ホタルの里温泉

熊本県

山川温泉へ向かう途中に見つけた温泉浴場です。隠れ鉄道ファンである私は1984年に廃止された国鉄宮原線の線路跡に残っている美しいアーチ橋を追いかけていたのですが、その途中にたまたまこの温泉を見つけてしまったので、廃線のトレースと同時に温泉好きの血も騒いでしまい、ついでに入湯した次第です。


まずはそのアーチ橋をご覧あれ。これは堂山橋梁。現役時代は湧蓋山を背景にして橋の上をノンビリ走るディーゼル列車の姿が写せる、沿線きっての撮影ポイントだったところ。橋を潜った向こう側が山川温泉です。風光明媚な宮原線が、もし廃止されずJR九州か第三セクターに引き継がれていたら、今頃は観光トロッコ列車が運行されていたかもしれませんね。

 
こちらは汐井川橋梁。橋が跨いでいる川の名前は塩井川ですが、橋名の表記はなぜか汐井川になっています。堂山橋梁や汐井川橋梁など廃線跡に残る7つの竹筋コンクリートアーチ橋は国の登録有形文化財に登録されています。なお、この塩井川はホタルの名所らしく、「くまもとホタルの里100選」に選ばれているんだとか。温泉の名称もこのホタルに由来しているわけですね。


堂山橋梁のすぐ手前に一軒ポツンと建っているのが「ホタルの里温泉」。数年前に発生した水害で湯屋が破壊されてしまいましたが、4~5年前に再建されたんだそうです。こちらの温泉は地元の組合の方によって運営されています。


湯屋に隣接して公民館があるのですが、なんとこの公民館では料金を支払えば休憩ができるほか、宿泊もできちゃうそうです(休憩は1人800円、宿泊は1人2500円、いずれも入浴料込)


玄関に入ると受付らしきものはあるものの無人状態。料金箱にお金を投入して中へ。
再オープンしてからまだ数年しか経っていないこともあるんでしょうが、お手入れがきっちりしており、室内はとっても綺麗です。木材の質感を生かした造りなので、こじんまりとした室内ながらも圧迫感が無く、むしろぬくもりすら感じられます。

 
男女別の内湯がひとつだけのとってもシンプルなお風呂。浴室に入った途端、硫黄の匂いが香ってきました。浴槽はコンクリ造で洗い場は石板貼り。カランは3基設置されており、出てくるお湯は源泉使用。硫黄を含むお湯であるため、カランの金具は黒く硫化していました。
湯口からふんだんに源泉が注がれ、浴槽縁の切り欠けから排湯されているのですが、その量が多いために排水溝は溢れ出んばかりの状態、あたかも川の流れのようでした。お湯は無色透明、湯口に置かれたコップで口にしてみると、はじめほんのりと石膏的な甘さが顕れ、続いて硫黄的なタマゴ味、遅れて焦げたような苦みが順々に舌に感じられました。弱めのスベスベ感と硫酸塩泉的なひっかかりが混在したような浴感です。
お湯自体は透明ですが、析出した硫黄分によって湯口は真白く覆われ、浴槽の底も沈殿した粉状の湯の花によって薄っすら白く染まっています。また湯中にも白い湯の花がちらほら舞っていました。浴室内にはあまり長く風呂に入るなという旨の注意書きが掲示されていましたが、これはおそらく硫化水素中毒を防ぐための喚起なのでしょう。


館内に掲示されている「分析表」には泉質名として「含硫黄-カルシウム・ナトリウム-(硫化水素型)」と表記されていました。あれれ? 陰イオン(「○○塩」みたいな名称)が漏れてるぞ。具体的な数値の表記も無いので明確なことは言えませんが、体感からしておそらく「含硫黄-カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉(硫化水素型)」だと思います。

偶然見つけたので特に期待もせずに立ち寄ってみたのですが、川沿いで周囲は水田という実に静かで長閑な環境の中、共同浴場らしく素朴な風情でありながら綺麗な側面も兼ね備え、硫黄感たっぷりの新鮮なお湯が大量に掛け流されているお風呂に入れたので、思いがけない大収穫を得られてとっても幸せ、満足でした。丁寧に管理なさっている地元の方に心から感謝。再訪必至です。

含硫黄-カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉(硫化水素型) 44.2℃

熊本県阿蘇郡小国町北里字天神平1534-1  地図

8:00~22:00
300円
備品類なし

私の好み:★★★

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