四重渓温泉ではどこに泊るか全く決めていなかったので、ぱっと見たところ綺麗そうな「清泉温泉会館」に飛び込みで訪ねてみることにしました。ここは戦前「山口旅館」という名前で営業していた老舗だそうです。
玄関の前には「湯の出」と名付けられた手湯らしきモニュメントがあります。どうやら源泉らしく、現地語とともに日本語表記の説明もあるので、抜粋してみるとこんな感じ・・・「静寂が包む森の中の四重渓、泉質は無色、無色透明な炭酸水素塩泉で、可飲可浴です。泉温は50~80℃の間で、血液循環を増進する他に、筋肉を柔かめる効果もあります。特に皮膚病、胃酸過多症、関節痛、神経痛にも利きます」。 柔かめる?? ちょっとおかしなところもありますが、その他は文法的に問題無いですね。
屋根上の看板には大きくひらがなで「せいせん」と書かれているし、玄関前には日本語の解説文もあるし、ロビー天井のスピーカーから日本の演歌も流れているし、ホームページにも日本語が用意されているので、てっきり日本語が通じるのかと思いきや、フロントのお姉ちゃんは全く日本語がダメ。単語もまったく理解できない様子。仕方ないので、かたことの中国語と筆談で交渉し、定価よりも安めで部屋をキープすることができました。中庭には石灯籠があったりして、和風をイメージしているんでしょうね。
さて今回割り当てられたお部屋ですが、ラグジュアリー感を期待させる綺麗な外観とは裏腹に、田舎の民宿のような素朴なつくりでした。でもきちんと掃除されているし、テレビも冷蔵庫もクーラーもあるので満足。もちろんバストイレも設けられていて、バスは温泉です。
館内の別の部屋には「花巻」や「金沢」など、日本の地名が付けられています。金沢はともかく花巻をチョイスするなんて渋いセンスだねぇ。貸切風呂の暖簾にも「花巻温泉」と染め抜かれています。貸切風呂にはシルキーな細かい泡風呂が売りの奈米湯屋と和風コンセプトを前面に出した日式風呂の二種類があるようですが、いずれも宿泊料金とは別料金で、しかも結構いいお値段なので、今回は利用しませんでした。
チェックイン時に渡されたチケット。上が露天風呂入浴券で下が朝食券。さっそく上のチケットを使って露天風呂へ行ってみましょう。
露天風呂入口で係員のお姉さんにチケットを渡すと、そこでスリッパに履き替えるよう指示されます。露天風呂は水着・水泳帽着用なので着替える必要あり。入り口付近にロッカー兼シャワールームが何室か並んでいますが、内部はビショビショなので着替えしにくいのが難点。でも、正面向こう側に戦前からの旧旅社時代の建物が残っていて、その一階部分も更衣室・パウダールーム・ロッカースペースになっており、こちらはとっても使い勝手がよいので、利用するなら旧旅社棟の方をお勧めします。
浴槽は全部で5つ。入り口に近い旧旅社の下にちょうど良い湯加減(41度くらい)の丸い槽、その隣に広くて強烈な勢いの打たせ湯があるぬるい槽、ベンチが置かれた休憩スペースを挟んで、一番右側にあたる屋根の下にちょっと熱めの浴槽2つ(右側が42度で左側が44度)と、その間に水風呂1つ。
新亀山別館は中高年の客ばかりでしたが、こちらは客層が若め。平日なのにお客さんが多く、中には欧米人の姿も。みなさんゆっくりと寛いでおり、ベンチに座りながら持参したお弁当を食べて談笑していました。
お湯は無色透明無味無臭で、ツルスベ感はっきり。お湯も大量にオーバーフローしており、特に熱めの槽へあがる段は、溢れ出て流れ落ちるお湯によって、成分がコテコテに析出しています。薄そうな重曹泉ですが、意外にもカルシウム分が多いのかもしれません。
部屋に戻って、客室のお風呂も入ってみることに。浴槽自体は白いタイル張りで、ちょっと古めの生簀を連想させます。蛇口を捻ってお湯を貯めてみます。蛇口を全開にしても注がれるお湯の量が少ないので、入浴に適した嵩になるには30分以上かかりました。
蛇口から出てくるお湯は43.8℃。水で薄める必要ありませんね。無色澄明なので露天風呂と同様の無味無臭かと思いきや、明瞭なタマゴの味と匂いが感じられるではありませんか。しかもよくあるたまご臭ではなく、ゆで卵の黄身に限りなく近い特徴的な匂い。入ってみたら、露天風呂をはるかに上回るヌルヌルスベスベな浴感で、とっても気持ちよい。何度も肌をさすっちゃいました。湯上り後もスベスベ感が持続。窓を開けても隣の壁しか見えず、室内は他に流し台と便器があるだけで、殺風景極まりないのですが、お湯の質は最高です。なるほど、こりゃ4大温泉に含めて当然です。
露天風呂と旧旅社棟の間には、戦前に高松宮夫妻がハネムーンで利用した大理石の浴室が残されていて、ガラス越しに見学できます。この皇族ゆかりの浴室は当宿が誇る名跡のようでして、傍らに日本語の解説が掲示されていたので、ここに書き写してみます。
「清泉は地味な名前で、当時の日本皇族親王にも来訪きれた所、昔の風景を掲載している所でございます。たとえ時が流れても、今の清泉も昔の華麗風景を語っています。歴史の遺跡を探求して四重渓の美しさを体験したい人、ようこそ清泉へお越しください」(原文ママ)
??? なんとなく意味はわかるけど、誤植はともかく、変テコな文ですね。いかにも外国人の手による作文という感じで、憎めません。
なにはともあれ、異国で日本の歴史に触れると、とっても嬉しいですね。
炭酸泉(重曹泉) pH7.8 58.5℃ 溶存物質1130mg/kg
屏東県車城郷温泉村文化路5号 地図
08-8824120
ホームページ ←音声が出ます。日本語ページ(不思議な言葉遣いがテンコ盛り)
露天風呂200元 貸切風呂は600元~(委細はホームページ参照)
コインロッカー20元、ドライヤーあり
私の好み:★★
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