。お湯の神様と書く秋田県南外村(現大仙市)の湯の神温泉は、さぞかし神々しい温泉が湧出する土地であるかのようなイマジネーションをかきたててくれる名前であり、かつては2~3軒の温泉旅館が営業していましたが、震災後に起きた湧出量や湯温の低下によって2011年に「恵泉荘」が閉館してしまい、現在営業を続けているのは「神湯館」の1軒のみです。今回はそんな「神湯館」で日帰り入浴して参りました。個人的には2009年にも訪れていますので、4年ぶりの再訪となりますが、以前と全く変わっていない佇まいにホッと一安心しました。
スリッパが整然と並べられた玄関からは旅館としての矜持が伝わってきますね。でもこちらを訪れるお客さんの多くは私のように入浴利用を目的としているようでして、上がり框の左手にはセルフでお金を投入する料金箱が置かれていました。こんなスタイルですので、利用の際はお釣りが無いよう予め小銭を用意しておきましょう。この料金箱もユニークでして、語弊を承知で表現すれば、小学生の夏休みの自由工作レベルと申しましょうか、教育テレビ「できるかな」でノッポさんがその場で適当に作ったほうが遥かに上手く完成しそうな感じの、ある意味で味わい深い出来上がりとなっていました。なおこの日はタイミングよく女将さんが出てきてくださったので、女将さんの丁寧な案内に導かれて、正面突き当り右手の浴室へと向かいました。
脱衣室にはプラ籠が置かれている棚があるばかりで至ってシンプルですが、集落の掲示板のような感じで壁にはたくさんの貼り紙が掲示されており、料金のことやら入浴時間やら湯の華のことやら、いろんなことが説明されていました。
水色のタイルが目に鮮やかな浴室も、実にシンプルな造りで実用本位そのもの。室内には浴槽が一つ、そしてその右手前に洗い場があり、水と湯の蛇口のペアが2組取り付けられています。なお洗い場のお湯はおそらく沸かし湯かと思われます。4年前に初めて利用した時には、洗い場に積まれていたたくさんのレモン石鹸に驚いたのですが、この日の洗い場にもレモン石鹸が用意されていました。ガキの頃はレモン石鹸をよく使ったけど、今は滅多にお目にかかれなくなってしまったなぁ…。
窓の外には、長閑でも雄大でもない、思い出そうとしても記憶に残りそうもない、神様なんていそうもない、端的に言えばつまらないジメっと湿った感じの、漠然とした田舎の景色が広がっています。
浴槽は白いタイル貼りで、ステップだけは御影石のプレートが用いられており、容量としては3~4人サイズといったところでしょうか。お湯を供給する塩ビのパイプは浴槽の縁で一旦立ち上がってから槽内の底まで潜っており、その湯口には布が巻かれていて、間欠的にプクプクと泡を上げながら熱めのお湯が吐出されています。
湯船のお湯は白く靄がかかっているように弱く濁っていますが、これはそもそも濁る特徴を有するお湯なのか、あるいはお湯が鈍って濁ってしまっているのか、そのあたりはよくわかりません(なお前回訪問時も同様に弱く濁っていました)。弱い塩味と石膏味、そして微かな芒硝味が感じられますが、匂いはあまり漂っていなかったように記憶しています。一応掛け流しの湯使いのはずですが、先客が大量に湯船のお湯を汲んでしまったらしく、この時の湯船は嵩がちょっと下がっていて、オーバーフローは見られませんでした。
一見すると弱い懸濁と塩味以外には特徴が少なそうなお湯ですが、分析表の数値を全面的に信用するならば、2つのかなり特異なデータが見られるのです。まずひとつはバリウムイオンが多いこと。分析表によれば444.9mgも含まれています。私は不勉強ゆえ日本で最も同イオンが多い温泉を存じ上げておりませんが、拙ブログで掲載している温泉のうち最も多い長野県白馬の「倉下の湯」は175.7mgですから、その2.5倍も含有していることになります。2つ目はストロンチウムイオンも多いことで、こちらは48.0mgと分析表に記載されています。こちらも日本屈指の多さであり、少なくとも東北ではトップクラスではないかと推測されます。
でもこれらのイオンが多いからといって、どんな特徴がお湯に現れるのか分からないのが、おバカな私の悲しいところ。もしかしたら湯の神温泉の神様とは、その稀有な両イオンのことを指しているのかもしれませんが、鈍感かつ無神論者である私は、その神の存在に全く気づくことがなく、両イオンの恩恵を全く感じ取れないまま、なぜレモン石鹸が多いのかということばかりを気にしながら、お風呂から上がってしまいました。
湯神台温泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 44.4℃ pH8.4 湧出量記載なし(動力揚湯) 溶存物質5.07g/kg 成分総計5.07g/kg
Na+:1091mg(61.16mval%), Ca++:447.8mg(28.80mval%), Sr++:48.0mg(1.42mval%), Ba++:444.9mg(8.35mval%),
Cl-:1953mg(72.16mval%), SO4–:986.4mg(26.91mval%),
H2SiO3:56.6mg, HBO2:14.6mg,
秋田県大仙市南外湯神台72-3 地図
0187-74-2468
平日14:00~(土日祝9:00~)20:00 無休
150円
石鹸のみ備え付け有り、タイルなど販売あり
私の好み:★★
コメント
温泉研究家
こんにちは。
相変わらず、熱心に廻ってますね! (^^)
こちらの温泉分析書を撮ってありましたら、配信頂ければ幸いです。
温泉研究家
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齊藤さん
こんにちは。まだHDDに保管してあれば、後ほど送信いたします。今しばらくお待ちください。
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秋田国体の折次女と二人宿泊しました 薙刀種目出場の長女の応援です この時次女は中二位 今で言う登校拒否の状態でした 秋田新幹線こまちに乗って行きました 緑豊かな景色を楽しみ レンタカーで神湯館に到着 ビジネスホテルか観光ホテルしか知らなかった次女は 木造の神湯館に驚き (ゴメン失礼)降車を拒否 仕方なくわたしはチェックインをすませ再び車で途中にポツンとあったコンビニて次女の様子を落ち着かせした 秋田国体で他に宿泊場所はない事をいい聞かせ 再び神湯館に戻ると馴染みの湯治客の中に同じ年くらいの女の子の姿を見つけた次女 その楽しそうな様子に心がほぐれ神湯館の女将さんの笑顔もあり 一夜を過ごす事が出来ました 今は心があれた不登校の時とは違い その時の思い出話しを語っていると
次女がネット検索 「またあるんだ(失礼)」
神湯館を見つけました 不登校の荒れた時期とも重なり常々「子供の心は子ども同士」を実感した善い思い出です ありがとうご在位ました
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三重 たむらさん、コメントをお寄せくださりありがとうございます。神湯館にはお嬢さんとのそんな思い出があったんですね。たしかに慣れない若い子が見ると戸惑ってしまうような外観ですが、それでも人と人との触れ合いによって心が打ち解けあい、プラスの方向へ働いてゆくのですから、旅の邂逅は不思議なものですね。神湯という名前だけに、神様か何かのお導きなのかもしれませんね。
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三重 たむらさん、コメントをお寄せくださりありがとうございます。神湯館にはお嬢さんとのそんな思い出があったんですね。たしかに慣れない若い子が見ると戸惑ってしまうような外観ですが、それでも人と人との触れ合いによって心が打ち解けあい、プラスの方向へ働いてゆくのですから、旅の邂逅は不思議なものですね。神湯という名前だけに、神様か何かのお導きなのかもしれませんね。
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