福建・広東の旅 その1 厦門ぶらり街歩き

中国

引き続き温泉とは無関係の内容が続きます。あしからず。
前回記事の続きです。

金門島から「小三通」の船に乗って中国大陸の厦門(アモイ。以下厦門と表記)に上陸した私は、まずは大きな荷物を下ろすべく、この晩に予約しているホテルへと向かいました。厦門の街は島になっており、私の乗ったフェリーが着いた五通港は島の東端ですが、ホテルがある街の中心部は島の西部ですから、島を東西に横断しなければなりません。港からは路線バスが使えますが、ひどく混んでいたため、タクシーを捕まえて移動することにしました。
しかし、道路のキャパに対してあきらかに過剰な交通量に加え、道路工事の多さ、悪質な路駐の多さ、割り込みに次ぐ割り込みなどなど交通マナーの悪さも相俟り、金門島からの船が着岸した五通港から街中のホテルまで、直線距離で15kmも無いのに、道中は大渋滞にはまりつづけてなんとタクシーで1時間半もかかってしまいました。私としては、厦門は初めてですが、中国自体には何度も来ており(※)、この混沌と雑然に満ちて何事もスムーズにいかない雰囲気に包まれると、いま自分が中国にいることを実感します。それにしても、同じ中華系の人間によって成り立つ国でも、台湾・香港・シンガポールのようなまともな先進国(地域)と、カオスに満ちた中国大陸では、どうしてこうも違うものかと、小さな島国で生まれ育った私としては不思議でなりません。
(※)余談ですが、我が人生で初めての海外一人旅は、今から約20年前の高校時代に行った北京と上海でした。

●ホテル
 
 
厦門では2泊滞在したのですが、その際にお世話になったホテルは幹線道路の厦禾路に面している「夏商怡翔酒店・華都店」です。リーズナブルな割にはちゃんとしていそうだし、BRT(高架バス)の駅にも近くて立地も悪く無いので、某大手宿泊予約サイトを通じて予約しました。厦門のみならず、中国の都市部には手頃な価格帯のチェーンのビジネスホテルがたくさんありますが、今回は2つ理由があって、そうした安ホテルではなく、敢えて一定以上のレベルのホテルを選択しました。その理由の一つは、当日中に仕上がるランドリーサービスを利用したかったこと。もうひとつの理由はホテル内の旅行会社(あるいはまともなコンシェルジュデスク)を利用したかったことです。なぜホテル内の旅行会社が必要だったかは、次回記事にて申し上げるとして、まずはチェックインを済ませなきゃ。

フロントでは、まだ濡れ場女優だった若き日のあき竹城みたいなお姉さんと、阿佐ヶ谷姉妹の片方みたいなメガネのお姉さんの二人が対応しており、前者はいかにも中国人らしいぶっきらぼうな感じでしたが、後者は穏やかで英語も話せ、2泊の間では何かとこの阿佐ヶ谷姉妹さんのお世話になりました。この方だけでなく、ホテルのスタッフさんは総じて穏やかな対応でした。

 
 
お部屋は広くて綺麗。ウェルカムフルーツもあり、アメニティもひと通り揃っていました。たしかテレビではNHKの国際放送(英語版)が見られたはず。水回りはバスタブこそ無いものの、清潔に保たれており、シャワーの吐出圧力に問題なく、快適に過ごせました。ちなみに温泉はありませんよ。
館内の随所に日本語表記もあり、日本人利用者もそこそこ多いことが窺えますが、海外ではお馴染みというべきか、その日本語には不自然な箇所がいくつか見られ、客室ドアに貼り付けてある避難通路の案内では、「お客様」と表現すべきところを「閣下」ととんでもなく高貴な身分に祀り上げられていたことに思わず笑っちゃいました。おれはデーモン小暮か。

●到着日の夜、中心街へ
 
 
大渋滞の末にようやくホテルまでたどり着くことができましたが、まだ夕食を食べていなかったので、食事と街歩きを兼ねて、厦門の市街中心部である中山路周辺へ出かけることにしました。まずはホテルから徒歩数分のところにある二市駅からBRTに乗車。乗車券の代わりにICチップ入りのトークンを利用するのですが、券売機は見当たらず、窓口は1つか2つしか開いていない上、職員は無愛想。この不便さがいかにも中国らしいところです。地図を見ると思北駅が中山路の最寄り駅らしいので、不機嫌そうな窓口の兄ちゃんに「思北、1個人(シーベイ、イーゴリェン)」と口頭で告げ、運賃がわからないので適当に10元札を差し出したところ、一枚の青いトークンと大量の釣り銭(皺くちゃ紙幣)が返ってきました。
自動改札の感知部分にトークンをタッチさせて入場します。改札前には保安員が常駐していて、大きな荷物を持っている人などに対して、簡単な手荷物検査を実施しています。厦門のBRTでは2013年にガソリンを車内に持ち込んだ輩による爆発事件が発生して多くの犠牲者が出てしますし、厦門に限らず最近は中国各地で物騒な事件が多発していますから、この手の措置は致し方無いところでしょう。
BRTは専用の高架道路を走る路線バスです。私のホテルが面している厦禾路の上を走行しており、渋滞とは無縁の快走で、本数も多いので比較的便利なのですが、ホームには屋根があるのに、階段に屋根が無くて雨晒しだったり、排水が悪くて構内の至る所が水浸しだったり、下りのエスカレーターはあるのに上りが無かったりと、いかにもこの国らしい中途半端な部分も多々見られました。

 
二市から2つ先の思北駅で下車した後は、人通りの多い思明北路を歩いてみます。商店街のような賑やかな通りで、沿道には多種多様な商店がビッシリ。

 
いろんな店がある中でも、ドクターフィッシュ屋さんがなぜか大盛況。
その数軒隣にはマンゴーアイスを売りにしているカフェがあり、軒先のベンチにぬいぐるみを置いて可愛らしさを演出しているのですが、100回くらい洗濯機で洗った後みたいにダランとしていて、なんだか冴えない様子。はっきり言ってダサ&ユル。おそらく台湾で若い子に人気があるような店のコンセプトを真似しているのでしょうけど、センスとしては完全に周回遅れ。でもこの周回遅れ感こそ中国の面白さでもありますね。

 
中国おなじみの剽窃デザインの店舗もたくさん。ナイキを連想させるロゴのスポーツ用品店があったり、日本の報道でもすっかりおなじみになった雑貨チェーン店「メイソウ」があったり…。こうした剽窃の迷走っぷりを見つけて、心のなかでつっこむことが、個人的な中国観光の楽しみのひとつになっています。

 
おなかが減ったので、上画像の綺麗なお店に入ってみることにしました。「過橋米線(过桥米线)」とは鍋にライスヌードルと具を入れて煮込む雲南省の郷土料理ですが、この時は蒸し暑くて鍋を食いたい気分じゃなかったので、店内POPでレコメンドされていた汁なしの米麺を注文することに。底に濃い味のタレが沈んでいますから、食べる前に一旦具をかき混ぜるのですが、麺も具もタレによく絡んで意外と美味く、しかも安かったので、結果的に満足でした。

 
 
街路を歩いているうち、コロニアル様式を思わせる綺羅びやかな洋風の街区にたどり着きました。
どうやらこの辺りがアモイ屈指の観光名所且つショッピングの中心である中山路のようです。

 
中山路のお店の中でも個人的に関心が惹かれたのは「厦物商行」という地域産品をメインに扱ったお店。店内は落ち着いた雰囲気で、商品陳列も綺麗でおしゃれ。店員の対応も(中国では珍しく)スマイルを浮かべてきちっとしていました。

 
その並びにあるミルクティーカフェで、テイクアウトのティーラテを頼んでみましたが、味はまぁまぁ。紙カップの猫のキャラが全然可愛くない…。

 
雨脚が強くなってきたので、ホテルへと戻ることにしました。同じ道を戻るのは退屈なので、敢えて裏路地に入り、怪しげで淫靡な街の空気にも触れておきました(遊んではいません。ただ通過しただけです)。途中でものすごいタイトミニ&胸まわり強調スタイルのお姉さんと何人も擦れ違い、その妖艶な姿に目を奪われていたら、段差に躓いて思いっきりコケてしまったことは、ここだけの秘密です。
ホテルの部屋で寛ぐべく、ホテル近くの売店(コンビニみたいなお店)で缶ビールとおつまみを購入。アタリメの袋には「真の味 良質それなり風味」と怪しい日本語が記されていましたが、実際に口にしてみたら本当にそれなりの風味でした。中国もたまには正直なことを言うんですね。

●2日目の夜

アモイ2日目は朝から晩まで一日中郊外を観光していました。その様子は次回以降の記事で述べさせていただくとしまして、ここからはそのツアーから戻ってきた晩のことを簡単に紹介させていただきます。この日の晩は火車站(厦門の鉄道駅)付近を散策してみることに。付近には中国の経済成長を象徴するかのような高層建築がたくさん。

 

旅行出発前の情報によれば、厦門の鉄道駅は工事のため閉鎖中とのことでしたが、実際に行ってみますと、まだターミナルビルなどの工事は行われているものの、駅としての機能は再開されており、到着列車に乗ってきた大量のお客さんが、リニューアルオープンしたばかり改札からドッと溢れ出ていました。
この新しい厦門駅にかぎらず、最近の中国の公共施設に共通して言えることですが、新しくて綺麗なことは確かなんですけど、6~7割の完成度で満足しちゃっているため、無駄にデカいばかりで利便性が悪かったり、中途半端な工事の跡が残っていたり、でかい割に必要最低限な設備が欠けていたり、広すぎて恐ろしいほどの空虚感に覆われていたりと、一言で言えば勿体無い設備が多い気がします。

 
火車站(鉄道駅)と厦禾路を挟んだ向かいにある梧村バスターミナルにも立ち寄ってみることにしました。厦門の島内には長距離路線が発着する大きなバスターミナルが3つあり、この梧村バスターミナルはその1つです。と言ってもバスに乗るためではなく、その地下に広がる広大な地下街を散策することが目的です(この日も雨が降っていたので、地上の散策は諦めました)。地上階には私達にもおなじみのチェーン店が並んでいますが…

 
地下には食品関係やアパレル等など、あらゆるジャンルの店舗が延々と続いており、ウィンドウショッピングするだけでも結構おもしろく、見るだけでは飽き足らずTシャツや靴下など数点を買ってしまいました。
前夜の思明北路と同じくこの地下街にも、いまや破竹の勢いで中国各地に店舗数を増やし続けている、(ユニクロ+ダイソー+無印)÷3をしたような雑貨店「メイソウ(名創優品)」があったので、どんなお店か入ってみることに。
白基調の店内は明るく整然としており(「ユニクロ」的)、生活用品から家電、コスメ、アパレルなど多くのジャンルの商品を取り扱っているのですが(「無印良品」的)、総じてレディース向けの小物が多いような気がします。既に日本のメディアでも報じられているように、装飾やPOPなどで日本品質であることが強調されており、中国語とともに日本語のコピーも併記されているのですが、その日本語がちょっと不自然であり、「てにをは」を使いこなせていない留学生レベルです。各商品の価格設定は、日本のダイソーのような均一価格ではなく、商品によって10元・20元・30元といったように分かれていますが、それ以上の細かな設定は無く、いずれの商品も10や20などのわかりやすいポッキリ価格でおさまっていました。


店内を冷やかすだけではつまらないので、実際に数点買ってみることにしました。今回選んだのは2種類のイヤホンとハサミ。いずれも1つ10元(200円弱)という驚きの安さです。なお会計時に商品を袋に入れてくれませんので、買い物をするときはバッグの用意が欠かせません。レジに掲示されている案内曰く、低価格を実現するため袋を用意していないとのこと。
イヤホンは、パッケージも商品デザインとしても決して悪くなく、音質も安物にしてはそこそこ。一方、ハサミは数回使っているうちに、徐々に噛み合わせが悪くなってゆき、既に「不燃ごみ」として私の手元から消えております…。


(上画像クリックで拡大)
注目すべきはパッケージの裏面です。包装に印刷されている説明類は日本語(しかも不自然な言葉使い)なのですが、その上から中国語のシールを貼って販売しています。つまり、メイソウの商品は元来すべて日本向けに開発販売されているものであり、それを中国に持ってきて販売しているんだ(舶来品的なイメージ)、だから信頼できる品質なんだ、という小芝居を打っているわけですね。ただ、完全な嘘をつくと各方面からつっこまれてしまうためか、言い訳として「産地広東 Made in China」という文字が微細ながらも表記されていました。
また、店名やパッケージの表面に記されているロゴは「メイソウ」ですが、パッケージ裏のロゴは”MINISO”となっており、どちらが正しいブランド名なのか判然としない点もツッコミたくなるところです。

あ、そうそう、イヤホンやハサミの他、スマホ用のUSB接続ポータブルバッテリー(わずか30元=600円弱)も購入し、帰国後にムカツク上司へお土産として差し上げておきました。中国製のモバイル機器用バッテリーは爆発事故が多発していますから、私が差し上げたバッテリーも、きっと今頃爆発しているに違いありません。ざまぁーみやがれ(←悪魔のささやき)

 
この日の夕食は地下街で見つけた「牛肉麺康師傅」という牛肉麺専門店で、店名にもなっている牛肉麺をいただきました。康師傅といえば台湾でその名を見ない日は無いほど有名な食品メーカーであり、特に中華圏におけるカップラーメンの売上は圧倒的なシェアを誇っていますが、大陸ではここのように牛肉麺に特化したファストフード店を展開しているみたいです。私ですら名前の知っている企業のお店だから、味もサービスも無難だろうと思って入ったのですが、案の定というべきか、店内はそこそこ綺麗で、味もなかなか美味。一人旅におけるファストフードチェーン店の存在の有り難さが身にしみました。

 
飲食店が並ぶエリアのパン屋さんでは、閉店間際の割引セールをやっていたので、夜食用のパンを購入しました。このパン屋さんは商品名がユニークで、たとえばチーズたっぷりで山の形をしたパンの名前は「富士山」、洋梨をパンで包んで上にアーモンドスライスをたくさん載せたパンは「パリスヒルトン」といった感じ。なぜパリスヒルトンなのかは不明です。味を一言で言えば、どれもボソボソしていて美味しくなかった…。

次回に続く

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