えちご川口温泉

新潟県


強烈な個性のお湯に入れると聞いて、新潟県中越の旧川口町(現在は長岡市と合併)と地元JAの出資による第三セクターが運営する温泉入浴施設「えちご川口温泉」へ行ってきました。魚野川と信濃川が合流する箇所を見下ろす眺めの良い丘の上に立地しており、広大な敷地面積を有し、構内には「ホテルサンローラ」という宿泊施設も併設。こちらのような、実質的には公営のセンター系施設は、民間ではありえないような好立地を確保し、えらく立派な上モノを聳え立てていることが多いですよね。


受付で下駄箱の鍵と引き換えに館内精算用のカードが手渡されます。館内は妙にだだっ広く、綺麗で立派なのですが、かといってラグジュアリ感があるわけでもなくゴージャスでもなく、ベージュを中心とした無難で没個性なカラーコーディネートやロビー前に陳列されているお土産品などが田舎趣味で空虚さを漂わせているようであり、せっかくの立派な建物やその館内空間を無駄にしているようで、いまひとつ物足りなさをおぼえました。尤も下手に小洒落ると却って当館の客層のニーズと乖離しちゃうので、これがベストなのかもしれませんが。

 
ロビーから右手へ延びる無駄に長い廊下を延々歩いた先に浴室への入り口がありました。男湯と女湯は入れ替え制なのでしょうか。両浴室の中間には温水プールがあるのですが、訪問時は営業期間外だったので(営業期間は7月下旬から8月下旬まで)、プールには人っ子一人いませんでした。これだけ立派ならば、遊ばせておかないで通年営業すればいいのに…と思うのは私だけではないはずですが、もしかしたら夏以外に営業させちゃうと経費ばかりが膨らんでしまうのかもしれませんね。

 
脱衣所も広くて綺麗で立派、使い勝手良好です。お手入れもよく行き届いており実に清潔。プールのロッカールームも兼ねているため、夏の繁忙期に備えてロッカー数をたくさん用意しているようですが、あまりにその数が多すぎるため、せっかくの空間をロッカーが圧迫しており、室内面積の割には自由に広々と使えないのが残念なところです。
受付で渡された館内精算用カードはこのロッカーでも利用します。ロッカーは任意のところが使えますが、カードをロッカーの裏側へ差し込むことによって施錠が可能になります。



(↑画像クリックで拡大)
浴室内には幾種類かの浴槽があるのですが、それぞれにおける湯使いについて図を用いながら説明しているのは、非常に良心的ですね。

 
浴室内にはガラス窓に面している大浴槽の他、それに並んで寝湯、水風呂、サウナと続き、反対側には腰掛け式流水浴や上がり湯、その間に8角形の電気風呂浴槽といったように、いろんな浴槽が設置されていました。どこから入ってよいか迷ってしまいます。なおこれらの浴槽の内、温泉を利用しているものは大浴槽・寝湯・腰掛け式流水浴の3つで、いずれも加温循環消毒されており、夏季は加水も行われているんだそうです。
循環消毒云々は更衣室内の説明プレートにより事前に分かっていたので、内湯のお湯にはあまり期待していなかったのですが、浴室に入った途端にはっきりとわかるアブラ臭が鼻を突き、お湯の色も濃い黄色の透明で、かなり塩辛い味を有していました。循環湯ですらこの知覚の強さなんですから、源泉そのままだったらどうなっちゃうんでしょう。こんな濃いお湯を循環させて、機械はぶっ壊れないのかしら。
なお洗い場のカランは一つ一つのブースが仕切されており、お隣さんの飛沫が飛んでくる心配が無いので、快適に利用できました。24基用意されています。


内湯から屋外へ出てみました。露天風呂の浴槽は2種類あり、手前側は源泉風呂、奥が展望の良い露天の主浴槽です。

 
まずは展望が優れている露天の主浴槽へ。小高い丘の上に設けられているお風呂からは、目下の旧川口町市街、そして魚野川と信濃川が合流しながら大河を形成しつつ悠然に流れてゆく様を一望することができます。目の前に視界を遮るものが何一つないので、素晴らしいパノラマです。一部に屋根がかかっているので雨天時の利用もでき、また屋根が無い部分も広いので、晴れていたら空の広さを存分に楽しめます。お風呂自体も広いので、実に爽快です。

  
こちらの浴槽で使われているお湯は内湯の大浴槽と同様に、加温循環消毒(夏季は加水)されているため、その特徴やフィーリングは内湯と同じでした。浴槽容量が大きいためか、循環されている量も多いようで、底面吸引されている箇所の真上の湯面では、強力な吸引により渦が発生していました。もちろん真上を歩くと足裏を思いっきり吸われてしまいます。

 

さて今回の本来のお目当てである源泉風呂へ。いままで紹介したこの施設のお風呂は長いプロローグにすぎません。実質的に公営の入浴施設だけあってさすがに塩素剤による消毒の洗礼は免れないようですが、この浴槽だけは循環が行われていない放流式の湯使いが実施されており、実物を見ればわかるのですが、同じ源泉なのに状態が全然違うのです。

まず見た目は黄色透明だった循環のお湯が、ここでは赤っぽい橙色に濃く濁り、透明度は30cm程度。とてつもなく塩辛く、アブラ臭(石油的な臭+タイヤが焦げたような臭い)もかなり強く漂い、群馬県の「くらぶち相間川温泉」を髣髴とさせる凶暴な知覚。温泉そのものの匂いが強烈なので、たとえ塩素を入れていても消毒臭なんて完全に存在感を失っています。強い塩分のため、お湯に入るだけで肌がピリピリと沁みてきて、もし傷口でもあろうものなら痛くて飛びあがっちゃうかもしれません。ナメクジだったら即死だな、こりゃ。そればかりでなく、火照りも半端じゃないので、とても長湯していられません。すぐにのぼせて体力を奪われ、たちまちヘロヘロになってしまいました。
湯上がりもお湯に浸かった後ろ髪からはアブラ臭がプンプン香り、お肌はピリピリが続いた上にベトベト感も残り、更にはツッパリ感すら覚えます。濃い液体に浸かった後ですから、肌がカピカピしちゃうわけですね。

見た目・味・匂い、いずれも比類なき個性ですが、浴感、特に入浴中のパワフルな火照りや、湯上がり後の肌への凶暴さは半端じゃないかと思います。それゆえ、普通の方ならお風呂から上がる前に真湯をかけて、余計な温泉成分を落としちゃった方がよろしいかもしれませんが、マゾな私は掛け湯なんてせずにそのまま上がって、全身からアブラの臭いを放出しつつ、とめどなく噴き出てくる汗を垂れ流し、肌のツッパリ感に耐えながら、この浴場を後にしました。
温泉は掛け流しが良いに決まっている、というのが世間一般の評価であり、私もその大原則に則って湯巡りをしていますが、ここみたいな濃厚すぎるお湯は、機器を通して若干マイルドにした方が、結果的にはお客さんのためには良いのかもしれず、つい長湯したくなる展望露天風呂に循環のお湯が用いられているのは、とても理に適っているのかもしれない、と一人で勝手に合点した次第です。いずれにせよ、公営の綺麗な施設ながら、お湯の個性は他に比肩する温泉がなかなか思い浮かばないほど強く、そして良い意味で大変アグレッシブであるので、体力自慢の格闘マニアには是非一戦を交えていただきたいお湯であります。新潟県って油臭がする温泉の宝庫ですね。

ナトリウム-塩化物強塩泉 54.3℃ pH7.6 396L/min(動力揚湯) 溶存物質17660mg/kg 成分総計17670mg/kg
Na:6078mg(93.30mval%), Cl:10630mg(97.74mval%)

新潟県長岡市川口中山2515-5  地図
0258-89-4511
ホームページ

10:00~21:00
700円(17時以降は600円)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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