前回取り上げましたメートー温泉に続いて、Yさんとともにサムーン郡の温泉を巡ります。今度は、露天風呂で白濁の硫黄泉を楽しめる、サムーン川上流域の秘湯「ポーンクワーン温泉(Pongkwao Hot Springs)」を目指します。場所を大雑把に説明すれば、田舎町サムーンの中心部からサムーン川の上流を目指してひたすら一本道を北上すれば良いのですが、道路標識はタイ語のみで、商売っ気がないのか温泉施設の広告や看板なども無く、そのくせ、途中の集落で紛らわしく分岐している箇所が何箇所かあり、また丁字路にも出くわしたりしますので、何も知らずに初見で行こうとすると迷いに迷って途方に暮れること必至です。もし拙ブログをご覧になって訪問をお考えの方は、当記事の下方にGPSコードを掲載しておきましたので、文明の利器に頼った方が宜しいかと思います。私の場合はYさんが道案内して下さったおかげでスムーズに到達できましたが、再度一人で辿り着ける自信はありません。ハンドルを握りながらドライブした記憶を思い出すと、確かに道なりでしたが、途中で迷う丁字路が2箇所あり、最初の丁字路は左へ、2番目の丁字路は右へ曲がったように憶えています。またルート上の道路のほとんどは舗装済みでしたが、ゴール直前の2キロほどは未舗装になり、本当にこの先に温泉リゾートがあるのか不安になるほど狭隘な道が続きます。でも道中は観光客が訪れないであろう山間部の村落や耕作地、そして原生林が続き、その景色はおそらく何十年以上も変貌していないだろうと思われ、おかげでエキゾチックな東南アジアの原風景を目にすることができました。
道のドン詰まりにポーンクワーン温泉(Pongkwao Hot Springs)のゲートがどっしりと構えています。訪問時は偶々ゲートが開いていましたが、普段は牛の侵入を防ぐために閉まっているらしく、もし閉まっていたとしても自分で開けて入場して構わないんだそうです。
こちらはバンコクの潮州系華人が開発した、温泉をメインにしたリゾート施設なのですが、こんなわかりにくくアクセスしにくい秘境に、お客さんなんて来るのだろうかと疑問を抱いたところ、どうやらこちらは会社の研修施設としての側面もあるんだそうでして、それなりに利用する人がいるんだそうです。それだけでなく、新たなコテージを建設中でしたので、今後は本腰を入れて商売っ気を出してゆくのでしょう。なおその新コテージのお風呂には温泉を引くんだそうですよ。
レセプションで料金を支払いますと、引き換えにタオルや湯浴み着を貸与してくれました。この料金というのがクセモノでして、タイではよくある話ですが、タイ人と外国人では料金設定が異なっており、タイ人なら80バーツで済むところ、外国人料金はその倍近い150バーツを求められちゃうのです。私は問答無用で150バーツを請求されましたが、タイに永住なさっているYさんはしっかり交渉してタイ人料金でOKとなりました。
レセプションの奥には川に沿ってコテージ状の湯小屋がいくつも並んでいます。まずレセプション付近の手前右側にあるのは、男女別の大浴場でして、それぞれには前方後円型の浴槽がひとつ据えられており、広く濁ったお湯が張られていました。男女別とはいえタイには全裸で入浴する文化がありませんので、入浴の前には水着(もしくはレセプションで貸与してくれる湯浴み着)に着替える必要があります。この浴槽を目にした刹那は入浴したい欲求に駆られましたが、Yさんが渋い表情を浮かべるので、どうしたものかと浴槽のお湯に手を突っ込んでみると、源泉は常時投入されているものの、浴槽容量に対してその量が少ないのか、あるいは源泉からの隔たりがあって配管設備の保温に難があるのか、かなりぬるくて鈍り気味であり、温泉にうるさい我々日本人には物足りないものでした。従ってここは見学に留めてパスしました。
なお大浴場の裏手には貯湯槽があり、ここにストックされているお湯は40℃以上の適温で、しっかりとイオウ臭を放っていました。そのままのクオリティで浴槽へ注がれたら良いんですけど、そうもいかないんでしょうね。そもそもタイの方は熱いお風呂がイヤでしょうから、むしろぬるくしているのは、意図的な配慮なのかもしれません。
前方後円型のお風呂を後にした私達は、小川に沿って奥へ進みます。その小川の両岸は気持ちのよいガーデンのようになっており、コテージ風の個室風呂棟が左右に並んでいました。
レセプションで入場料を支払えば園内のどのお風呂も使って良いらしく、もちろん個室風呂の利用も可能。個室のドアの脇でさがっている札がEMPTYになっている個室なら、どこでも利用可能です。といっても、各個室は造りこそ同じですが、お湯の質には差異があり、源泉に近い川の上流側の個室ほどお湯の質が良くて温度も高いのです。
そこで今回はYさんが勧めて下さった最も上流に近い右岸側の個室に入ることに。室内には2人サイズの四角い石風呂が一つ据えられ、カーテン付きのシャワーも備え付けられています。画像右(下)の右側に見切れていますが、荷物を置くためのカゴとして、スクーター用の籠を括り付けているのはご愛嬌。
さすがタイ北部の温泉を知り尽くしているYさんが勧めてくださったお風呂だけあり、湯加減は42~3℃という日本人向きの素晴らしいコンディションです。湯口からは45℃近い温泉が注がれており、白濁したお湯の中には白い湯の華がたくさん浮遊しています。加水加温循環消毒なんて手間を経ていない完全掛け流しのお湯です。とっても気持ち良いので記念撮影してみました。
お風呂は内湯ばかりじゃなく、露天風呂だってあるんです。個室風呂棟を通り過ぎると、上流に向かって左手(川の右岸)に、石積みとガラスブロックを組み合わせた塀に囲われた露天風呂がありました。内部は画像をご覧の通りでして、丸い石を敷き詰めたプールサイドに囲われて、水色の大きな浴槽が温泉を湛えています。塀に囲まれているとはいえ、大して高くはないので、周囲の山の自然に抱かれている雰囲気を存分に味わうことができ、露天風呂自体の広さも相俟って、すばらしい開放感と爽快感が楽しめます。
お湯はガネイシャと魚神を合体させたような鋳物(タイの神様に詳しくないので適当な表現になってしまいました。ごめんなさい)から注がれており、その口先は硫黄の付着によって白く染まっていました。槽内のお湯は弱く白濁していますが、個室風呂ほど濁ってはいません。オーバーフローこそ見られないものの、湯面のレベルに排水口があり、そこから常時お湯を排出している完全掛け流しの湯使いです。水素イオン濃度を計測したところpH7.6という中性の数値を示しました。また、お湯を口にすると苦味を伴うイオウ味がはっきりと感じられ、タマゴ臭と火山ガス臭を足して2で割ったような少々刺激のある硫化水素臭が湯口から漂っていました。
外気に触れる影響か、個室風呂より若干ぬるめの41℃前後という温度でしたが、絶妙の長湯仕様でもありますから、Yさんと入浴をご一緒させていただいてお喋りしながら湯浴みしていたら、いつの間にやら1時間を超えていました。それほど気持ち良い露天風呂なんです。
喧騒の都市から遠く離れた、空気の清らかな山奥の秘境で、静寂に包まれながら、南国の緑の目にし、小鳥のさえずりを耳にして、山から吹き下りてくるそよ風を頬に受けながら、掛け流しの硫黄泉に入る。まさに桃源郷で寛いでいる極上の気分です。浮かれ気分になって、ここでも記念撮影。
露天風呂の上流側に隣接しているこの湯小屋は、掛け湯専用の棟です。タイではあまり全身浴する文化が無い代わり、掛け湯をして温泉を楽しむんですね。こちらも男女別に分かれていて、合掌している人形が立っている右側が男性用です。なおここの男女両室はシンメトリーに造られていますので、双方に違いはありません。
室内に入ると、白いタイル貼りの細長い槽に温泉が張られ、いくつかの手桶が備え付けられていました。手桶でお湯を汲んで、立ちながら体にお湯を掛けるわけですね。でも、こんな立派な施設がありながら、使われている形跡があまり見られません。もったいないなぁ。
お湯は槽内の穴から投入されているのですが、先述のお風呂達のお湯に較べ、こちらのお湯は全く濁っておらず、それでいてお湯から放たれるイオウ感はとても明瞭なものでした。園内にある複数のお風呂の中で、この掛け湯棟が源泉に最も近く、露天風呂・個室風呂・大浴場の順で下流側へ隔たってゆくのですが、お湯の鮮度感やイオウ感・温度もこの順に従って劣ってゆくので、源泉からの距離に比例してお湯が劣化・低下していることがよくわかります。
こんな新鮮でイオウ感のはっきりしているお湯を、ただ掛け湯するだけなんてもったいない!ということで…
誰もいないのをいいことに、調子に乗って入っちゃいました。しっかり熱い上に鮮度感が抜群であり、他のお風呂と比べてもここが最も良いコンディションでした。掛け湯なんかにしないで、ここを全身浴用の内湯にすればいいのになぁ…。
敷地の最奥部には源泉井があり、小さな祠とともにいくつかの井戸が目に入ったので、ついでに見学することに。
井戸の中を見ますと、地表面のレベルとほぼ同じ高さでお湯が溜まっていました。一応ネットが被せられているものの、すっかり破れてゴミが浮かんでおり、メンテナンスの不足は否めません。とはいえ、湯船にゴミが入ってくるようなことはなかったので、細かいことは気にしない気楽に湯浴みを愉しめばいいのかな。
私たちが訪問した時には、ヨーロッパ系の観光客が3人、そして台湾人とタイ人の男女4人グループがおり、後者の皆さんは私達と一緒に露天風呂を楽しみました。利用客は水着か湯浴み着を着ているので、一般的なプールと同じように混浴です。日本のような全裸入浴の開放感は味わえませんが、老若男女の隔たりなくみんなで風呂に浸かるならば、水着or湯浴み着を着用した方が良いですね。こんな山奥でも国内のみならず海外からもお客さんが来るのですから、新規にコテージを作って更なる開発を目論むのも、あながちおかしな話ではないのでしょう。また観光客だけではなく、地元の農民の方々も、夕刻になると野良仕事でかいた汗を流すべくこの温泉にやってくるんだそうですから、タイの地にも温泉文化が根付きつつあるのかもしれません。
アクセスに関しては本文を参照。
GPS:19.012909N,98.731531E,
ホームページ
営業時間不明
外国人150バーツ(湯浴み着とバスタオルのレンタル付)
私の好み:★★★
コメント