(2021年10月訪問)
今回と次回は愛知県知多半島の温泉を取り上げます。醸造業と新美南吉の街である愛知県半田市には、アツアツの温泉がかけ流されている温泉施設があるので、2021年秋の某日に行ってみることにしました。半田中央インターの目の前という好立地にあり、駐車場も広く収容台数も多いので、車社会のご当地では至極便利な施設と言えるでしょう。とはいえ付近に鉄道の駅は無く、バス停からもやや離れているので、公共交通機関で旅をしている方にはちょっとアクセスにしくいかもしれません。
名古屋界隈の温泉施設といえば大規模なスーパー銭湯を連想しますが、こちらの施設は入浴に特化しており(※)、それゆえ建物はさほど大きいわけではなく、全体的に日本旅館のようなの雰囲気を大切にしているようで、上画像の玄関廻りもこぢんまりした旅館にお邪魔しているかのような感じでした。
この玄関を入るといきなり右側が下足場で左側が受付というレイアウト。靴を下足箱に預けて鍵を掛け(100円リターン式)、上り框を上がったところに設置されており券売機で料金を支払って、券と鍵の両方を受付へ差し出すと、引き換えに脱衣室のロッカーキーを手渡してくださいます。受付から右へ進むと女湯、左へ向かうと男湯です。
(※)入浴に特化していたのは私の訪問時の話で、今年4月には食堂が開業したそうですから、入浴のほか食事も楽しめるようになりました。
なお受付があるスペースの奥には飲料自販機とマッサージチェア、そして細かな段を流れ落ちる滝を眺める休憩スペースがありますが、いずれも狭いので、大人数で集うことはできません。私は利用していませんが、左側の渡り廊下を進んだ先に休憩室があるようですから、お風呂上がりのひと休みはそちらを利用した方が良いでしょう。
脱衣室はそれほど広くないものの、ロッカーの数はそこそこ多く、また室内にある階段を上がった2階にも更衣室があるらしいので、混雑時にもあまり窮屈な思いをしないで済みそうです。明るくきれいで、エアコンも設置されていて、使い勝手はまずまずです。
入浴ゾーンに足を踏み入れると、これまた和の雰囲気たっぷりで、上屋は木造、床は石材という落ち着いた造りです。
入ってすぐ右側に小さなかけ湯があり、その並びに立って使うシャワーが2つ、それぞれ独立したブースになって設けられています。また反対側(左側)にはサウナと水風呂が並んでいるのですが、水風呂は1人か2人しか入れない小さなものなので、夏には後述する内湯浴槽がまるごと水風呂に変身することもあるようです。
上述の立って使うシャワーの裏手へぐるっと回ると洗い場があり、シャワー付き混合水栓が10基設置されています。シャワーの水圧が強めで気持ち良いのですが、水道の水がなんとなく泥臭い感じがしたのは気のせいでしょうか。あるいはこのエリアの水道水源が明治用水から長良川河口堰に切り替わった影響なのでしょうか。後者が原因だとしたらご当地の皆さんが気の毒でなりません。私が暮らす東京の水道水だって褒められたもんじゃありませんが、東京よりはるかに宜しくない知覚的違和感を感じたのでした。
建物の窓際にある内湯は石板張りの長方形で、10人以上入れそうな大きさを有していますが、温泉ではなく普通の白湯です。どうやらこの施設の内湯に温泉は無いんですね。
内湯に温泉がない代わり、露天ゾーンには複数の温泉浴槽が用意されています。まず左手に温泉の歩行湯があり、底には足裏を刺激する石が埋め込まれていて、実際にその足湯へ入って歩いてみたところ、歩みを進める度に足裏のいろんなツボが刺激され、その痛気持ち良さにはまってしまい、思わず出かかってしまう唸り声を懸命に押し殺しつつ、3周ほどグルグル足湯を歩き回ってしまいました。
内湯の建物のまわりに沿ってぐるっと右手奥に進むと、温泉のお湯が落とされている2本の打たせ湯(温泉)が設けられ、露天ゾーンの中央には主浴槽がお湯を湛えています。この大きな主浴槽はごく普通に全身浴するところが大部分ですが、一角には打たせ湯へ向かう橋(通路)がかかっていて、その通路の内湯側主浴槽は寝湯になっています。また主浴槽の右奥は洞窟湯になっていて、この洞窟湯の山側の石積みの壁から新鮮源泉の熱い温泉が注がれています。なお主浴槽の湯口からはふんだんにお湯が出ているのですが、これは循環のお湯でしょう。
主浴槽とは区切られたちょっと小高くなっているところへ、上の方から50℃以上の源泉が滝のように落とされています。この直下の滝つぼは2~3人入れる大きさがあり、完全かけ流しのお湯を堪能することができるのです。
温泉の滝は焼けただれたような色をしており、うろこ状の析出も表れています。私が滝つぼで入浴している時にちょうど見回りのスタッフの方が滝つぼの湯温を計測しに来たので、何度だったか聞いてみますと、曰く46℃とのこと。道理で熱いはずだわ。とにかくこの滝つぼのお湯は熱いので、熱湯に耐性があるお客さんしか入れませんが、でも私が出るのを見計らって入りに行くお客さんもいらっしゃいましたから、意外と熱いお湯を好む方が一定数いるようです。なお滝つぼのお湯は全て主浴槽へオーバーフローしています。先ほど主浴槽の湯口は循環のお湯だと申し上げましたが、洞窟部分から新鮮源泉が注がれているほか、この滝からの全量オーバーフローも受けているため、主浴槽のお湯は循環メインながらも意外と新鮮源泉投入率が高いのかもしれません。
さてお湯に関するインプレッションですが、見た目は無色透明ながら僅かに潮汁のような濁りを呈しており、浮遊物もちらほら見受けられます。非常にしょっぱく出汁味もあり、まるで濃縮液体白だしの原液を口にしているかのようです。湯の滝やその周辺が赤い割に金気味はそれほど感じられず、その一方でカーボン的な匂いというかアブラ臭のような匂いが感じられました。湯中ではツルスベの滑らかな浴感がしっかりしていて、とっても気持ち良いのですが、塩分が濃いために、さかむけや傷口などがかなり沁みます。
塩辛いお湯なので力強く温まりすぐ逆上せてしまいます。つまり湯あたりしやすいお湯です。私も温泉の滝つぼに入っているとすぐに全身が真っ赤になり、辛抱して入り続けていたら、軽くフラフラしてしまいました。でもこの熱い滝つぼに入りたいオジさんたちが、近くのべンチに座りながらじっと様子を伺い、滝つぼが空くのを今か今か待っているのです。熱いので回転は早く、おじさんたちの順番はすぐに回ってくるのですが、世の中には熱いお風呂が好きなマゾヒスティックな同士が多いことに驚かされました。「ごんぎつね」ゆかりの地ですから、湯の滝の左側には石のきつねが飾られているのですが、そのキツネがいささか軽蔑の眼を我々に向けていたように見えたのは、単なる被害妄想でしょうか。
それはともかく、火山に縁もゆかりもない知多半島の中央部で、非加温なのに50℃以上の温泉が湧くとは実に意外ですね。わざわざ訪問する甲斐がある温泉でした。
ナトリウム-塩化物強塩温泉 59.2℃ 溶存物質26.33g/kg 成分総計26.39g/kg
Na+:9530mg(98.26mval%), NH4+:16.0mg, Mg++:46.6mg,
Cl-:13800mg(91.20mval%), Br-:28.2mg, I-:1.5mg, HCO3-:2230mg(8.57mval%), CO3–:5.5mg,
H2SiO3:45.9mg, HBO2:517.0mg, CO2:56.2mg,
(平成28年3月8日)
循環あり(掛け流し浴槽を除く)
加温する場合あり(入浴に適した温度にするため加温することがある)
循環あり(気温の高い期間のみ入浴に適した温度にするため循環)
消毒あり
加水なし
愛知県半田市平和町5-73-2
0569-27-8878
ホームページ
10:00~22:00(受付21:00まで) 月曜定休(祝日の場合は火曜休業)
800円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★+0.5
コメント