浅虫温泉 宿屋つばき

青森県

 
今回の浅虫における湯めぐりでは、締めくくりとして駅の左斜め前すぐにある「宿屋つばき」へお邪魔することにしました。モダン和風で落ち着いた外観は、あらゆる世代から支持されそうです。玄関の脇には足湯も設けられていました。名前からもわかるように、こちらのお宿は先日拙ブログで取り上げた老舗旅館「椿館」の姉妹宿であり、本館にあたる「椿館」より手軽に宿泊できることをコンセプトにしているんだとか。
「麻蒸湯札」での入浴をお願いしますと、フロントの方は快く受け入れてくださいました。その際に「湯札はフロントへお預けください。お帰りまでにシールを剥がして日付印を捺いておきますので」と言われたのですが、その理由は、木板に貼り付いている湯札のシールを剥がすのに手間がかかるから。そういえば他のお宿でも、帳場の方はシール剥がしに苦労していましたっけ。浅虫温泉に限らず、木工品を台紙代わりになっているシール式温泉手形を導入している温泉地は、大抵シールの剥離に難儀なさっていますよね。手形を帳場で預かって退館時に返却してくれるお宿は、こちらに限らず他のお宿でも偶に遭遇し、温泉ファンの皆さんも同じ様なご経験があるかと存じます。木工品はいかにも「札」という印象を与え、旅の想い出としてお土産かわりにもなるわけですが、実用性ではいまひとつであり、今後はその辺りに創意工夫が求められるのかもしれません。

 
ロビーから伸びる廊下をまっすぐ進んだ先に浴室があるのですが、更にその奥には「まんじゅうふかし」と称する施設や、家族風呂の個室が並んでいました。青森県の「まんじゅうふかし」と言えば酸ヶ湯温泉が有名ですが、皆様御存知のように、まんじゅうとはご当地の方言で女性の大事な箇所を指すわけでして、下腹部を温めて健康を促し、以て子宝に恵まれようという、何ともストレートなネーミングであります。尤も、こちらの「まんじゅうふかし」は酸ヶ湯温泉のそれとはかなり異なっており、温められた岩の上に敷かれた茣蓙に横臥して全身で温熱効果を受ける、いわゆる岩盤浴のような格好で利用するようです。


「まんじゅうふかし」からちょっと戻って浴室の入口へ。女湯には銭湯でお馴染みの「牛乳石鹸」暖簾が掛けられていました。お宿には内湯の他、上述の家族風呂や露天風呂もあるそうですが、立ち寄り入浴で利用できるのは内湯のみです。

 
脱衣室は中小規模の旅館にありがちなコンパクトサイズ。洗面台に向かって籐の椅子が2台置かれています。
前々回取り上げた「辰巳館」では、入浴用のロッカーとして耐火金庫が備え付けられていることに驚かされましたが、何とこちらの宿でもゴツい耐火金庫が据え置かれているではありませんか。浅虫温泉ってこの手の金庫を重用する独特の風習があるのかな。


窓を除けば全面タイル貼りの浴室。壁のオフホワイトと、槽内のスカイブルー、そして浴槽縁の黒御影が、はっきりとしたコントラストを生み出しています。老舗旅館の精神を受け継いでいる室内は、清掃が行き届いていて、清潔感に漲っていました。

 
窓に向かって右側にシャワー付きカランが5基並んでおり、最も脱衣室寄りのカランではお湯が出しっぱなしになっていました。「このカランは止めないでください」と記された札が下がっていますから、配湯の逃がし弁のみたいな役割を果たしているのかもしれません。なおカランから出てくるお湯は温泉水かと思われます。

 
洗い場側の一部が曲線を描く浴槽は、形容の難しい複雑な形状ですが、大雑把に表現すれば逆さL字形で、おおよそ10人サイズでしょうか。壁際の底には碁石が敷き詰められたような、足裏を刺激するための石板が沈められていました。水中ですと浮力がかかるためか、大気中でこの種のものを踏むより、刺激が幾分ソフトになっていたような気がします。

 
ご当地の温泉ファンの皆さんが「ザク型」と称しているドーム状の湯口から、直に触れるのが躊躇われるほど激熱なお湯が投入されていました。館内掲示によれば温度調整のために加水されているとのことですが、私の訪問時は加水されているか否か判別できず、体感で44℃近い熱めの湯加減でしたから、もしかしたらこの時は加水無しの源泉100%だったのかもしれません。多少熱くても濃い状態のお湯に入れるのなら、個人的には大歓迎です。もちろん放流式の湯使いであり、脱衣室寄りの縁からオーバーフローしていました。
なお湯口の表面には硫酸塩の白い析出が付着していますが、先達の温泉ファンの方々がアップなさっている画像と見比べますと、明らかにこびりつきが減っていますので、清掃の一貫として削ぎ落としているのでしょう。
お湯は組合から配湯を受ける共同源泉であり、いかにも浅虫らしい芒硝感と共に弱い石膏感が伝わってきますが、芒硝感の方が優っているように感じられます。スルスベの中に弱い引っ掛かりが混在する浴感であり、無色透明の硫酸塩泉らしい個性がしっかりと現れていました。内湯だけでこちらのお宿を語ることはできませんから、いずれは宿泊して他のお風呂にも入ってみたいものです。なかなか良いお湯でした。

浅虫温泉配湯泉(混合)
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 59.8℃ pH記載なし 溶存物質1.027g/kg 成分総計1.027g/kg
Na+:170.3mg(51.25mval%), Ca++:136.9mg(47.30mval%),
Cl-:145.6mg(28.27mval%), Br-:0.4mg, SO4–:475.0mg(68.02mval%), HCO3-:14.6mg, CO3–:8.1mg,
H2SiO3:68.4mg,
加水あり(温度調整のため)

青い森鉄道・浅虫温泉駅より徒歩1分程(100m)
青森県青森市大字浅虫蛍谷25  地図
017-752-2001
ホームページ

「麻蒸湯札」利用時のみ立ち寄り入浴可能(11:00~16:00, 18:30~20:30)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★

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