前回取り上げた川湯温泉「仙人風呂」から上がった後、川沿いに佇む「川湯温泉公衆浴場」にも立ち寄ってみることにしました。私個人としては6年ぶりの再訪問です。
源泉は浴場の目の前を流れる大塔川の中にあり、川縁の道路から川を見下ろすと、川底からお湯を上げる配管が立ち上がっているのがわかります。
赤いパトランプが回っている入口を上がり、左手に建つ受付小屋で料金を支払います。通路の先ではおばちゃん向けの地味な衣類が販売されていたのですが、こんなところで服を買い求めるような需要ってあるんでしょうか。帳場で婆様向けの服を売っているだなんて、東北の湯治宿みたいですね。
通路にある掃除用の流し台には、熱いお湯が落とされていました。これも温泉なのでしょう。
暖簾を潜って公衆浴場の館内へ。下足棚の上に置かれた水槽で熱帯魚がのんびり泳ぐ姿を横目にしながら、男女別の浴室へと向かいます。
建物は古いものの館内はそれなりに手入れされており、脱衣室もそこそこ綺麗です。室内にはロッカーと籠の両方が用意されており、好きな方を利用できます。なお扇風機は備え付けられているものの、コンセントのアンペア数が少ないらしく、ドライヤーを使いたい場合は受付に申し出て貸出用のものを借りることになります。
川に面した浴室は窓から燦々と陽光が降り注いで明るく、湯船にお湯を勢い良く落とす音が室内中に響いています。洗い場には混合水栓が5基ならんでおり、うち2基はシャワー付きです。公衆浴場ですから石鹸などの備え付けはありません(各自で用意しましょう)。
水色のタイルが貼られた浴槽は10人以上同時に入れそうな容量を有し、訪問時はひたすら独占できたので、大きな湯船で思いっきり手足を伸ばして存分に寛がせてもらいました。デカい風呂は気持ち良いですね。
配管から源泉がドバドバ投入されていますが、源泉のままでは熱すぎるので水道の配管が接続されており、加水された上で浴槽へ落とされています。お湯の配管は温泉成分に包まれて白く粉を吹いたようになっていました。そして浴槽を満たしたお湯は、左端の切り欠けより惜しげも無く大量に溢れ出ていました。
お湯は無色澄明でほぼ無臭ですが弱い重曹感があり、イオウの痕跡らしき微かな匂いも感じられたような無かったような…。サラスベのさっぱりする癖のない浴感でして、良好な鮮度感とやや熱めの湯加減が相俟って、肩まで湯船に深ると心身がシャキッと蘇り、湯上がりはさっぱりとした爽快感が得られました。優しさで入浴者を包みながらも心身を引き締めてくれるこの温泉は、慈愛深き母性の湯と表現したくなります。
なお、この公衆浴場の対岸には小さな露天風呂があり、すぐそばに架かってる吊り橋を渡って行くことができるのですが…
訪問時の露天風呂は空っぽでした。
ちなみに2007年11月に訪れた時の様子が上の2画像。見比べていただくと一目瞭然ですが、この6年の間、ほとんど変化していませんね。ここ数年で全国の温泉浴場や旅館が次々に廃業に追い込まれており、6年も経過すると大抵の温泉地では寂しい方向に変貌しているものですが、温泉地の要と言うべき公衆浴場が頑として以前のままの姿でいてくれると、温泉めぐりを続けている者としては安堵感を覚え、とても嬉しい限りであります。
単純温泉 49℃ pH7.3 溶存物質933.7mg/kg 成分総計1094.5mg/kg
Na+:186.4mg(61.15mval%), Ca++:47.72mg(34.37mval%),
SO4–:7.88mg(12.07mval%), HCO3-:408.8mg(82.03mval%),
H2SiO3:86.0mg, CO2:160.8mg,
(昭和30年5月4日)
加水あり、加温循環消毒なし
熊野交通(川丈線(川湯・湯の峰温泉経由))・龍神バス(熊野本宮線)・奈良交通(八木新宮線)、「川湯温泉」バス停下車
和歌山県田辺市本宮町川湯1423 地図
0735-42-1633
紹介ページ(熊野本宮観光協会公式サイト内)
8:00~21:00(受付20:30まで) 火曜定休
250円
ロッカーあり、ドライヤー貸出あり、
私の好み:★★+0.5
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