芦原温泉 芦泉荘

石川県・福井県

 
芦原温泉での宿泊は、某大手予約サイトでリーズナブルな料金を提示していた「芦泉荘」でお世話になることにしました。こちらの正式名称は「公立学校共済組合芦原保養所」と言うんだそうでして、その名の通り公立学校に勤める先生のための保養施設なのですが、学生時代に先生方から白眼視されていた私のようなチャランポランな外来者の利用も積極的に受け入れており、日帰り入浴も可能です。あわら湯のまち駅から線路沿いに4分ほど歩いて踏切を渡ったすぐのところに立地しており、駅のホームからも建物が見えますので、方向音痴な方でも問題なくたどり着けるかと思います。また広い駐車場も完備されていますので、車でのアクセスも便利です。

 
今回案内されたお部屋はツインの洋室で、一昔前のごく一般的なビジネスホテルといった感じですが、清掃は行き届いていますし、ひと通りの備品の他、ユニットバスも設置されていますので、快適に一晩を過ごすことが出来ました。


お宿は線路に面しており、私が泊まった部屋のすぐ下では、えちぜん鉄道の電車が時刻表通りに右へ左へと走行していました。線路ばかりか踏切も目の前にあるため、それらの音が気になる方もいらっしゃるかと思いますが、鉄ちゃんにとっては寧ろ電車のジョイント音がやすらぎの眠りに導く子守唄となるでしょう。画像に写っているのは、元々JR飯田線で走っていた119系を改造したMC7000形ですね。

 
電車云々はともかく、1階フロント前から伸びる通路を進んで浴室へ参りましょう。浴室は施設名の2文字をとって、それぞれ「芦の湯」「泉の湯」と名付けられており、男湯は「芦の湯」となっていました。札には「源泉掛け流し温泉」と記されていますが、実際にはどんなお湯なんでしょうか。

 
脱衣室はとても広々としており、天井が高くて明るく、綺麗に維持されていますので、とても清々しく使えました。室内には貴重品ロッカーやドライヤーなど標準的な備品類の他、床置型エアコンや扇風機も設けられており、お風呂で火照った体を快適に涼めることもできます。脱衣室はお風呂への導入部であるとともに、入浴を締めくくってトリを飾る空間でもありますから、室内の快適性や利便性は、そのお風呂の印象を大きく左右するものですね。

 
お風呂は内湯のみで露天風呂はありません。床面積が広いだけでなく天井も高いためにかなり開放的であり、湯気の篭りもなくて快適なのですが、タイル張りに長方形の大きな浴槽という無機的かつ実用的な造りゆえ、温泉というより室内プールのような雰囲気もそこはかとなく感じられます。もしこの浴槽縁に競泳用水着姿の人を立たせて写真を撮り、その画像を誰かに見せて「ここはプールですよ」と嘘をついても、何人かはその偽説明を信じてしまいそうな気がします。
なお室内の壁に沿ってシャワー付き混合水栓が13基並んでいます。また浴槽の他にサウナや水風呂も設けられているのですが、私の訪問時は節電を理由にサウナは使用が停止されており、これに伴って水風呂も空っぽでした。

 
浴槽はとても大きく、20~30人は優に同時入浴できそうな容量を擁しています。槽内は淡い水色系のタイル張りで、縁には赤御影石が用いられており、その浴槽縁からは静々とお湯が溢れ出ていました。ということは、通路の札に書かれていた「掛け流し」の文言に偽りはなさそうですが、ところがどっこい、槽内ではしっかりお湯が吸い込まれており、底面の穴からは加温されたお湯が供給されていました。こちらで使われているお湯の源泉温度は40℃未満なので加温は仕方ないのですが、館内表示によれば加温のみならず循環濾過消毒も実施されているんだそうです。

 
では「掛け流し」という表記は何を意味しているのかと言えば、この湯口から出てくるお湯を指しているのだろうと思われます。大きな浴槽の隅っこに取り付けられたこの半円形の受け皿のような湯口からは、30℃後半のぬるいお湯がチョロチョロと注がれており、お皿から溢れたお湯は浴槽へと落とされています。つまり循環しながら、このように新鮮な源泉も並行して投入していますよ、ということなのでしょう。「掛け流し」という言葉の定義は曖昧であり、表現に対する法的な規制も緩いため、温泉を提供する側の胸先三寸でその意味合いがかなり変わってきますが、こちらのお宿や前回取り上げた「芦原荘」など、当地ではその適用範囲が相当曖昧なようです。

そんな言葉の問題はさておき、この新鮮源泉がなかなかの良泉でして、見た目は無色透明ですが、口にすると甘塩味と弱ニガリ味の他、タマゴ味とタマゴ臭が感じられ、お皿の内部やボルト周りなどではイオウ由来と思しき細かく白い湯の花がユラユラと揺れていました。特にボルトではそのユラユラがはっきりと目視できました。本音を申し上げれば、このぬるい源泉だけの放流式浴槽を、たとえ一人用の小さなものでも良いから設けていただきたいものですが、湯量などいろんな事情があって、浴用ではお湯を循環しながら大切に使わざるを得ないのかもしれません。この湯口で得られたイオウ感は、湯船では完全に消えていますが、甘塩味やニガリ味は残っており、消毒臭もあまり気にならず、湯中で肌を擦ると、食塩泉らしいツルスベ感と塩化土類泉らしい引っ掛かりがお湯の中で拮抗していました。また湯上がり後は強く火照り、食塩泉らしいパワーを実感することができました。
湯使いには残念な点があるものの、湯口の新鮮源泉から感じるイオウ感を楽しみながら、大きな浴槽で思いっきり四肢を伸ばして、存分に寛がせていただきました。

第74号
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 37.3℃ pH7.7 40L/min(動力揚湯) 溶存物質3.147g/kg 成分総計3.149g/kg
Na+:858.0mg(72.03mval%), Ca++:272.0mg(26.19mval%),
Cl-:1602mg(87.83mval%), SO4–:228.0mg(9.23mval%), HCO3-:73.7mg(2.35mval%), Br-:4.9mg, I-:0.3mg, HS-:0.5mg,
H2SiO3:53.6mg, HBO2:17.3mg, H2S:0.1mg,
(平成17年6月21日)
加水あり(浴槽清掃後、お湯を張り込むとき、いち早くお風呂のサービスを提供するため)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環濾過あり(温泉資源の保護と衛生管理のため)
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を使用)
並行して新鮮源泉の投入もあり

えちぜん鉄道三国芦原線・あわら湯のまち駅より徒歩4分(350m)
福井県あわら市堀江十楽1-10  地図
0776-77-3200
ホームページ

日帰り入浴可能(時間・料金等は直接お問い合わせください)
(湯めぐり手形使用不可)
貴重品ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

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