那須湯本温泉 雲海閣

栃木県

 
那須湯本のメインストリートから一本裏に入ったわかりにくい場所にある、かなり渋い(というか草臥れた)外観のお宿です。決して「る●ぶ」や「まっ●る」の誌上に掲載されることはないでしょうが、なぜか温泉ファンのサイトでは頻繁にこちらのお宿をお見かけし、しかもみなさんの評価が高いので、どんなものか日帰り入浴で行ってみることにしました。


帳場で料金を支払うと「浴室は階段を下りた奥です」と簡単な説明を受けました。帳場周りは古いながらも、頑張って現代風の旅館らしい雰囲気を作り出そうとしている努力が垣間見られます。浴室への通路途中にはマッサージチェアーが置かれています。

 
説明に従い帳場奥の廊下へと進むのですが、この廊下と階段が結構長い。部分的にトンネルになっているのですが、壁の塗装は剥がれ、不気味なほど暗く、このような雰囲気に慣れていない方を連れていったら、間違いなく不安がること必至でしょう。ドリフのコントで志村がお客役のいかりや長介を脅かす舞台になりそうな感じです。


トンネルを抜けると今度は木の階段ですので、ひたすら下りていきます。コンクリの無機質な廊下と違い、このような木造の階段は湯治場のような情緒があっていいですね。お宿の玄関はメインストリートより高い場所に位置しているのですが、浴室はそれよりかなり下がっており、階段を下りきった浴室棟の廊下から外を見ると、そこから数十メートル先にメインストリートが同じ水平位置で見えました。

 
男女別内湯入口の柱には掠れた墨痕で「硫黄泉(男)」と書かれた札が下げられています。もちろん「硫黄泉(女)」もありますよ。脱衣所は至って簡素なものです。

 
浴室は湯治場風情たっぷり。窓は隙間だらけできちんと閉まらず、腰部のブロックは一部剥がれ落ち、全体的にちょっと草臥れすぎかもしれませんが、それが却っていい味を醸し出しています。洗い場はスノコ状に板が張られ、カランはありません。貫禄溢れる木の浴槽は二分割されており、綺麗に白濁した鹿の湯のお湯が張られていました。観光名所「鹿の湯」はいつも混雑しており、旅の恥はかき捨てとばかりに掛け湯をせずに入る客が目立ったり、あるいは熱い槽の周りで偉そうな爺様が胡坐をかきつつ、たまに入ってきてはその熱さに驚き尾っぽを巻いて逃げ出す一見の客を鼻で嗤って小馬鹿にしている光景をしばしば目にして、実に不快な思いにさせられるのですが(施設やスタッフが悪いのではなく客が悪いのです)、ここはそんな険悪修羅な雰囲気とは無縁、この時も私がひたすらお湯を独占でき、静かな環境で鹿の湯のお湯をじっくり堪能することができました。(失礼ですが)ボロい建物だからこそ、わかる人しか来ないんですね。


白濁した硫黄の湯はスベスベ感良好、鹿の湯らしいレモン汁のような強い酸味+苦味+渋みを有し、硫化水素臭が浴室内に漂います。2分割された浴槽は、向かって左側が熱くて訪問時は45.5℃、右側は万人向けの41.0℃でした。両方の浴槽を交互に入ることにより、刺激ある入浴が楽しめました。両浴槽の真ん中には湯口が設けられおり、そこに小さな穴の開いた木の栓が突っ込まれ、その穴の大きさを変えることによって源泉投入量を調整し、以て湯加減もコントロールしています。湯口上には穴の大きさが違う栓、そしてそれを叩くための玄能が並べられています。手間がかかる原始的な方法ですが、加水することなく温度を調整できるので、お湯の良さを損なずに済みますね。昔ながらの面倒な方法を敢えて選択しつづけているのは、宿がお湯を大切にしている証だと思います。いわずもがな湯使いは掛け流し。

 
ちなみに上述の暗い階段の途中には右に通路が分かれており、その先には以前、奥の沢噴気泉を引いて利用していた「明礬泉」浴室があったそうですが、ちょっと覗かせていただくと、今では全く使われておらず、浴槽も空っぽ、あたかも廃墟の如き状態でした。こちらのお湯も入ってみたかったのですが残念。

昔ながらの湯治場風情に包まれながら、ゆっくり静かに鹿の湯の源泉を堪能できる穴場のような存在。温泉ファンが太鼓判を捺すのも十分納得です。

鹿の湯・行人の湯 混合源泉
酸性・含硫黄-カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型)
68.4℃ pH2.5 蒸発残留物814.8mg/kg 成分総計1040mg/kg

JR那須塩原駅か黒磯駅より東野交通・那須湯本or那須ロープウェイ行バスで「湯本一丁目」バス停下車徒歩3分
栃木県那須郡那須町湯本33  地図
0287-76-2016

日帰り入浴8:00~21:00
400円(一応1時間までらしいのですが、アバウトのようです)
備品類なし

私の好み:★★★

コメント

  1. 裏ぱと より:

    懐かしいです
    雲海閣さんには、泊まりや日帰りで何度となくお世話に成りました!夜中にあのお湯と向き合うのが嬉しくて楽しくてね、明礬泉の湯舟はボロボロで尻が痛く成るからポジション取りが難しかったです!殺生石から湯気が出なく成ったあたりから湯温が若干下がり、成分にも変化が出て来てましたね!甥っ子が、もう少し頑張らないと雲海閣もヤバイと感じるのは自分だけではないと…!湯本に必要なところだから余計にそう感じてしまいます!

  2. K-I より:

    なるほど
    ぱとさんは以前からご存じだったんですね。明礬泉に入ってみたかったです…。雲海閣はおそらく根強いファンによって支えられている側面があるんだと思いますが、建物はもちろん、宿そのものも元気が無いように感じられ、今後どうなってしまうか、ちょっと心配です。私の心配は杞憂であればよいのですが…。
    あのお風呂は是非守っていただきたいものです。

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