槻沢温泉 砂ゆっこ

岩手県


前回に引き続き岩手県西和賀町の温泉を巡ります。今回訪ねる槻沢温泉は湯田湯本温泉から川をちょっと遡った左岸に位置しており、他の温泉街から離れているものの、一応湯田温泉峡のひとつとして扱われているようです。私が訪ねたのは集落の中央にある入浴施設「砂ゆっこ」です。その名の通り砂蒸し風呂が売りの施設であり、平成2年に開業した当時の東北では初めての砂風呂だったそうです。町内で産出される天然珪砂を用い、80℃以上で湧出する温泉の熱を使って加熱しています。地元の自然の恵みを生かした施設なんですね。

まずは受付で直接料金を支払うのですが、その際に入浴だけか、あるいは砂風呂にも入るのかを申し出ます。今回私は時間の都合で、砂風呂を利用せず温泉入浴のみでお願いしました。すると受付の方は一旦動きが止まり、不思議そうな目でこちらの様子を窺いながら「入浴だけで宜しいんですね」と確認してきました。どうやら、このお風呂を利用する非地元客の多くは温泉入浴と砂風呂をセットで申し込むようです。せっかくの売りを体験しないでごめんなさい。
なお受付の隣には休憩用の広いお座敷があり、お水が無料で提供されています。風呂上がりのお休みにつかえますね。

脱衣室は一般的な公衆浴場そのもので、比較的コンパクトな造りです。なお温泉入浴客はもちろんのこと、砂風呂利用のお客さんもこの脱衣室で浴衣に着替え、浴室を通過して砂風呂へ向かうことになります。ロッカーは脱衣室内ではなく、その手前の入口横に設置されています。


タイル貼りの浴室は綺麗にお手入れされており、気持ち良く使えます。入室した瞬間にちょっと塩素臭がしたのですが、おそらく清掃時の消毒処理によるものでしょう。この浴室の奥に砂風呂があり、利用客は浴衣姿でこの浴室を通過することになります。


男湯の場合、入って右側に洗い場があり、シャワー付きカランが5基並んでいるのですが、それぞれの間隔が広いので隣客と干渉せずとても使いやすい造りになっていました。またシャワー下の物を置く棚には長いまな板のような厚い一枚板が用いられており、無機質になりがちなタイル張りの浴室にビジュアル的なぬくもりをもたらしていました。林業が盛んな土地らしい工夫と言えましょう。


洗い場と反対側には浴槽が設けられています。シャワーの下と同様、こちらの縁にも木の一枚板が載せられており、見た目が温かく、また実際に触れた感じも優しく、寛ぎの空間に相応しい役割を果たしています。
この浴槽は大小に分かれており、小さな方は奥行き2メートル少々で幅1.2mくらいの2人サイズ。湯加減は熱めです。一方、大きな方は奥行き2メートルで幅2.5mくらいの4人サイズ。一般的な適温のお湯が張られています。


小さな岩が組まれている湯口から無色透明のお湯が大小それぞれの浴槽に向けて注がれていました。その岩には白い析出がこびりついており、透明なお湯を見ただけではわからない温泉成分の濃さが伝わってきます。なお源泉温度は80℃以上あるため、温度調整のため加水されているそうですが、それでも湯口から出るお湯は結構熱いので、直にお湯を触らない方がいいかもしれません。
湯使いは放流式で循環されていないものの、上述のように加水されており、もしかしたら消毒剤が投入されているかもしれません(あくまで私の推測ですので誤っていたらごめんなさい)。湯口の岩についた白い析出からもわかるように、お湯からは芒硝の味や匂いがしっかり感じられ、湯船に浸かるとピリっとした感触が肌に伝わるほか、肌を擦ると少々引っかかるも浴感も得られます。とてもよく温まる力強いお湯です。

冒頭で述べたのように、こちらを訪ねるお客さんの多くは砂風呂が目当てらしく、私は日曜日の朝9時前に入館したのですが、そんな早い時間なのに砂風呂利用者が複数人いらっしゃって、湯船に浸かる私の目の前を、浴衣姿のお客さんが次々に砂風呂ルームへと向かっていきました。私は鹿児島県指宿で何度か体験しているので、ここでは利用しませんでしたが、たしかに珍しい施設なのでわざわざここまで来る方もいらっしゃるのでしょうね。


熱めの湯船に入りながら砂風呂へ行くお客さんの様子を見ていたら、体がちょっと逆上せてしまいましたので、お風呂上がりに休憩室を利用させていただきました。


受付でご当地の湯田牛乳(85円)が販売されていましたので、これを一気飲み。うまい!


「砂ゆっこ」から出て車に乗ろうとしたとき、さほど離れていないところから白い湯気が朦々と立ち上っていることに気付いたので、もしかしたら・・・と思ってその場所へ行ってみることにしました。
案の定、その場所は槻沢温泉の源泉施設でした。



汲み上げられた温泉がタンクに注がれ、そこから施設へと配湯されているのですが、施設内では熱々のお湯が垂れ流されていました。先述のように源泉温度は80℃以上あるので、もしこの源泉施設を見つけても、危険ですから決して垂れ流しのお湯に直接触れないでくださいね。

槻沢温泉(1号泉)
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 87.8℃ pH8.1 150L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質1.914g/kg 成分総計1.914g/kg 
Na+:443mg(70.59mval%), Ca++:147mg(26.89mval%),
Cl-:248mg(26.32mval%), HS-:0.4mg, SO4–:906mg(70.90mval%), HCO3-:28mg, CO3–:0.4mg,
H2SiO3:108mg,
(平成28年7月5日)

岩手県和賀郡西和賀町槻沢25-16-8
0197-82-2500
株式会社西和賀産業公社ホームページ
砂風呂については本記事で紹介できなかったため、詳しく知りたい方は上記サイトでご確認ください。

4月~11月:8:00~21:30、12月~3月:8:00~21:00、砂風呂9:00~19:00(受付終了18:30)
第2火曜定休(祝日の場合は翌日)
440円(2019年10月より300円から440円に値上げ)、砂風呂1200円(値上げ前は1000円)
ロッカー有料(100円)、シャンプー類・ドライヤーあり。

私の好み:★★+0.5

コメント

  1. ぬる湯マスター(病後) より:

    Unknown
    こんにちわ^^;
    今月初めに原因不明の発熱が始まり、
    2週間ほど自主的に隔離生活を続けておりましたが、
    ようやく回復しました。K-1殿も気を付けて下さい。
    今回は岩手、山形を激走中ですね。何とも羨ましい。
    受付の方の動きが一瞬止まる下りが面白くて笑ってしまいました^^。
    私は全てにおいてぬるいのが好きで、ラーメンも然り。
    それなりに名のあるラーメン屋の場合には、
    「ぬるいラーメン出来ますか?」と聞くと、
    店主の動きが一瞬止まり、怪訝そうな顔で聞き返されます。
    「それはどう言った理由で、ですか?」と(苦笑)
    「僕は度を超えた猫舌で、熱い物は味がしないんです。
    ラーメンは大好きなので、お願いしてみたんですが、
    無理ならば帰ります。」
    と、正直に言えば笑って作って頂けます。
    今まで拒否された事はありません。丸亀製麺などでは、
    普通にぬるいうどんを出してくれます。
    話が逸れましたが、熱い物が苦手な私ですが、
    何故か夏の猛暑には滅法強く、冬が超苦手です。
    意味不明です。そしてラスト3枚の写真の場所、、、
    こんな場所を見付けてしまうと、ムラムラワクワク、
    色々な実験をしてみたくなるので困っております^^b

  2. K-I より:

    Unknown
    ぬる湯マスターさん、こんにちは。返信が遅くなり申し訳ございません。体調はその後いかがでしょうか。いまの時世ですと何かと不安になりますが、回復なさったようで何よりです。今回の記事の温泉には昨年秋に行きました。ラスト3枚の画像にはマニア的に惹かれてしまいますよね。しばらくは外出できそうにありませんので、記事を書き、画像を見ながら、バーチャルな温泉旅を楽しんでおります。

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