ハンガリー ヘーヴィーズ温泉湖

ハンガリー

中央ヨーロッパ最大の湖域面積約600平方キロメートルを誇るバラトン湖は、湖岸に立つとまるで海のように遠くの景色が霞んで見えるほどで、海のない内陸国ハンガリーにとってはまさに海同然であって、夏になると国内は勿論欧州各地から湖水浴をたのしむべく多くの観光客が押し寄せます。このバラトン湖の南岸には観光拠点となっているケストヘイという街があり、そこから北西へ約5キロ行くと、世にも珍しい温泉湖ヘーヴィーズ(Hévíz)にたどり着きます。

湖がまるごと温泉というのは極めて特異なのではないでしょうか。少なくとも日本国内にはそのような存在を聞いたことがなく、視野を世界に広げてみてもニュージーランドに世界最大の温泉湖があるはずで、ヘーヴィーズはそれに次ぐ世界第2位の大きさの温泉湖ということになります。湖の面積は約47500平方メートル、最も深いところでは36m、一日に8600万リットルもの湧出があって1日と数時間で湖のお湯が全て入れ替わるんだそうです。

ブダペストでレンタカーを借り、高速を走って約2時間半でヘーヴィーズに到着。バスターミナル近くの駐車場に車をとめ、そこから歩いて入場ゲートへ。入口までの道には、浮き輪・水着・サンダル・土産物などを売る店や飲食店が犇めき合い、いかにも観光地らしい景色です。バスターミナルのすぐ目の前に入口が。場内は公園のようになっており、木立の間を抜けると、目の前には湖面から湯気が立ち上る不思議な光景が広がります。


動物園か小規模テーマパークを思わせる入口ゲート


入口から森を抜けて温泉湖へと向かいます

更衣用のキャビンやロッカーは何棟かあるようですが、私は入口に近く真っ先に目に入った、湖面に向かって左側の棟を選びました。ハンガリーの他の温泉と同様、ロッカーの受付で料金を支払って鍵をもらい、それぞれの更衣スペースへと向かいます。この湖では単に水着に着替えるだけでなく、浮き輪も用意しましょう。なにしろ深くて足がつくところはないので、皆さん浮き輪でプカプカ浮かんでいます。ロッカーの受付近くで借りられます。私が借りたのは浮き輪というより、タイヤのチューブそのものでした。

ロッカー受付近くには、外気温と湖水温度が表示されていました。私の訪問時は生憎の雨で、夏だというのに気温は17℃とかなり肌寒く、また湖水温度も32℃とかなりぬるめで、いくら温泉とはいえ湖水浴には不向きな天気。このためお客さんも少なめです。それでも恐る恐る足を湖水に入れてみたら、震え上がるような冷たさは無く、湯気が立っているだけあって意外とぬくぬくしています。浮き輪につかまって湖の真ん中へ泳ぎ、そこで浮き輪に体をすっぽり嵌めてのんびり浮かびました。いやはや、気持ち良い。これは温泉ファンなら一度来るべきところです。
湖面には睡蓮の花が咲いており、睡蓮の花と浮き輪の入浴客が混在するという、とても面白い光景が見られます。睡蓮を目の前にして温泉に入るというのも、滅多にできない体験。自然と一体になったかのようで、心身ともに癒されます。湖水は青緑色に濁り、微かに硫黄のような匂いが漂ってきます。何もせずただ浮かんでいると、少しずつですが一定の方向へ流されます。湖にはゆるやかな流れがあるようです。自然って本当に面白いもんですね。


外気温と湖水温度が表示されています。夏だというのに20℃を下回る肌寒さ


湯気が立ち上る湖面には睡蓮の花が咲き、その間にプカプカ浮かぶ入浴客が。
なんとも不思議な光景

湖の中央には赤い尖塔屋根の建物があり、岸から桟橋のような通路によってつながっています。外気温が低いためか、建物内部ではデッキチェアーに身を横たえている方が多く見られました。この建物は高床式で浮島のような感じで建てられていて、ちょうど内湯のような形で建物内部でも湖水浴が楽しめ、またこの建物の中央に温泉の源泉があるために内湯の水温が高く、魚の養殖場の生簀みたいに四角く囲まれたこの内湯では、温かさを求めるお年寄りがこぞってプカプカ浮いていました。
この「生簀」での会話に耳を傾けていると、客層はハンガリー人の他、ドイツ語圏の老人が多いようです。確かに、ロッカーや浮き輪を借りたときには英語がまったく通じず、かたことのドイツ語とジェスチャーでコミュニケーションをとりました。

森に囲まれた静かな温泉湖で、ぬるめのお湯に浮かびながら自然と一体化して癒しを得るという、日本では決して味わえない大陸ならでは楽しみ。ブダペストから距離が離れているのでおいそれと行くことはできないかと思いますが、近くを観光する際には是非寄っていただきたいところです。これで天気がよければ猶よかったのですが…。それでも私は2時間は浮いていたはずです。それほど気持ちよいところです。


湖の中央に浮島のように立つ建物。内部には生簀のような「内湯」があります


湖畔にも温水プールがあります

ブダペストから高速道路M7号線・国道76号及び71号経由で約2時間半。
鉄道利用の場合、ケストヘイ駅からバスで約15分
(※ハンガリーに限らず欧州の自動車は9割方がマニュアル車ですので、レンタカーを借りるときは要注意です。ヨーロッパカーなどレンタカー会社によっては通常の倍近い料金を払えばオートマ車を用意してくれる場合もありますので、レンタカー会社にお問い合わせください)

所在地:H-8380 Hévíz, Dr. Schulhof Vilmos sétány 1 地図
電話:(83)501-708
ホームページ

入場料2100フォリント(3時間以内)
キャビン使用料1200フォリント(更にデポジット1000フォリント)
浮き輪レンタル料500フォリント(更にデポジット1000フォリント)
(いずれも2009年7月現在)
ドライヤーあり

私の好み:★★★

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