鳴子温泉 旅館すがわら その1 宿泊・大浴場「摩天の湯」

宮城県

 
昨年秋の某日、鳴子温泉の車湯にある「旅館すがわら」で一泊しました。私は自分の車で伺ったのですが、こちらのお宿がある場所は「車湯」バス停の真ん前ですから、仙台発鳴子温泉行の高速バスや古川発の路線バス(土日運休)でアクセスする場合にはとても便利かと思います。

 
1階の半分ほどはピロティ式の駐車場になっていおり、玄関もその駐車場に面しています。お宿の名前が入った行灯の脇には小さな温泉槽が設けられているのですが、これって温泉卵をつくるためのもののかな?

 

フロントやロビー・ラウンジは、鳴子こけしや囲炉裏などみちのくらしいウッディな民芸調の装飾で統一されています。静かで落ち着ける雰囲気でしたので、湯上がりなどにこちらへお邪魔し、宿泊者専用のコーヒーを飲みながら新聞をめくって、のんびりさせていただきました。

●客室・夕食・朝食
 
今回はちょっと安いプランで予約しました。案内されたお部屋は8畳の和室で、トイレこそ共用ですが、綺麗にお手入れされている室内には洗面台があり、またテレビ・冷蔵庫・エアコンなどもひと通り揃ってますので、とても快適に過ごすことができました。

 
2食付きで9,000円未満というリーズナブルなプランにもかかわらず、お食事はお部屋出しですし、しかも品揃えが多いので、目の前に出されたお膳を目にし、客という立場を忘れてちょっと恐縮してしまいました。上画像は夕食です。ね、なかなか豪華でしょ。ちゃんとお品書きも用意されているんですよ。持ち帰ったその品書きを平たい表現でここに列挙してみますと、食前酒、ホタテの小鉢、穴子などの前菜、鱧のお吸い物、炙りサーモン、三陸産の蒸しホヤ、つみれ梅肉揚げ、冷鉢、伊達桜ポークの鍋、雲丹のお吸い物、お蕎麦、そして食後の甘味、というラインナップであります。もちろんいずれも美味でしたから、箸が止まることはありませんでした。


こちらは朝食。ご覧のように豆乳鍋のほか、焼き魚、温泉卵、山芋など、彩り豊かで品数豊富です。日本旅館の朝ご飯らしい体に優しい献立であり、大変美味しいので、気づけばすべてのお皿や小鉢を空にしていました。おかげさまで1日の英気をたっぷりを養うことができました。


上画像は翌朝に客室前の廊下から中庭を眺めた様子です。池の中心に建てられている東屋のような小屋は足湯です。

●大浴場「摩天の湯」

「旅館すがわら」はお風呂天国。館内にはなんと9つものお風呂があるのです。具体的には、大浴場「摩天の湯」の内湯と露天、第2の大浴場である「美肌の湯」の内湯と露天、貸切風呂4室、そして足湯、以上の9つです。貸切風呂は空いていれば自由に利用することができるのですが、大浴場「摩天の湯」と「美肌の湯」は夜8時に男女入れ替えが行われ、私が訪れた日の場合は、チェックインした日の夜8時まで「摩天の湯」が、それ以降は翌朝まで「美肌の湯」が男湯という設定でした。ということで、まずは早く行かないと入れなくなっちゃう「摩天の湯」へと向かいます。浴場前の掲示や暖簾が「男湯」になっていることを確認していざ入室。

 
さすがしっかりとしたお宿だけあって、脱衣室は綺麗に維持されており、ロッカーや水のサービスなど小さな心配りもぬかりありません。衝立も用意されており、室外からの視線にも配慮されています。おかげさまで気持ち良く使うことができました。

 
画像では伝わりにくいのですが、屋内であることを忘れさせてくれるほど広々とした浴室。大浴場の名に偽りはありません。通りに面して窓が連なり、その下に大きな浴槽がひとつ設けられています。子供だったらついつい泳ぎたくなっちゃうような、プールみたいな大きさです。浴槽内は3段になっており、中段のステップには豆タイルが敷き詰められています。ただ、お湯が濁っていて底が見えにくいため、私が入浴した際には、段を踏み外さないようゆっくり慎重に足元を確認しながら入りました。

 
脱衣室側の壁に洗い場が配置されており、シャワー付きカランが4基並んでいました。浴室内はタイルや石材が多用されているのですが、適宜木材を用いて優しくぬくもりのある印象をもたらしており、入浴客が建物に長時間接近する洗い場まわりでも木材が採用されていました。各シャワー前にはシャンプーとコンディショナーが数種類用意されており、お客さんが好みに応じて使い割れられるようになっていました。単に雰囲気を高めるだけでなく、お客さんの細かなニーズに応えようとしている点も大いに評価すべきですね。

 
「当館の温泉は100%源泉そのままです」と書かれているように、こちらのお宿では完全かけながしの湯使いなのですが、源泉温度が高いために湯船がかなり熱くなっていることが多いらしく、実際に私が入ろうとした時も、脛までお湯に入ったところ、皮膚にピリピリとした刺激が走り「このままでは全身浴は厳しいかも」と思わせるような湯加減でした。お風呂の掲示には「必ず湯もみなさってからご入浴して下さい」と書かれていましたので、その案内に従い、湯船の脇に立てかけられていた湯もみ棒でしっかりお湯をかき混ぜたところ、加水することなくちょうど良い湯加減に落ち着きましたので、仕切り直して入浴させていただくことにしました。

 

白い析出がこびりついている石の湯口が2つあり、それぞれからお湯が注がれていました。湯口から出てくる熱々のお湯をテイスティングしてみますと、弱塩味と芒硝感、そして鳴子温泉によくあるアブラ系の刺激を伴うクスリ臭(塩素臭ではない)が感じられました。いずれの湯口から出てくるお湯も、浴槽の大きさに対して投入量が少ないように見えるのですが、上述のように温泉の温度が高いため、加水をせずに温度調整すべく、湯量を絞っているものと思われます。鳴子に詳しい方なら言わずもがなですが、この「摩天の湯」のお湯は変色することで知られており、運が良ければ青色を呈したお湯を目にすることができるんだとか。どうやら、その時々の気温の上下によって青いお湯が発現するようですが、いつ青くなるかはよくわかりません。でも当記事の画像をご覧いただきますと、湯船のお湯がなんとなく瑠璃色を帯びているように見えませんか。実際にその場にいた私の目にも、摩天の湯ははっきりと青みを帯びた瑠璃色に見えました。もちろん外光が入ってこない夜間という条件であるため、周囲の薄暗さが青白く見せているだけかもしれません。気温もさることながらその時々の照度・光量に依っても色が変わるのでしょうね。青くなるときには、この画像で紹介している程度ではなく、もっと濃い青色になるみたいです。特に日中に変色すると、色合いがよくわかるようです。
このお風呂ではお湯の色のみならず、浴感の素晴らしさも特筆すべきものがあります。肩まで湯船に浸かったときに全身を包み込むトロトロ感は、まるで高級なローションのようであり、湯中ではツルツルスベスベの滑らかな感覚が得られ、その極上な浴感には美肌の湯と称したくなるほどです。いや、ツルスベの美肌になった湯浴み客の心は高揚して摩天の世界へと昇天してしまう、それゆえ「摩天の湯」とネーミングされているのかな、などという脈略のない想像をしてしまいました。分析書によれば炭酸イオンが50.3mg、メタケイ酸がH2SiO3:498.6mg含まれているので、こうした成分がツルスベ浴感をもたらしているのかもしれません。

 
「摩天の湯」には小さな露天風呂も付帯しており、日本庭園風の空間に石造りの丸い浴槽が一つ据えられ、筧からお湯がチョロチョロと落とされていました。内湯もこの露天風呂も同じ源泉を引いているのですが、やはり環境によってお湯の見え方が異なり、内湯で瑠璃色に濁ってお湯も、露天風呂では淡い青白色の貝汁濁りを呈していました。なお、こちらは外気で冷却されるため、軽く湯もみをするだけですんなり入浴できました。露天とはいえ、通りに面した位置に設けられており、目隠しの植栽などで視界が遮られてしまうため、あまり開放感は得られないかもしれません。この「摩天の湯」においては何と言っても内湯が素晴らしかったように思います。

さて、次回記事ではもうひとつの大浴場である「美肌の湯」へと参りましょう。

摩天の湯B
ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 98.4℃ pH8.7 蒸気泉のため湧出量測定不可(掘削自噴) 溶存物質2803.3mg/kg 成分総計2803.2mg/kg
Na+:733.0mg(95.31mval%), Ca++:15.4mg,
Cl-:355.3mg(30.56mval%), SO4–:952.5mg(60.48mval%), HCO3-:66.4mg, CO3–:50.3mg,
H2SiO3:498.6mg, HBO2:99.1mg,
(平成20年7月18日)
加温加水循環消毒なし

その2へ続く

コメント

  1. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    こんばんわ^^。
    鳴子温泉、やはり来ましたね^^b
    ここは元々、私の旅行候補になっておりました。
    古川から、ローカル線に乗ってガトゴト行く感じです。
    さすが、湯治場だけあって素晴らしい環境ですね!
    食事がまた、温泉情緒満点の良い品ぞろえ^^。
    これはもう、一気食いするしかありませんね!
    旅館すがわら、一人旅歓迎との事でしたので、
    早速クリップさせて頂きました^^。こちらのブログを読んでいると、
    候補地が増えまくって、嬉しい悲鳴が^^。

  2. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    こんばんわ^^。
    鳴子温泉、やはり来ましたね^^b
    ここは元々、私の旅行候補になっておりました。
    古川から、ローカル線に乗ってガトゴト行く感じです。
    さすが、湯治場だけあって素晴らしい環境ですね!
    食事がまた、温泉情緒満点の良い品ぞろえ^^。
    これはもう、一気食いするしかありませんね!
    旅館すがわら、一人旅歓迎との事でしたので、
    早速クリップさせて頂きました^^。こちらのブログを読んでいると、
    候補地が増えまくって、嬉しい悲鳴が^^。

  3. K-I より:

    Unknown
    ぬる湯マスターさん、こんばんは。
    鳴子には今まで何度も足を運んでおり(今年だけで4回行ってます)、何度も宿泊しているのですが、なぜかブログに取り上げてこなかったので、これからは少しずつ出してゆこうかと思っています。

    >候補地が増えまくって、嬉しい悲鳴が
    私がこのブログを書いている大きな理由は、ご覧になった方々に、その温泉へ足を運んでいただくことですので、そう仰ってくださることは、私にとってこれ以上ない最高の讃辞です。ありがとうございます。

  4. K-I より:

    Unknown
    ぬる湯マスターさん、こんばんは。
    鳴子には今まで何度も足を運んでおり(今年だけで4回行ってます)、何度も宿泊しているのですが、なぜかブログに取り上げてこなかったので、これからは少しずつ出してゆこうかと思っています。

    >候補地が増えまくって、嬉しい悲鳴が
    私がこのブログを書いている大きな理由は、ご覧になった方々に、その温泉へ足を運んでいただくことですので、そう仰ってくださることは、私にとってこれ以上ない最高の讃辞です。ありがとうございます。

  5. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    こんばんわ^^。
    そうでしたか!K-1殿は鳴子マスターだったのですね^^b
    宮城、仙台へは丁度震災の年に旅行を計画しておりまして、
    あんな事になってしまったので、先延ばしになっていました。
    普通ならば、まず寄る事の無い様な秘湯の雰囲気があるので、
    絶対に行こうと思っておりましたので^^。
    ところで、伊豆の中島荘がじゃらんから消えましたね。
    閉館したのかもしれません。とても残念です、、、。

  6. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    こんばんわ^^。
    そうでしたか!K-1殿は鳴子マスターだったのですね^^b
    宮城、仙台へは丁度震災の年に旅行を計画しておりまして、
    あんな事になってしまったので、先延ばしになっていました。
    普通ならば、まず寄る事の無い様な秘湯の雰囲気があるので、
    絶対に行こうと思っておりましたので^^。
    ところで、伊豆の中島荘がじゃらんから消えましたね。
    閉館したのかもしれません。とても残念です、、、。

  7. K-I より:

    Unknown
    >ぬる湯マスターさん
    いえいえ、行っている回数のわりには知らないことが多いので、恥ずかしくてマスターなどと名乗れるほどではありませんが(笑)、何度行っても発見に出会えるような面白い温泉郷だと思いますので、是非お出かけになってみてください。

    >中島荘
    宇佐美ですよね。いま確認しましたが、じゃらん・楽天ともに予約可能でしたので、ホッとしました(笑)。ただ、大手予約サイトは、宿からサイト運営側へ支払う手数料が高くて利益が薄くなる一方、集客力は大きいので、旅館側としては複雑な心境だ、という話をよく聞きますね。思い切って大手と契約を打ち切ったお宿もありますし。私がト予約する場合は、できるだけお宿の公式サイトか電話で直接予約するように心がけています。

  8. K-I より:

    Unknown
    >ぬる湯マスターさん
    いえいえ、行っている回数のわりには知らないことが多いので、恥ずかしくてマスターなどと名乗れるほどではありませんが(笑)、何度行っても発見に出会えるような面白い温泉郷だと思いますので、是非お出かけになってみてください。

    >中島荘
    宇佐美ですよね。いま確認しましたが、じゃらん・楽天ともに予約可能でしたので、ホッとしました(笑)。ただ、大手予約サイトは、宿からサイト運営側へ支払う手数料が高くて利益が薄くなる一方、集客力は大きいので、旅館側としては複雑な心境だ、という話をよく聞きますね。思い切って大手と契約を打ち切ったお宿もありますし。私がト予約する場合は、できるだけお宿の公式サイトか電話で直接予約するように心がけています。

  9. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    お疲れ様です^^。
    御殿場に二泊のゴルフ旅行に行っておりました。
    中島荘、先ほど私ももう一度試してみたのですが、
    じゃらんではどうしてもヒットしません(><)
    楽天の方では健在の様子でしたが^^;
    あの宿は、位置的にも外観的にも地味な感じですし、
    価格帯も儲けるつもりが無い様な良心的な設定ですからね。
    広告料等も、圧迫しているのではないかと心配です。
    まだ健在ならば、私もホッと一安心です。
    鳴子魔神のK-1殿に負けない様、
    私も小旅行に行きまくりの夏にしようと思います。
    次の土日は、伊豆で評判の「割烹の宿 大観荘 」へ^^b
    温泉が本物か、調べてやりますぞ^^。

  10. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    お疲れ様です^^。
    御殿場に二泊のゴルフ旅行に行っておりました。
    中島荘、先ほど私ももう一度試してみたのですが、
    じゃらんではどうしてもヒットしません(><)
    楽天の方では健在の様子でしたが^^;
    あの宿は、位置的にも外観的にも地味な感じですし、
    価格帯も儲けるつもりが無い様な良心的な設定ですからね。
    広告料等も、圧迫しているのではないかと心配です。
    まだ健在ならば、私もホッと一安心です。
    鳴子魔神のK-1殿に負けない様、
    私も小旅行に行きまくりの夏にしようと思います。
    次の土日は、伊豆で評判の「割烹の宿 大観荘 」へ^^b
    温泉が本物か、調べてやりますぞ^^。

  11. K-I より:

    Unknown
    >ぬる湯マスターさん
    手数料をまとめた↓のサイトによれば、大手経由の予約ですと8〜10%、場合によっては12〜13%も取られちゃうんですから、人件費や維持管理費をギリギリに削ってまでしても、単価を低く設定して集客に努めている宿にとって、この数字は痛すぎますよね。零細企業で齷齪している私としても、そのツラさはよくわかりますし、大手との契約を解除する宿が続々と出ているのも納得しちゃいます。
    http://www.fivestar-corporation.co.jp/archives/4721

    >小旅行に行きまくりの夏
    いいですね♪ 私は夏にあまり休めないのですが、いまから秋の観光シーズンの到来が楽しみです。白田温泉も是非楽しんでいらしてください。

  12. K-I より:

    Unknown
    >ぬる湯マスターさん
    手数料をまとめた↓のサイトによれば、大手経由の予約ですと8〜10%、場合によっては12〜13%も取られちゃうんですから、人件費や維持管理費をギリギリに削ってまでしても、単価を低く設定して集客に努めている宿にとって、この数字は痛すぎますよね。零細企業で齷齪している私としても、そのツラさはよくわかりますし、大手との契約を解除する宿が続々と出ているのも納得しちゃいます。
    http://www.fivestar-corporation.co.jp/archives/4721

    >小旅行に行きまくりの夏
    いいですね♪ 私は夏にあまり休めないのですが、いまから秋の観光シーズンの到来が楽しみです。白田温泉も是非楽しんでいらしてください。

  13. 秘湯巡り 
    鳴子温泉のやすらぎ荘に泊まったのですが、コールタールの臭いがしました。
    すがわらは、人気宿のようですね。

    翌日は、藤七温泉で泥パックしましたょ。

  14. 秘湯巡り 
    鳴子温泉のやすらぎ荘に泊まったのですが、コールタールの臭いがしました。
    すがわらは、人気宿のようですね。

    翌日は、藤七温泉で泥パックしましたょ。

  15. K-I より:

    Unknown
    >もののはじめのiinaさん
    鳴子の翌日に八幡平まで行かれたんですか。長い移動、お疲れさまでした。藤七温泉は私も大好きな温泉です。

  16. K-I より:

    Unknown
    >もののはじめのiinaさん
    鳴子の翌日に八幡平まで行かれたんですか。長い移動、お疲れさまでした。藤七温泉は私も大好きな温泉です。

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