安達太良山の山腹、標高約1400mに位置する山小屋。
今年建物の全面改修工事により、外壁の塗装や太陽光パネルの取り付けなどが行われました。今でこそ山奥にたたずむ一軒の山小屋ですが、かつてはこの一帯に置屋もあるような歓楽的温泉街が形成されていたといいますから驚きです。
屋根にぶら下がる黒い鐘がシンボル。内部2階は宿泊する部屋になっており、1階に温泉浴室が設けられています。周回コースで登山した途中で立ち寄り、入浴をお願いしました。
すると御主人曰く「かなりぬるいよ。それでも良いならどうぞ」とのこと。そしてお金を払おうとすると「いえいえ、もし満足いただけたら料金を頂戴します」とこの時は受け取って下さいませんでした。どういうことなんでしょう。とりあえず中へ入ってみることに。
浴室は男女別の内湯がひとつずつ。紅葉シーズン真っ盛りだというのに、お風呂を利用するお客さんは一人もいません。こじんまりしていますが、山小屋にしてはなかなかしっかりとした造り。
脱衣を終えて浴室に入り、お風呂を見た途端、ご主人の言葉の意味がわかりました。工事のためお湯の配管が外されて、源泉からの供給が止まっており、浴槽にはお湯が張られているものの、かなりぬるくなっていたのです。安達太良登山の真の目的は紅葉ではなくこの温泉にあったので、これには思いっきり落胆。窓の下には、配管の接続を待つばかりの新しい分湯枡が設置されていました。
まぁ小屋のお風呂に入れたことで満足するか、と半ば諦めていたところ、外から窓が開かれ、作業着を着た工事従事者のおじさんが「今、応急的にパイプを繋げてやっから、ちょっと待ってろ」と言いながら、塩ビのパイプを浴槽の上まで繋げてくれました。もしかしたら・・・と期待していたら、おじさんはパイプの元の方へ歩いてゆき、「いくぞぉ」という掛け声から間もなく、パイプから真っ白でドロドロとした濃厚なお湯がドバドバ出てくるではありませんか。戻ってきて浴槽にお湯が投入される様子を見たおじさんは「こりゃ牛乳風呂だな、最高だぞ」と満面に笑顔を浮かべ、私の嬉しそうな表情を確認するとすぐにお仕事へと戻っていきました。おじさん、ありがとう。おかげで濃厚で新鮮なお湯を堪能できます。
ヒバの浴槽は3人サイズ。無色透明のお湯ですが、白い湯の華のコロイドで乳白色に濁って見えます。特におじさんがパイプを繋げてバルブを開けた瞬間は、溜まっていた湯の花がいっぺんに吐き出されたので、本当に牛乳のように真っ白でした。強烈ではないにせよ強めでレモンタブレットのような酸味を帯び、若干の塩味も含まれるようです。はっきりとした硫化水素臭が漂い、湯あがりも硫黄臭がしっかり残るほど。スベスベとして気持ちよい浴感です。源泉からの引湯距離が短いためにお湯の温度はかなり熱め。お湯が出てくるパイプの先では50℃近くあったのではないでしょうか。
本来は男湯と女湯に分けるべきお湯を、この時は男湯で独占したため、ものすごい量のお湯が投入され、洪水のようにザブザブと溢れ出ていきます。なんて贅沢な湯使いなんでしょう。
なお工事は今年(2010年)11月上旬には全て完了しているので、今では男湯女湯とも何ら支障なく入浴できると思います。
小屋からちょっと山を登ったところにある源泉地帯。硫化水素ガス発生のため立ち入り禁止です。
くろがね小屋のお湯はもちろんのこと、麓の岳温泉もここから引湯しているので、どうせ入るのなら源泉至近のくろがね小屋で入った方が、より新鮮な状態でお湯を楽しむことができますね。実際、麓とくろがね小屋とでは、同じお湯ながら、かなり浴感が異なるように感じられました。無論くろがね小屋の方がはるかに鮮度が良く濃厚ながらマイルド。ここまで来てよかったと納得できるお湯でした。
あ、もちろん入浴後に料金はお支払いしました。だって、皆さんのご厚意であんな素晴らしいお湯を堪能させていただいたのに、満足しないはずありませんから。
酸性泉 56.7℃ pH2.5 蒸発残留物585mg/kg 溶存物質632.3mg/kg 成分総計632.8mg/kg
奥岳登山口より徒歩120分(勢至平経由)
福島県二本松市永田字長坂国有林 地図
現地衛星電話090-8780-0302(電話は10:00~21:00)
ホームページ
通年営業(無休)
入浴のみ400円 その他料金(宿泊など)はホームページ参照のこと
山小屋につき備品類なし
私の好み:★★★
コメント
Unknown
こんばんは。
連休に微温湯温泉に行く予定ですが、気力と天気が好適であれば、その前にくろがね小屋に行きたいと考えています。
小屋までの道程ですが、本格登山の装備が必要でしょうか?また、ルートが複数ありますが、どこからが一番平易に行けるでしょうか?
本当は、久しぶりに沼尻の源泉にも行きたいところですが、無理はしないでおこうと思います。
ご教示いただければ幸甚です。
Unknown
アスペリティさん、こんばんは。
麓からくろがね小屋まで単純往復(ピストン)で良いならば、岳温泉から上がってゴンドラの山麓駅の駐車場に車を置いて、勢至平を通るルートで登ってゆけば、時間はかかりますが(片道1時間半から2時間くらい)、意外と楽に辿り着けるかと思います。実は、くろがね小屋までの道は、作業用の軽トラが走りますから、そんなに苦労しません。途中に歩行者用のショートカット道もあります。従いまして、軽登山・トレッキング程度の装備で十分です(もちろん雨具は持っておいた方が良いでしょう)。安達太良山自体なだらかな山ですから、そんなにきつい勾配もありません。是非白濁の湯を楽しんでみてください。
Unknown
K-Iさん
おはようございます。
詳しく教えていただき、ありがとうございます。
それほどハードルが高くなさそうに感じましたので、天気が良ければ行きたいと思います。
私は一昨年、本沢温泉の帰り道、玉砂利の上を滑って脚を骨折し、油断して痛い目に遭ったので、荒れた道にはちょっと神経質なんです。
いつもどこかに行く前には参考にさせていただいてます。本当に感謝です。駒の湯のレポートも拝見しましたが、素晴らしいですね。オフ会とかやってほしいです。
Unknown
>アスペリティさん
本沢温泉へ行かれたのでしたら、同程度とお考えいただいて差し支えないかと思います。砂利の上って滑りやすいから、結構怖いですよね。
今年は雪がかなり少ないので、登山道上の雪は連休にはすっかり溶けているかと思いますが、念のため、予定日が近づいたらヤマレコ等で直前の登山記を見て状況確認しておくと完璧だと思います。
>駒の湯
あのお湯は本当に素晴らしいです。ぜひ一度お入りになってみてください。