前回および前々回取り上げた鶴居村の温泉から釧路湿原を北縁を走行して標茶へ向かう途中、再びタンチョウヅルに遭遇しました。今度は群れではなく親子連れでしたが、餌付けされているツルは人を見ても怖がらないようでして、この時は望遠を使わず、接近して親子連れを撮影することができました。飛ばずとも、ただそこにスッと立っているだけで十分に麗美ですね。
そのツル親子を撮影したところから程近いところにある標茶温泉「味幸園」で濃厚なモール泉を堪能してまいりました。こちらは温泉ファンからの評価が高く、施設名をググるとファン達によって多くのレポートが上梓されていることがわかります。以前は旅館として宿泊客を受け入れていましたが、現在は日帰り入浴のみの営業です。国道から800mほど西側に入ったちょっとわかりにくい場所にあるのですが、そのわかりにくさを払拭すべく、要所要所に看板が立っており、建物の屋根上には黄色いパトランプがグルグル回っていました。
周囲にはこれといった民家も見当たらず、こんなところで営業していて本当にお客さんは来るのだろうかと疑問を抱いておりましたが、私が訪れた夕方にはポツポツと車に乗って地元の老人が館内へと吸い込まれていきました。多少奥まった場所でも、お湯が良ければお客さんは利用してくれるんですね。
既に旅館業はやめていますから、カウンターに置かれた券売機は入浴券や基本的な入浴道具を販売するのみ。半分以上のボタンは使われていませんでした。館内にCWニコルのサインを発見。森は温かいけど、お湯は熱いよ。
脱衣室はシンプルな造りで、大きな棚と籠があるばかりですが、扇風機が用意されているので、湯上がりのクールダウンには重宝しました。
お風呂は男女別の内湯のみ。大小の浴槽が左右に分かれて据えられています。訪問時の浴室は湯気とモール泉の香りが朦々と篭っており、ちょっとしたミストサウナ状態でした。部屋の隅っこには公園にあるような水飲み用水栓が設けられており、入浴中の水分補給に役立ちます(でも水栓が古いので飲む気にはなれませんでしたが…)。余談ですが、入浴中には水分補給が欠かせないにもかかわらず、日本のお風呂って、水分補給できる設備を備えたところが少ないような気がします。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が5基並んでおり、お湯をコックを開けると源泉が出てきました。源泉そのまんまのシャワーが浴びれるんですから、モール泉には目がない私にとっては天国も同然です。
浴槽には大小の2つがあり、右側にある大浴槽は7~8人サイズ、獅子の湯口から源泉が吐出されており、浴槽縁の切り欠けから惜しげも無く溢れ出ています。この大浴槽には加水できる水栓が無いため、源泉そのまんまの44~45℃という熱い湯加減となっていました。
一方、浴室の左側にある小浴槽は2~3人サイズで、同じく獅子の湯口から源泉が吐出されていますが、こちらには加水用の蛇口が設けられているため、水で薄めることが可能です。実際に先客のお爺さんは蛇口を全開にしてジャンジャン水で薄めていました。
コーヒー色のお湯は典型的なモール泉であり、芳醇な香りが室内を満たしています。もちろん湯使いは完全掛け流しです。お湯の色が濃いためか、床にはオーバーフローの流路がはっきりと残っています。湯口に置かれたコップで口に含んでみますと、タマゴ味・ほろ苦味・弱金気味がミックスして感じられ、タマゴ臭とアブラ臭を足して2で割ったような芳香とともに弱金気臭と何かが焦げたような匂いが混ぜこぜになって鼻へ抜けていきました。あまりに芳しい香りだったので、自分が飽きるまで延々と匂いを嗅ぎ続けたのですが、その様はほとんどジャンキーであり、仕舞いには匂いでラリってオーバードーズになってしまったのではないかと思うほど、前後不覚のクラクラ状態に陥ってしまいました。匂いのみならず浴感も魅惑的でして、湯船につま先をつけただけでスルリとした感触がわかり、我が身を肩まで湯船に沈めると、ヌル・ツル・スベの3拍子が揃ったモール泉らしい極上の浴感に包まれました。なお湯面には泡が漂っていましたが、室内が暗かったため、肌への気泡の付着は確認できませんでした。
お湯が熱いのであまり長湯できませんが、逆上せてフラフラになっても、湯船から出るのを躊躇ってしまうほど魅惑的な素晴らしい浴感であり、湯船の中のみならず、湯船から上がっても肌のヌルスベ感が残っていたので、嬉しくなって何度も自分の腕を擦ってしまいました。実に効果の高い美人の湯であります。また、脱衣室に上がった私の体は相当火照っていたので、上述の扇風機に助けられたのですが、これまたこちらのお湯の効果なのか、粗熱の抜けが早く、変なベタツキもなく、程よい爽快感と温まりが共存して、なんとも言えない軽やかな感覚に満たされました。本当に素晴らしいお湯ですね。十勝平野に点在するモール泉も良泉揃いですが、濃さや浴感など、お湯の持つ個性で較べると、私はこの標茶温泉をはじめとした釧路湿原周辺の温泉に軍配を上げたくなります。
アルカリ性単純温泉 45.1℃ pH9.2 湧出量未記載(自噴) 溶存物質0.770g/kg 成分総計0.770g/kg
Na+:195.7mg(96.38mval%), NH4+:2.2mg,
Cl-:165.5mg(51.66mval%), OH-:0.3mg, HS-:0.2mg, HCO3-:82.4mg(14.93mval%), CO3–:60.7mg(22.35mval%), BO2-:10.8mg,
H2SiO3:227.1mg,
北海道川上郡標茶町下オソツベツ628
015-485-2482
10:00~22:00(受付21:00まで) 第3木曜定休
400円
備品類なし
私の好み:★★★
コメント
Unknown
こんばんは。作並温泉に来ています。昨日泊まった花巻の藤三旅館から下って来ました。K-I殿が泊まられた時と違い、藤三旅館はかじかの湯が無くなっていました。建物の一部分を新しいものに変えるようです。
Unknown
あんちゃんさん、こんばんは。
花巻温泉郷から作並ですか。東北の湯けむりを楽しんでいらっしゃいますね。藤三旅館の「かじかの湯」は無くなってしまったんですか…。書き込みを頂戴してから私も調べらのですが、昨年に自炊部を解体して、新たな宿泊施設を建てるようですね。さすがに自炊需要は減っているんでしょうね。新しい施設がどのようになるのか、楽しみでもあります。情報ありがとうございました。
Unknown
こんばんは。
以前からずっと訪問してみたかった温泉です。今は日帰り入浴のみなのですね。情報ありがとうございます。
モール泉で熱いというと東鳴子の馬場温泉を思い出しました。私も何故だか手のお湯には弱いんですよね。Mっ気丸出しです(笑)。
今年も登山で北海道には行く予定です。日程的には非常に厳しいですが、このレポを読ませていただき是が非でも行きたくなりました。女満別空港を利用する行程なので訪問できるよう思案中です。
Unknown
しーさんさん、こんばんは。
>モール泉で熱い
私もモール泉が大好きでして、一度浸かったら出られなくなるので、熱いモール系のお風呂に入ると、高い確率で逆上せてフラフラになっちゃいます(笑)。ですので、この手の温泉に入る時には、事前に十二分の水分補給をするよう心がけています。
>登山で北海道
とっても良いですね。私も北の大地で登山したくなりました。どうして北海道って何度行っても魅力が尽きないんでしょう。こちらに限定しなくても、界隈には良いモール系の温泉が点在していますので、無理しない範囲で是非お楽しみください。
Unknown
はじめまして、通りすがりでお邪魔します。
味幸園さんには20年ほど前に、4回(4年連続)泊った事があり、とても懐かしい気持です。
静かで一人旅のライダーにはもってこいの雰囲気、モール泉と部屋食の鹿のすき焼きが楽しみでした。
今年の北海道旅行も釧路起点なので、久しぶりに寄ろうかと思っています。
宿業止めちゃったんですね・・・残念。
Unknown
しっぽなさん、はじめまして。
4年連続でお泊りになったとは、相当お気に召されたのですね♪ あの濃いモール泉は本当に魅惑的ですよね。こちらは数年前に一度休業してしまい、その際に宿泊もやめてしまったようです。現在は日帰り入浴のみですが、営業再開してくれたことは有り難いものです。今年のご旅行の際も、往時のツーリングを想い出して是非湯浴みをお楽しみください。