高雄の哈瑪星鉄道文化園区で貨車に乗る

台湾

(2025年5月訪問)
鉄道マニアは乗り鉄・音鉄・撮り鉄・切符鉄・葬式鉄など志向ジャンルによって細分化されるそうですが、強いて言うなら私は貨物鉄なのかもしれません。貨物列車についての知識はちっとも無いのですが、とはいえ、目の前を貨物列車が通り過ぎた時はもちろん、工業地帯でプラントの敷地内へ伸びる貨物専用の線路を見ただけでもワクワクしてしまい、昔ながらの車扱貨物が高頻度に運転される秩父鉄道なんて私にとっては鼻血が出ちゃいそうになるほど興奮します。
台湾ではいまでも様々な形態の貨物列車が運転されていますが、高雄市臨港部の旧高雄港駅構内にある「哈瑪星鉄道文化園区」では、現役を退いた貨車が2024年から観光列車として客を乗せて動いているらしいので、貨物列車が大好きな私もその貨車に乗るべく現地へ向かうことにしました。

広大な貨物ヤードだった旧高雄港駅構内の敷地は、線路を残したまま緑化され、市民憩いの場として、またアートやイベントの場として開放されています。日本でこんな広大な敷地があったら、容赦なく歴史的建築物を破壊して再開発のビルを建て、他所と同じようなつまらない商業施設へ変貌させてしまうこと必至なのですが、敢えて何も建てずにその地の歴史を残しつつ市民に開放するという台湾の発想は非常に素晴らしく、文化に対する理解や生活意識の高さが伝わってきます。

当地には高雄捷運橘線や環状軽軌(ライトレール)の哈瑪星駅からアクセスできますが、中でも環状軽軌の哈瑪星駅は旧高雄港駅構内の線路敷を活用して設置されているため、電車のホームと「哈瑪星鉄道文化園区」が同じ場所という至極便利な立地です。上画像は、環状軽軌の乗り場(画像左側)と並行に配置されている静態保存のSLと、これから乗る貨車を牽引する黄色いディーゼル機関車です。なおCT259蒸気機関車は日本統治時代の昭和16年に導入されたもので、日本時代の型式はC55の9号機でした。線路の幅も日本のJR(旧国鉄)と同じく3フィート6インチ(1067mm)です。

貨車で組成された観光列車の名前は「哈瑪星号」。こちらでチケットを購入します。毎週末(土日)と祝日の10:00~17:30(日によって18:00)の間で、30分毎に運転されます(12:00, 12:30, 13:00は昼休みのため運転無し)。乗車区間はこの場所から数百メートル先の折り返し地点までを往復します。料金は99元です(web購入も可能)。

プラットホームの屋根に提げられた「打狗 1900」「高雄 1920」「高雄港 1941」は、この駅が開業から経てきた旧称と駅名設定年を示しています。つまり1900年に打狗駅として開業し、1920年には高雄駅へ改称され、さらにその21年後には高雄港駅になって、2008年の廃止までその駅名が使われ続けました。ちなみに、高雄の古称である打狗はダーガウと発音するのですが、狗を打つという字面は宜しくないということで、当時の日本(台湾総督府)が日本語読みで同じような発音の字を宛てて「高雄」という地名にしました。

こちらが「哈瑪星号」の全景です。無蓋車1両と車掌車2両を、濃いめの黄色で塗装された入れ替え用ディーゼル機関車が前後で挟み込む計5両の編成です。このうち、客が乗れるのは無蓋車と車掌車のうち1両の計2両です。
往路は上画像の左側へ向かって走り出します。

こちらは復路の際に先頭となる機関車です。前後で形状の異なる機関車が連結されているわけですね。

乗車できる無蓋車の内部には、枕木のような木材と鉄パイプを組み合わせて作られた、武骨な感じの腰掛が設けられています。古い貨車独特の質感や雰囲気を活かすため、わざと武骨な造りにしているのでしょう。
こちらは車掌車の内部。こちらは現役時代に近い雰囲気を残しているものと思われます。

往路で先頭に立つ機関車は、出発時間ギリギリまでバッテリー式のファンでエンジン室に風を送られていました。おそらく古い機関車ゆえに、ラジエーターの冷却機能が落ちてしまい、エンジン室に風が入り込まない停車中はオーバーヒートしやすいのかもしれません。

お客さんを乗せた「哈瑪星号」は、係員は振る白い手旗の合図により、タイフォンを軽く鳴らしながら定時に出発です。片道わずか5分の短い旅なので、私は無蓋車に乗って出発から到着までの前面展望を動画撮影しました。
ジョギングとほぼ同じゆっくりとしたスピードで、かつて貨物列車が頻繁に行き来した線路をのんびり走行します。旅客用の車両と異なりサスペンションが必要最低限のものなので、低速度とはいえ線路から上がってくる振動や走行音がしっかりと伝わってきます。
途中、ライムグリーンに塗られた信号扱所では、やはり白い手旗を動かしながら、若いスタッフさんがこちらへ手を振ってくれました。

まもなく折り返し地点に到着です。

ここが折り返し地点の「打狗1900駅」です。ちょうど軽軌の「壽山公園」駅のすぐ手前に位置しています。折り返し地点では車両の外へ降りることも可能です。

私は復路で車掌車に乗ってみました。ちなみに私が車掌車に乗るのはこれが2回目で、初めての乗車体験は北海道の「SL冬の湿原号」でした。

公園の園内で復路を走行する「哈瑪星号」を撮影しました。いかにゆっくり走っているか、おわかりいただけるかと思います。
この日は天気に恵まれ、とっても気持ち良く「哈瑪星号」に乗車することができました。

乗車体験後は園内を散策してみることに。広いヤード跡にはたくさんの車両が保存されています。この長物車や有蓋車には大きなバナナが載せられていますね。かつて高雄港の香蕉碼頭(バナナ埠頭)では、その名前の通り台湾バナナが輸出されていたので、その歴史にちなんで保存貨車に大きなバナナを載せてアートっぽく表現しているのでしょう。いまや世界最先端の半導体大国となって一人当たりGDPも日本を上回っている台湾ですが、かつてはバナナや砂糖などの一次産品で外貨を稼いでいた歴史があるわけで、この旧高雄港駅周辺エリアにはそんな歴史がギュッと詰まっています。

こちらのホッパー車はタラップに上がって内部を見ることができます。実際に上がってみたら、グレーの小さなゴムボールみたいなものがたくさん詰め込まれていました。このホッパー車は現役時代に砂利を積載していたかと思われるので、その砂利を再現しているのでしょう。

同じく園内に保存されているこちらのディーゼル特急車両は、小洒落たジェラート屋さんに改造されています。5月とはいえ高雄は既に夏の暑さで、園内を散策していたら冷たいものが無性に欲しくなり、たまらずこの車両に入って胡麻ジェラートをいただきました。とっても美味でしたよ。

広大な旧高雄港駅を含む哈瑪星エリア一帯は、私のような鉄ちゃんはもちろん、景観・アート・ショッピング・グルメ・・・いろんなものが集まっており、どのような方にもきっと満足できる場所かと思いますので、高雄へお越しの際は是非一度足をお運びください。

 

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