福島県の会津と中通りの境の山中に位置する二岐温泉は、鄙びた秘湯っぽい雰囲気と澄んだ硫酸塩泉のお湯が素晴らしく、そんな魅力に惹かれて私は何度も足を運んでいます。以前は湯小屋旅館を取り上げたことがありましたが、今回は半年前に柏屋旅館を訪れたときのことを備忘録として書かせていただきます。
建物は二岐川の谷の傾斜にへばりつくように建てられており、玄関・フロントがあるフロアは最上階の4階になっていました。
こちらには露天・内湯×2種類・岩風呂の計4種類のお風呂が独立して分散しており、いずれも玄関と帳場が位置する4階からエレベータに乗って川岸と同じレベルの1階へと下り、そこから更にそれぞれのお風呂へと向かいます。
・露天風呂
内湯の脱衣所からスリッパを履いて、ベニヤ板が渡してある橋で川の対岸へ渡っていきます。浴槽はちゃんと男女別。一応浴衣を置ける棚も設けられています。浴槽は3人程のサイズでしょうか。3つの源泉が混合されたお湯が竹筒から投入され、ドバドバと掛け流されています。すぐ目の前に清冽な川が流れる絶好のロケーション。無色澄明の綺麗なお湯で、はっきりわかる石膏の匂いと味、綿埃のような湯の鼻が浮遊していました。ちょっと熱めかな。
・内湯
内湯には2種類あって、女湯は檜風呂、男湯は滝の湯と固定制で分かれています。男湯(滝の湯)の浴室はタイル貼りで、シャワー付きカランが2~3基、木の湯口からお湯がふんだんに注がれ、見事に掛け流し。でも分析表に記載されている湧出量に比べて、湯口から出るお湯の量が多かったので、多分この時は加水されていたんだと思います。露天同様、石膏の知覚が明瞭な無色澄明のお湯ながら、源泉が異なるからか、こちらの方が若干湯の華が多いように思われます。
・岩風呂
柏屋旅館の名物がこのお風呂。一旦外へ出て、渓流沿いに伸びる屋根付きのアプローチを歩いた先にある小さな湯小屋がその岩風呂。ここまでの雰囲気だけでもワクワクしちゃいます。
風情がある小さな湯小屋の手前の岩肌からもお湯が滲み出ていました。
露天風呂や内湯と違ってこちらは混浴です。崖を活かしてそこに材木の壁と屋根を被せただけのシンプルな造り、岩肌が剥き出し、脱衣所内には木の幹が迫り出ています。
岩を穿った穴にコンクリを塗ったような浴槽には湯口が無い。どこからお湯が出ているのかしらと浴槽の側壁をあちこち触っていたら、側面の下部2箇所、山側の側面と川上側の側面に走っている浴槽の割れ目がやけに熱く、ボコボコと大小の泡がそこから上がってくるではありませんか。つまり足元湧出なんですね。とっても感激!
無色澄明の清らかなお湯。材質の関係か、浴槽の底は薄く青っぽく見えます。明瞭な石膏の味と匂いで、味には甘味は、そして匂いには弱い燻したような匂いも混じっていました。露天や内湯に比べると湧出量(投入量)は少な目ですが、浴槽はその量に見合ったサイズなので、決してお湯は鈍ることなく澄み切っていて、人が入ればすぐにお湯が溢れ出ます。本当に素晴らしい。いつまでもここにいたい…。
湯面に当たる浴槽(岩肌)には石膏がビッシリと析出。その岩肌を見上げると、上の方からもお湯が滴り落ちています。
窓のすぐ下には二岐川が流れ、せせらぎの音と鳥の囀りが実に心地よい。
訪問したのは平日の昼間でしたが、館内には浴衣姿のお客さんが多く目立ちました。皆さんゆったり湯治でもなさっているのでしょうか。せっかく静かに湯浴みできる環境にあるのですから、時間を忘れてのんびり入浴を繰り返さないと、本当のお湯の良さを堪能することはできないんでしょうね。私みたいに日帰り入浴でさっさと帰ってしまうのは野暮なんだと思います。
露天風呂・檜風呂 二岐8・9・14混合泉
カルシウム-硫酸塩泉 49.5℃ pH8.7 149L/min(自然湧出) 溶存物質1270mg/kg 成分総計1270mg/kg 加水加温循環消毒無し
滝の湯 二岐3号泉
カルシウム-硫酸塩泉 52.5℃ pH8.7 19.8L/min(自然湧出) 溶存物質1408mg/kg 成分総計1408mg/kg 夏季などは加水 加温循環消毒無し
岩風呂 二岐15号泉
カルシウム-硫酸塩泉 45.8℃ pH8.9 15.6L/min(自然湧出) 溶存物質1617mg/kg 成分総計1617mg/kg 加水加温循環消毒無し
福島県岩瀬郡天栄村湯本下二俣22-6 地図
0248-84-2316
ホームページ
10:00~15:00
500円
内湯にドライヤー・シャンプー類あり、貴重品は帳場預かり
私の好み:★★★
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