出雲湯村温泉 元湯共同浴場

島根県

湯村温泉という地名は、山梨県や兵庫県にもありますが、今回取り上げるのは島根県です。他県と区別するため当地は旧国名を冠して出雲湯村温泉と呼ばれることが多いようです。

 

この出雲湯村温泉、温泉街としての規模は小さく、川岸の上を走る一本の細い道に沿って形成された在地に1軒、その対岸の国道沿いに1軒、それぞれ旅館が存在するだけなんですが、特に在地に建つ旅館「湯乃上館」周辺はとっても素敵な佇まいでして、茅葺屋根、苔むした石垣、その下にポツンと建つ赤い丸ポスト、それらが面している細い路地、そして一帯を包み込む静寂さが、まるで日本絵画の中にいるかのような素晴らしい景色を生み出しており、その光景に私は思わずうっとりしちゃいました。
また手前には「オーベルジュ雲南」というレストランを兼ねた宿があって、思いっきり新しく洒落た建物なんですが、実は民家を改装したものなので、周囲の風景に見事に溶け込んでおり、新旧渾然としたその店構えに心惹かれてしまうこと必至。店内は古民家的な内装に現代的な什器やファブリックを組み合わせたデザインで、地場野菜をふんだんに使ったパスタなどのお食事はとっても美味。なお宿泊は1日2組限定なんだそうですよ。


「湯乃上館」の真正面にあるのが当地唯一の共同浴場「元湯共同浴場です」。平成13年に改装されて新しくなりましたが、小さくても昔ながらの風情をしっかり残したオール木造の趣のある湯屋です。


入口付近に足湯を発見。輪切りにした丸太の腰かけがいい感じ。

 
玄関を入ったところは受付兼休憩スペースとなっています。湯上りにはここで腰に手を当てて瓶牛乳をグイっと飲み干しちゃいましょう。

 
脱衣所は籠が置いてあるだけの至ってシンプルなつくりですが、改築からまだ10年も経っていないために経年劣化は感じられず、木造ならではのぬくもりが伝わってくるので、脱衣所のような中間スペースにありがちな淡白として実用本位のような冷たい雰囲気は感じられません。

 
お風呂は内湯と露天がひとつずつ。浴室はシックで落ち着いた大人の雰囲気。梁や柱には太く立派な一本の材木が用いられており、思わず息を呑んでしまいます。


浴室には一応カランが1組ありますが、実質的な洗い場は3ヶ所設けられ、ここではカランでお湯を出すのではなく、湯口から目の前の枡に注がれた源泉を桶で汲んで掛け湯するという洒落たスタイルを採っています。同様のものはここここなど、湯めぐりをしていると偶に遭遇しますが、この粋なスタイルを初めて採用したのはどこなんでしょうかね。
なお枡で使われなかったお湯はそのまま浴槽へと注がれていきます。

 
露天は3人サイズの小さなもの。塀で囲まれていますが、その塀の上部は格子状になっているのであまり閉塞感は無く、また下部は窓になっていて開けられるので、お湯に入りながら川を眺めることができます。お湯は内湯から落ちてきたものがまるごと受けて使われており、そして縁の切り欠けからたっぷり排湯されています。

お湯は無色澄明無味無臭、クセが無く軟らかい優しいもので、光の屈折が独特なのか湯中の肌はうっすら青白く見えます。湯口から絶え間なく注がれているので常に新鮮で清らかなお湯を堪能することができ、また湯加減が絶妙なのでいつまでも入っていられます。

小さな建物ですが、共同浴場には勿体ないほど趣と風情のある、まるで老舗旅館のお風呂のような立派な湯屋です。かなりおすすめ。

アルカリ性単純温泉 42.6℃ 溶存物資0.46g/kg 成分総計0.46g/kg

島根県雲南市木次町湯村1336  地図
0854-48-0513(湯乃上館)
湯乃上館ホームページ

10:00~21:00
320円
ロッカー有料(100円)、ドライヤーあり(無料)、ボディーソープあり(シャンプー無し)、各種販売

私の好み:★★★

コメント

タイトルとURLをコピーしました