(2022年10月訪問)
福島の吾妻連峰と安達太良山の両山麓を縫うように走りながら土湯峠を越える福島県道70号線。私が訪問した時には山々が錦秋の彩りで大変美しく、所々で車を停めては、見事な紅葉を楽しませていただきました。
さて今回目指すのは土湯峠温泉郷の「赤湯温泉 好山荘」です。こちらの温泉は以前拙ブログで取り上げておりますが(当時の記事はこちら)、2021年に発生した地震によって一度は休業に追い込まれてしまいました。その後1年近く閉鎖が続き、もう復活は難しいかと思われていましたが、地元の方々によってクラウドファンディングによる再興が図られ、目標額に達したことで見事にリニューアルが進行し、晴れて営業再開と相成りました。私もクラウドファンディングに参加した一人として、どのように生まれ変わったのか自分の目で確かめるべく、今回再訪したのでした。
県道から温泉へのアプローチ路は急な傾斜の砂利道なので、初めての方はちょっと不安に思われるかもしれませんが、普通の乗用車でも問題なく通行できるかと思います。
坂道を下りきったところに建っていた建物は、以前の山小屋然とした雰囲気とは大きく異なるシックな色遣いの新しい姿に生まれ変わっていました。
こちらの玄関からお邪魔します。帳場にいらっしゃった女将さんに入浴したい旨を申し出、湯銭をお支払い。
帳場から右手に伸びる廊下に沿って客室が並び、一方帳場の左側にはお座敷やお風呂が配置されています。
大小2つのお風呂を男女で使い分けており、訪問時に男湯の暖簾が掛かっていたのは小さい方のお風呂でした。さすがに全面改築しただけあって、更衣室は小ぢんまりとしていながらも非常に綺麗で明るく、気持ち良く使えます。
小浴室なのでコンパクトな造りですが、大きな窓を採用することでスペース的な問題を払拭しようと試みられているような感じです。実際に窓からは陽光が燦々と降り注ぎ、山々の美しい景色を眺めながら湯あみすることができます。
洗い場にはシャワーが2つ設置されており、シャワーヘッドは3パターンの水流を切り替えられるタイプの製品が取り付けられていました。
目測で2メートル四方と思しき浴槽には、赤湯温泉という名前の通り赤く濁ったお湯が張られ、しっかり掛け流されています。なお浴槽などに手をついて擦ると指先にオレンジ色の沈殿が付着します。お湯からは金気と土気が感じられ、湯船に浸かると肌の皴1本1本に染み込んでゆくようなシットリ感が得られ、全身がよく温まります。はっきりと赤く濁っているにも関わらず泉質名は単純温泉。とはいえ溶存物質0.8532gなので、あと約0.15gあれば石膏泉を名乗れるわけで、温泉法による泉質名の線引きが、濁り湯なのに単純泉という不可解な状況を生み出していると言えましょう。
なおリニューアル前のお風呂には赤湯の露天風呂もありましたが、リニューアル後は内湯のみになっています。源泉湧出量が毎分70Lなので、無理に内湯と露天で分けるより、内湯一本にした方が良いという潔い判断かと思われます
続いて、離れの露天風呂にも行ってみましょう。内湯から一旦着替えて屋外に出て、駐車場を突っ切って露天風呂へ向かいます。
こちらはリニューアル前とほぼ同じ姿を保っているようでしたが、とはいえ全体的に綺麗になっており、以前のようなワイルドさを残しつつも、気持ち良く入浴できる環境が整えられています。なおミルクタンクを横倒しにして改造した手作り更衣室はリニューアル前からここに設置されており、この露天風呂の象徴的な存在とも言えそうです。
内湯の赤湯とは対照的に、離れの露天風呂は弱い白濁の単純硫黄泉。お湯からはマイルドな収斂酸味と硫黄らしい味や香りが感じられます。訪問日は小春日和の良い陽気で、青空に山々の紅葉が映え、あまりの美しさに湯浴みしながらしばし絶景に見惚れていました。
見事リニューアルによる営業再開を果たしたこちらのお宿。これからも末永く良いお湯を提供していただきたいと思っております。私もまた機会を見つけて再訪するつもりです。
【内湯】赤湯の三番の湯
単純温泉 52.8℃ pH6.7 70.4L/min 溶存物質0.8532g/kg 成分総計0.9413g/kg
Na+:37..8mg(19.10mval%9, Mg++:24.3mg(23.23mval%), Ca++:76.8mg(44.45mval%), Fe++:0.8mg,
SO4–:386.2mg(90.05mval%),
H2SiO3:245.2mg, CO2:88.1mg,
(令和2年9月25日)
【露天風呂】
(2022年10月訪問時には分析表が見当たらなかったため、以前拙ブログで紹介した古いデータを再掲します。)
赤湯温泉白湯
単純硫黄温泉(硫化水素型) 49.1℃ pH3.9(※) 17L/min(自然湧出) 溶存物質167.6mg/kg 成分総計223.4mg/kg
(※)湧出地におけるpHのデータが無いため試験室におけるpH値を掲載
Na+:7.5mg(17.16mval%), Ca++:15.8mg(41.08mval%), Al+++:4.0mg(22.88val%),
SO4–:96.0mg(96.6mval%),
H2SiO3:34.2mg, CO2:46.0mg, H2S:9.8mg,
福島県福島市土湯温泉町字鷲倉1
0242-64-3217
日帰り入浴10:00~14:30
700円
冬期休業(12月〜3月)
私の好み:★★★
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コメント
Unknown
好山荘は10年前に一度宿泊しましたが、すっかりきれいにリニューアルされてびっくりです。
10年前も東日本大震災で浴室を作り直したと聞きましたし、災害で何度も大変な思いをしながら営業を続けていらっしゃるのですね。
露天のタンクの脱衣場がそのままなのがうれしいです。
Unknown
Luntaさん、こんばんは。
こちらで宿泊されたことがあるんですね。地震による閉業の報を知ったにはもうダメかと諦めかけていましたが、地元の方々やクラウドファンディングによる支援を受けて、見事に生まれ変わり、綺麗なお風呂で快適に入浴できました。タンクの脱衣所の露天風呂はそのままの姿で、目にした時には嬉しくなりました。