前回記事の続編です。
夜間はしっかり熟睡。翌朝6時ちょうどに目覚めてカーテンを開けると、既に車窓はぼんやり明るくなっていた。のどかな田園風景の中を快走。私が目覚めて最初に通過した駅はアクシェヒル(Aksehir)駅で6:20頃。既にコンヤ県へ入っているようだ。
私が乗った車両は最後部に連結されていたので、貫通路の窓から後ろへ流れ去ってゆく景色をひたすら眺めることができた。線路の両側に広がる中央アナトリアの果てしない大地には、まだうっすらと朝靄がかかっており、幾分眠たげであった。
朝6:30に食堂車へ行って朝食を求めたが、給仕係のデブッチョなおじさんが座席で鼾をかいており、とても営業できるような状況ではない。その場で立ち止まって逡巡していると、厨房にいた別のスタッフが私に気付いて曰く、列車が1時間遅延しているので営業開始も遅れるよ、とのこと。順調に運行されているのかと思いきや、1時間も遅れていたとは知らなかった。しかも食堂車の営業が遅延に合わせて後ろ倒しされるとは、なんともノンビリしているものだ。
仕方がないので一旦自分の個室に戻り、1時間後に改めて食堂車へ向かうと、まだ給仕のおデブさんはグースカ夢の中であったが、先程対応してくれた厨房スタッフは白衣に着替えており、私に笑顔で合図を送るや、手際よく朝食セットをととのえてくれた。
朝食の内容はチーズ・ハム類・オリーブの実・トマト・キュウリ・ゆでたまご・パンという至ってオーソドックスなもの。たしか10リラ程だったはず(記憶が曖昧)。でも列車の揺れを体に受けつつ車窓を眺めていただく食事の味は格別であり、味自体も決して悪くない。ハチミツやジャムもついてくるので、パンもおいしくいただけた。食後はチャイ(紅茶)でくつろぎのひととき。
朝に食堂車を利用する客は少ないのか、この時の客は私以外にお爺さんが一人だけであった。しばらく待てばコンヤの街に着くのだから、街中の飲食店で安くてしっかりとした食事を摂った方が良いと判断されているのかもしれない。
8時半を過ぎると、車窓が徐々に都市らしくなってきた。気づけば線路には架線柱が立てられている。近郊電車が走っている区間へ入ってきたのだろう。
線路が輻輳しはじめ、列車はスピードを落とし始めた。やがて線路の数はある程度に収束し…
定刻(7:57)より約1時間遅れの8:58にコンヤ駅へ到着した。
この武骨なディーゼル機関車が今回の列車を牽引してくれたわけだ。お疲れ様。
コンヤ駅ホームの上屋に設置された電光掲示の出発案内。隣のホームにはYHT(トルコ国鉄の高速鉄道)が停車しているが、この電光掲示によれば9:00ちょうど発のアンカラ行のようだ(表示の上から2段目)。既に出発時間を1分過ぎていたが、この画像を撮った1分後に発車していった。
夜行列車の乗客は足早に駅の構外へと去ってゆく。列車を一通り撮影し終えた私も、みなさんに遅れてコンヤ駅の外へと出た。
当初の計画ではこの駅前からドルムシュ(行き先が決まっている乗り合いタクシー)で街の中心部へ行き、そこからトラムへ乗り継いでオトガル(バスターミナル)へ向かう予定だったが、1時間遅れている上、まだ体が完全に目覚めておらず、乗り換え自体が億劫に感じられたのので、駅前で待機していたタクシーを利用してオトガルへ直行してもらった。外国のタクシーといえば何かと不安がつきものだが、私が乗ったタクシーの運ちゃんは愛想が良く、きちんとメーターを動かしてくれ、目的地まで最短距離で走ってくれた(私は不安症なので、タクシー乗車中でも地図で位置を確認しないと気が済まない)。
アグレッシヴな運転に身を委ねること約20分。9:30にオトガル(バスターミナル)へ到着した。タクシーは結構飛ばしてくれたが、それでも20分を要しており、駅とオトガルが非常に離れていることに驚いた。ネットの地図で調べたところ、両地点は11km近い隔たりがあるのだ。もし当初の計画通りにドルムシュとトラムを乗り継いでいたら、この次に乗る予定だったバスに間に合わなかったかもしれない。タクシーを選んで結果的に正解であった。
さて私はここから世界遺産カッパドキアの観光拠点となるギョレメ(Göreme)という街へ向かいたい。巨大な円形のターミナル内には、数え切れないほど多くのバス会社が窓口を開いており、しかもあちこちから客寄せの声がかかってくるので、どの会社の窓口にすべきか迷ってしまうのだが、ここでひと呼吸置いて冷静になってから、予めネットで調べておいた大手バス会社であるSÜHA社の窓口へ行ってみると、調べておいた通りに30分後の10:00に出発するカイセリ(Kayseri)行がギョレメでも途中停車するとのことなので、その場で即座にチケットを購入した。運賃は35リラ。
なおトルコには中長距離バス各社の時刻を検索するのに大変便利なneredennereye.com(リンク先は英語版)というサイトがあり、私も今回の旅では大いに活用させてもらったが、大手のキャミル・コチ社(Kâmil Koç)などこのサイトに提携していない会社も多く、SÜHA社もそのひとつであって、実際に”neredennereye.com”でコンヤ・ギョレメ間を調べても、10時発のSÜHA社の便は表示されない。バス路線を検索する際には”neredennereye.com”だけに頼らず、主要な大手バス会社の自社サイトも丁寧に調べた方が良さそうだ。
円形のターミナルは、手前半分がエントランスホールや各社の窓口で、奥側半分がバスの発着場。鉄道なんて比較にならないほど待合ホールには多くの人がおり、その外側の発着場にもたくさんのバスがズラリと並んでいる。トルコの交通の主役がバスであることを実感できる光景だ。
これだけのバスが並んでいると自分の乗るバスがわからなくなってしまいそう。発券窓口では係員のおじさんが「(乗り場は)22番だよ」と念入りに教えてくれた。
これがSÜHA社のカイセリ行。トルコではよく見かけるベンツのバスで、2+2のごく一般的なシート配列だった。7~8割近い乗車率でコンヤを出発。出発して30分ほどで、トルコのバスではお馴染みの車内サービスが開始された。会社によってサービス内容が若干異なるようだが、この時乗ったスーハ社はごく一般的なお菓子と紅茶(もしくはコーヒー)であり、その後ミネラルウォーターの配布も行われた。車内ではWifiも使えるみたい。
列車と同様、車窓には中央アナトリアの大地が果てしなく広がっている。はじめのうちはその雄大さに見惚れていたが、あまりに変化に乏しく何も無いので、次第に眠くなってしまい、いつの間にやら意識を失っていた。コンヤを出てしばらくは青空だったが、東へ進んでゆくにつれて雲行きが怪しくなり…
ギョレメ(Göreme)に着くと本降りの雨に見舞われてしまった。前々日にはパムッカレでも石灰棚を観光しているタイミングだけ雨にやられたが、平素から雨男を自認しているだけあり、ここでも天候には恵まれなかったようだ。なおギョレメ到着は13:40だから、乗車時間は3時間40分である。
ギョレメはカッパドキアの中央部にあたり、街全体が奇岩地帯であるが、当地に関しては余多の方々によって語り尽くされているので、温泉をメインとする拙ブログではカッパドキアに関する言及を控えたい。
なぜ私がカッパドキアへやってきたのか。もちろん誰もが知っている世界遺産の景色を目にすることも目的のひとつだが、当地周辺には温泉が湧いているので、そこでの入浴を果たしたいのだ。というわけで、次回記事でやっと拙ブログの趣旨に戻り、とある温泉を取り上げる。
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