※残念ながら2019年6月に閉店しました。
仙石原へ出かけたついでに、以前から気になっていた宮城野温泉「勘太郎の湯」にも立ち寄ってみました。私が訪れたのは、箱根山の噴火警戒レベルが3に上げられた2015年の6月下旬。夕方だというのにピロティ式の駐車場には車が止まっておらず、館内は閑散としており、後述するお風呂では終始独占できてしまいました。それだけ火山活動の活発化に伴う各種規制は、箱根の主要産業である観光業に甚大な影響を与えたのでしょう。その影響もあってか、私が訪れた約2ヶ月後の昨年9月には営業形態が変わり、料金が1000円から800円へ値下げされ、食堂営業もやめてしまったんだとか(その代わり持ち込みは自由になったんだそうです)。
脱衣室はそこそこ広く、空調も効いており、棚や洗面台の数も多くて使い勝手良好です。箱根にしては珍しくコインロッカーは100円玉のリターン式ですので、実質無料で使えます。箱根・伊豆エリアの温泉では有料のロッカーが大多数ですので、これは良心的かもしれませんね。
●内湯
まずは内湯から。ガラスを多用している浴室は明るく開放的で、手入れもよく行き届いており、気持ちよく使えました。
洗い場に並んでいるシャワー付きカランは5基。脱衣室や浴室の広さから推測するに、相当の大人数利用を想定している施設かと思われますが、週末の混雑時は果たして5基だけで間に合うのか、洗い場の空き待ちが発生するのではないかと、余計な心配を焼いてしまいました。吐出圧力が弱いので、せっかちな私はちょっとイライラしちゃいましたが、館内説明によれば、カランから出てくるお湯は源泉を使用とのこと。そう言われたら確かに水道水の沸し湯とは違うような気がしますし、言われなければ源泉のお湯だと気づかないでしょうし、ちょっと微妙な感じ・・・。
ガラス窓に面して主浴槽が長く横たわっています。館内表示によれば加水・循環・消毒が実施されており、状況に応じて加温も行われているとのこと。実際に槽内で強力にお湯が吸い込まれており、オーバーフローは一切見られず、循環されたお湯が吐出口から供給されていました。
消毒臭こそ気にならなかったものの、手の加えられたお湯は個性が失われてしまい、実際に湯船に浸かってみても、これといった温泉らしい特徴は感じ取れません。でも露天風呂に近いところに設けられた筧から落とされているお湯は直に触れないほどの激熱であり、微塩味やわずかな石膏感が得られたので、おそらく生源泉かと思われます。ということは、どうやら循環のみならず、生源泉も併行して投入されているのでしょう。
私が内湯の中で最も浴感が良いと感じ取ったのは、浴室出入り口付近に設けられた円形の掛け湯(上がり湯)。手桶がたくさん置かれたこのお湯には、どうやら源泉が使われているらしく、しかも掛け流しのようなのです。
なお、この掛け湯の前に位置する主浴槽の端っこは、円形の槽になっており、ジェットバス装置が稼働していました。
●露天岩風呂
つづいて露天風呂へ。竹垣と女湯露天に挟まれた細長い空間に、東屋で覆われている岩風呂が設けられており、その縁で石造りのカエルが湯浴み客を見守っていました。直線的な下顎の顔立ちは、カエルというより「サザエさん」のアナゴくんみたいであり、決して青空球児好児の「ゲロゲーロ」を連想させるものではありません。内湯同様、こちらのお湯も加水循環消毒が行われており、オーバーフローは一切ありません。
露天の湯口は2つあり、溶岩のような黒い多孔質の岩から出ているお湯は、カルキ臭を強く放つ循環湯なのですが、竹の筧から落とされるお湯は直に触れないほどの激熱で、内湯と同じくこれも多分源泉のお湯なのかと思われます。ろ過されていない生源泉だからか、筧の直下やそのまわりは、うっすらと赤茶けていました。
正直なところ、この内湯と露天では加水循環消毒されていることを事前に知っていたので、この2つだけでしたら、私はわざわざこのお風呂へ立ち寄りません。本当の目的はこの先にあるのです・・・。
●露天大理石風呂
露天岩風呂の最奧には、源泉のお湯がかけ流されている「露天大理石風呂」があり、これが私のお目当てなのでした。でもこのお風呂は一つしかないので、日によって男女交代制となっており、奇数日は女湯、偶数日は男湯という感じで使い分けられています。もちろん私は偶数日であることを確認の上で、訪れたのでした。出入口には扉が設けられており、日によって施錠できるようになっていました。秘密の小部屋に忍び込むようなワクワク感を抱きながら、クランク状の出入口を抜けて奥へと入ると・・・
男女別の露天岩風呂は和の趣きでしたが、板塀を一枚隔てた向こう側は、このように洋風の誂えになっており、急に別施設に迷い込んでしまったかのような錯覚に陥りました。とても同じ施設とは思えない統一性の無さは、ある意味で中小民間施設らしい特徴なのかもしれません。
ヨーロッパのお屋敷の中庭に設けられた噴水広場のような空間に、丸い浴槽がひとつ据えられており、その奥に立ちはだかるレンガの壁では、冷水がしたたり落ちる飾りが施されていました。はじめにその形状を目にした時には足湯かと思ったのですが、実際に足を突っ込んだところ、あまりの冷たさにビックリして、つい「ギャー」と叫んでしまいました。あぁ、情けない・・・。
丸い浴槽は完全な円形ではなく、上と下をスパっと直線状に切り取ったような形状をしています。大理石風呂という名称ですが、実際に大理石が用いられているのは円形の縁取りだけで、槽内はカラフルなタイルが用いられていました。
御影石の湯口からは源泉のお湯が注がれており、直に触ると火傷しちゃうほど熱い時もあれば、適温に下がることもあり、またしっかりした量が流れてくることもあれば、チョロチョロと量が絞られることもあったりと、湯船の状況に応じて加水の有無や投入量が自動的にコントロールされているようでした。上述のように、この日はお客さんが少なかったためか、湯船に湯鈍りは発生しておらず、浴槽内にはクリアに澄み切ったお湯が張られていました。
館内表示の通り、加温循環消毒は行われていない放流式の湯使いで間違いないようであり、常時縁の下の隙間からオーバーフローしているほか、私が湯船に入ると縁の上を越えて溢れ出てゆくお湯の流れも生まれました。
お湯は無色澄明で微塩味と仄かな石膏感があり、湯口のみでほんの僅かにミシン油臭も嗅ぎとれました。湯船に浸かった時の浴感は、内湯や露天岩風呂と比べてはるかに優れており、シルクの肌触りのようなとてもきめ細かい感触と、食塩泉らしい滑らかでトロミのある浴感がしっかりと楽しめました。でもこのお湯の浴感はかなりデリケートなものであり、循環などの手を加えたら忽ち喪失してしまうことは必至。それゆえ、この源泉の個性を楽しむならば、この大理石風呂でないといけません。
箱根の温泉入浴施設はどこも料金設定が高いのですが、こちらでは昨年秋に値下げを実施し、更に公式サイトのクーポンを活用することによって700円で利用できるようになりましたから、少なくとも箱根という限定されたエリアで考えれば、比較的コストパフォーマンスの良い施設と言えるでしょう。源泉の良さがわかる大理石風呂はひとつしかないため、カップルや家族連れで訪れると、かならず男女のどちらかがお湯の本来の良さを味わえない事態になってしまいますが、宮ノ下から仙石原、そして御殿場へ抜ける便利なルートの途中にありますから、都合が合えば立ち寄ってみるのも良いかもしれません。
宮城野第129号
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 84.5℃ pH8.6 溶存物質1.521g/kg 成分総計1.521g/kg
Na+:392mg, Ca++:115mg,
Cl-:617mg, Br-:1.23mg, SO4–:247mg, HCO3-:24.8mg,
H2SiO3:80.9mg, HBO2:22.1mg,
(平成26年7月23日)
内湯および露天岩風呂:加水あり・加温あり(季節等による)・循環ろ過あり・消毒あり
露天大理石風呂:加水あり、加温循環ろ過消毒なし
箱根登山バスの桃源台線で「宮城野」下車、徒歩2分
神奈川県足柄下郡箱根町宮城野923
0460-82-4477
ホームページ
※残念ながら2019年6月に閉店しました。
平日11:00~19:00、土日祝10:00~20:00、金曜定休
800円(公式サイトに100円引のクーポンあり)
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★
コメント
Unknown
いつも緻密なレポートに敬服しつつ、興味深く拝見しております。
こちらの施設ですが、先日訪問したところ閉店しており、たまたま居合わせた工事業者さんが、今年2019年の6月に閉店した事を教えて下さいました。
記事を拝見し、行く機会を窺っていましたが、行けずに終わってしまった事が残念です。
Unknown
いつも緻密なレポートに敬服しつつ、興味深く拝見しております。
こちらの施設ですが、先日訪問したところ閉店しており、たまたま居合わせた工事業者さんが、今年2019年の6月に閉店した事を教えて下さいました。
記事を拝見し、行く機会を窺っていましたが、行けずに終わってしまった事が残念です。
Unknown
いつも緻密なレポートに敬服しつつ、興味深く拝見しております。
こちらの施設ですが、先日訪問したところ閉店しており、たまたま居合わせた工事業者さんが、今年2019年の6月に閉店した事を教えて下さいました。
記事を拝見し、行く機会を窺っていましたが、行けずに終わってしまった事が残念です。
Unknown
れぶるさん、こんにちは。
今年の6月に閉店してしまったんですね。私もネットで調べたところ、建物の老朽化がその理由とのことでした。とても残念です。後程、その点について記事を加筆致します。
お知らせくださりありがとうございます。
Unknown
れぶるさん、こんにちは。
今年の6月に閉店してしまったんですね。私もネットで調べたところ、建物の老朽化がその理由とのことでした。とても残念です。後程、その点について記事を加筆致します。
お知らせくださりありがとうございます。
Unknown
れぶるさん、こんにちは。
今年の6月に閉店してしまったんですね。私もネットで調べたところ、建物の老朽化がその理由とのことでした。とても残念です。後程、その点について記事を加筆致します。
お知らせくださりありがとうございます。
Unknown
勘太郎の湯を検索してこちら拝見しました。
昨年3月から強羅で働くようになった私のオアシスでした。
常連になる前に閉店とのことでカウンターにいらしたご主人に「ショックです。。」と告げたらスタンプおまけしてくださいました。
本当に残念です。。。
Unknown
勘太郎の湯を検索してこちら拝見しました。
昨年3月から強羅で働くようになった私のオアシスでした。
常連になる前に閉店とのことでカウンターにいらしたご主人に「ショックです。。」と告げたらスタンプおまけしてくださいました。
本当に残念です。。。
Unknown
勘太郎の湯を検索してこちら拝見しました。
昨年3月から強羅で働くようになった私のオアシスでした。
常連になる前に閉店とのことでカウンターにいらしたご主人に「ショックです。。」と告げたらスタンプおまけしてくださいました。
本当に残念です。。。
Unknown
かなさん、こんばんは。
せっかく通いはじめたところで、閉店になってしまったのですね。残念です。箱根観光のメインルートから外れているので比較的落ち着いて入浴できましたが、それが仇になったのかもしれませんね。コロナ禍の前の箱根はインバウンドで大盛況でしたが、一様に賑わったわけではなく、むしろ陽と陰がはっきりしてしまい、恩恵にあずかれなかった施設も多く、そんな様を目にすると複雑な心境になります。強羅でのお仕事、頑張ってください。
Unknown
かなさん、こんばんは。
せっかく通いはじめたところで、閉店になってしまったのですね。残念です。箱根観光のメインルートから外れているので比較的落ち着いて入浴できましたが、それが仇になったのかもしれませんね。コロナ禍の前の箱根はインバウンドで大盛況でしたが、一様に賑わったわけではなく、むしろ陽と陰がはっきりしてしまい、恩恵にあずかれなかった施設も多く、そんな様を目にすると複雑な心境になります。強羅でのお仕事、頑張ってください。
Unknown
かなさん、こんばんは。
せっかく通いはじめたところで、閉店になってしまったのですね。残念です。箱根観光のメインルートから外れているので比較的落ち着いて入浴できましたが、それが仇になったのかもしれませんね。コロナ禍の前の箱根はインバウンドで大盛況でしたが、一様に賑わったわけではなく、むしろ陽と陰がはっきりしてしまい、恩恵にあずかれなかった施設も多く、そんな様を目にすると複雑な心境になります。強羅でのお仕事、頑張ってください。